神田で飲んで
最終のこだまに乗って
帰ってきた
こだまのなかで
詩は書けなかった
眠って
しまった
詩は
ケアできますか
ケアできますか
モコは飛びついてきた
ぴょんぴょん跳ねた
机の上に
ねじめ正一さんの
ことばを生きるという本があった
神田で飲んで
最終のこだまに乗って
帰ってきた
こだまのなかで
詩は書けなかった
眠って
しまった
詩は
ケアできますか
ケアできますか
モコは飛びついてきた
ぴょんぴょん跳ねた
机の上に
ねじめ正一さんの
ことばを生きるという本があった
海を
見ていた
突堤を見ていた
テトラポットが波に洗われるのを
見ていた
空を見上げていた
雲は
生まれて
流れていった
見つめて
いた
君を
見て
いたかった
流れてゆくものたちのなかにいた
きみは
流れていった
きみは消えていった
じぶんは、いつだったか、吐いて吐いて、喉
からはもうなにもこみあげてくるものもなく
ただ、じぶんは、じぶんの管につまっている
乾きかけた液が、赤いいろをしていることが
じぶんは、見えた。
赤い豆粒のかたちをした実が
畑の中程で、群れて
頽(ルビくずお)れようとしている。
廃する、
野の地からすこし宙空に浮いた
おばさんの農具をふるう、空振りの美(軌道)
をこっそりと眺めていた。
まるで玩具に仕立てられた、犬の尾の尖の震
えが、愛嬌ではなく憎悪の印だなんてだあれ
も知らないだろう。
赤い実を
おいしそうな、実を鳥たちは、けっして食べ
ない。鳥は、はらをこわすことを恐れている。
夜半に、大量の便を出した。
尻からは、黄や紅や、濃い緑の粒が
粒のままのかたちをして、出てきた。
鋤や鎌の、空振りか。
粒 (球)を、板の上にのせて、薄く輪切りにし
て、鍋の中に、ぱらぱらと落として、ぐつぐ
つ煮立てて、それを食べると、また夜になり、
虚が煮えていく。
じぶんが、じぶんを火にかけて、
鍋の水面に、ぷかぷか浮かぶ
粒 (球)を、人差し指でつっついて、底へ押し
それが、浮き上がっては、また突いて
あそんでいる。
秋の次に、
春になれば
もう、生きた思い出も消えている。
鳥が
鳴いている
椋鳥かな
ピッ
ピッと
鳴いている
鳩たちは
地面を歩いている
食べ物を
探しているのだろう
まだ
公園の地面に落ちているものを
食べたことが
ない
でもいるんだろう
そんな人たちも
光は激しく振動していた