道 ケージ
ひたすらに
眠る男
地下鉄 左斜め前
全く同じ姿勢で
うつむいて
まるまって
青いジャンバー
それなりに新しい
一ミリも動かず
こんこんとねる
寝る 眠る
私もねる
大手町で乗り合わせ
目が覚める九段下
出入り多い渋谷でも
同じ姿勢でねている
眠る力は
アルコールではない(ようだ)
三茶、二子玉、その度に
こっちは起きて
マダム一人と赤子が
乗り込んで
昼ひなか
小さな仕事を終え
さらに移動
貴重な眠り
起きぬ彼
シートに背中が吸われている
貴重を分かつ
ここで眠らねば
次の仕事で昏倒する
内へ内へ折りたたむ
鷺沼で目覚め
羽づくろい
あざみ野で
トゲ刺すも
起きず
だが
こうやって
彼も
私を見ているのでは
薄眼をあけて
見あげて
じぃっと
気取られぬよう
長津田
あらかた降りて
まさか月待ち
眠りつづけ
ピクリとも
動かず
見事なまで
終点中央林間
それでも眠っている
時間は止まり
彫像のように象られ
お前は降りるのだな
ここで別れたことを
やがて
思い出すだろう
立ち上がる前
その奧のその奧に
遺失したものを