夢は第2の人生である 第46回

西暦2016年長月蝶人酔生夢死幾百夜

 
 

佐々木 眞

 
 

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私は司会者から「たかがゴミだが最後にひと泡ふかせるゴミ」という注釈つきで紹介された。見ると壇上にゴミのぬいぐるみが置いてあったので、それを頭からかぶって「主とは一人称単数なり」という短詩を朗読した。9/1

自分で言うのもなんだが、その頃の私は写真家としての絶頂期で、どんな被写体であろうが、レンズを向けるやいなや、前人未到空前絶後の物凄い映像が撮れるのであった。9/2

友人の軽井沢の別荘でくつろいでいたら、突然安倍蚤糞のお気に入りで、AKBを売り出して大儲けしている作詞家がやって来て、挨拶もせずにニタニタ笑うので、けたくそ悪くなって引き揚げた。9/4

宮廷から招かれた昼食会は、なぜだか当世風のバイキング方式だったが、盛装した老人たちは、遥か遠方に三々五々配置された食卓の上の食べ物を、皿に取ることができず、大層困惑していた。9/5

丑三つ時に、猛烈に左の奥歯が痛くなった。これはもう我慢が出来ない。朝になったら岸本歯科に電話して、すぐに治療してもらおうと思ったのだが、朝になると軽快しているので、あの夢は本当だったのか、それとも嘘だったのか、奥歯を触りながら考えているところ。9/6

今から何十年も前、この山奥の駅で、大勢のサーカス団の人々が死んだという。9/7

「その美形を抱きに来たんだろう。早く見番に行って指名しろよ」と廻りの連中はしきりにそそのかすのだが、私は、なぜかその女が怖いので、ためらっている。9/8

社長が「今季のテーマはビッグシルエットだ」と命じているのに、最末端の新入りの彼女だけは、ミニばかりデザインしていたので、とうとう馘首されてしまった。9/11

いくら呼んでも、恋の呼び出しに応えられなかった。9/12

この節は、できるだけ寡黙に徹して、馬脚を現さないように努めるのに精いっぱいだった。9/12

中韓両国との外交折衝を担当する私は、虫歯と難交渉で疲労困憊したので、急遽帰国して横須賀の岸本歯科に立ち寄り、その後小田原の元老に経過を報告しにいった。9/13

昼食の時間になったので一膳飯屋に入ると、1階は超満員なので、2階へ行こうと階段を登ろうとしたが、そこもおしくら饅頭の状態である。ここで妻と待ち合わせをしている私は、はたと困った。9/14

帰宅する途中で、パーティがあることに気付いた。出版社が年2回開催していて、豪華な食いものやお土産がついてくるので、会場のホテルに行こうと思ったが、その近くのコンサートホールで、死んだはずのパバロッティが1曲歌うというので、私の心は揺れた。9/15

「伊勢丹は80年代に戻っています」という広告コピーが出来たので、早速真木準に見せようと思ったが、彼はもう泉下の人となっているので、私は誰に相談していいのか分からなかった。9/16

私は、長州藩の侍だった。いま池田屋に戻れば、新撰組に殺されてしまう。行かなければ、命は助かる。はてさてどうしたものか、といつまでも東大路の道端に佇んでいた。9/16

細長いビルで開催された日本美術展の作品を、階上から順番に見物し終えると、もうどこへも行きたくなかったので、私は1階の展示スペースの真ん中で昼食をとった。9/17

散歩に行くと、日本人と日本人、日本人と外国人、外国人と外国人というさまざまな組み合わせではあったが、みなあられもないすがたで、道端で無我夢中で番っていた。9/18

私が景品として貰った2千万円を贈ると、彼女は「有難うございます。これでようやっとお家を作ることができます」というて、深々とお辞儀をした。9/19

仲間と観光地を歩いているうちに、私だけが遅れてしまったので、追い付こうと懸命に歩いているうちに、道がまくれ上がるようにしてどんどん立ち上がり、急勾配の坂道から壁になってしまったので、私は途方に暮れた。9/19

なんとかいう有名なグルメの達人の甘味チエックが、ぺろりと入った。私はいよいよ食べられてしまうのか。9/20

私は、ブレーメンで何も買わなかったことを悔やんだ。夜な夜な悔んだが、どうしようもなかった。9/20

そのレストランの3階から、勢いよく2階のベランダに滑り降りたのだが、私はまるで仰向けになった海亀のようにもがいていたら、電通の古川選手たちが嘲笑った。9/21

樋口さんちの隣の小路を降りてゆくと、深い谷間になって、そこを森林鉄道が走っていた。あれは確か九州へ行くはずだと思って、さらに谷間をどんどん下って行くのだが、いつまで経っても辿りつかない。9/21

中央公論社の営業の田中君は、私を無理矢理バスに乗せたのだが、生憎超満員だったので身動きできない。こんな状態で到底3時間も我慢できないのでバスから降りると、田中君は「困ります。社長に怒られるのでなんとか乗って下さい」と訴えるのだった。9/22

河の中にWが手招きしているので、見ると、AとBと女がいた。「どうした、早く上がってこいよ」というと、Wは首を振る。私は、Wは女の前ではいつもとがらせているので、そこから身動きできなのだろう、と想像した。9/24

そこで私は、もうWにそれ以上呼びかけるのをやめてしまったが、急激に体力を失ってしまったWは、下流の方へどんどん流されていった。9/24

東京支店では、型どおりのしんねりむっつり型の展示だったが、大阪支店では、私は空飛ぶマネキンに変身させられ、部屋から部屋へとムササビのように飛びまわり、最後は韃靼人のように踊らされた。9/25

ショーのおまけつきの展示会が終って、帰ろうとしたら、高木さんが、手招きするのでついていくと、中島君の部屋が大改造され、2人のモデルが遊んでいた。これでは東京に帰れそうもない。9/25

息子と歯医者へ行ったが、2人とも予約がないので断られてしまったので、泣く泣くお手手をつないで引き返したのだが、いつの間にか息子は行方不明になってしまった。9/26

一度もゴミ出しをしなかった隣の人が、久しぶりに運び出したのだが、その分量たるやあまりにも物凄くて、ゴミ置き場はたちまち見えなくなってしまった。9/28

ホテルで美人コンテストが開催され、A嬢がグランプリに選ばれた。私は個人的にB嬢がすさわしいのではないかと思っていたので、異議を唱えようとしたが、時既に遅く、夕方皆でてんぷらを食べて別れた。9/29

不気味な死神に追われて、女が私に助けを求めてきたので、匿ってやったが、死神が「早く始末してしまえ」となおも迫ってくるので、私も困り果てたが、家に帰ってみると、女は巨大なイカやタコを全身に巻き付けて、息を引き取っていた。9/30