黒い虹

 

道ケージ

 
 

バレンシアの香り立つまでに
刈られた土手の草
匂い立つ

サドル浮かせ
疾駆
「林間」空地へ

この二子にて
「田園」に乗り込む
「いいことがある!」

金髪の女の子
前に座わり
大きな黒眼が
似ているけれど
マスクでわからない

彼女のはずがない…
逢いたい視線で
胸を見る

「ポポンS!」
突然
テレビガイドを手にした男が
ラジオを聞いているのだ
連呼する
「ハインツ トマトケチャップ!
空0アンダルシア一丁!」

男はセーラムーンの宝石箱を取り出すが
鍵が開かない
降りる駅は決まっていないらしい
「大丈夫ですよ
空0貸してごらんなさい」
私は「最後」まで行くから

風はここにも及んでいる
思い出さない罪が
罰に変わる

きのう
黒い虹を見た
二子玉川の
川面の奥
上がらない花火を
待ったからではない

嘘泣きの女は
いつものように
病気自慢と不幸自慢のあと
リモコンをたたき割った

黒い虹が
鉄路に光った