ほぼ毎日、詩と批評、エッセイ、写真、絵画などの作品を公開しています。月曜から金曜の毎日、広瀬 勉さんの写真、毎週月曜日に工藤冬里さん、さとう三千魚の詩を公開します。毎月、月初に、鈴木志郎康さんの浜風詩をさとう三千魚が振り返り、辻 和人さんなどの批評を公開します。また、たいいりょうさん(1日)、薦田愛さん(2日)、塔島ひろみさん(3日)、芦田みゆきさん(5日)、一条美由紀さん(6日)、駿河昌樹さん(7日)、小関千恵さん(8日)、松田朋春さん(9日)、野上麻衣さん(10日)、陳式森さん(11日)、南 椌椌さん(12日)、道ケージさん(13日)、加藤 閑さん(14日)、尾仲浩二さん(15日)、長田典子さん(16日)、Yoichi Shidomotoさん(17日)、ピコ・大東洋ミランドラさん(18日)、原田淳子さん(19日)、佐々木眞さん(20日)、廿楽順治さん(21日)、狩野雅之さん(23日)、西島一洋さん(24日)、辻和人さん(25日)、Claudio Parentelaさん(26日)、白石ちえこさん(27日)、ヒヨコブタさん(28日)、藤生すゆ葉さん(29日)、村岡由梨さん(30日)、また、他のゲストの作品を随時、掲載します。日曜日はお休みです。
萩原健次郎
わたしは、わたしの胃のなかにいるちいさな子と
ちろりちろりと会話をして
川沿いの道を、ひたすら登っていった。
それらは、知らぬ顔で、わたしを憎んでいた。
わたしは、脚を前へ前へ動かしていた。
歩みと言うのだろう。
朝は、毎朝のように、死にたい。
首を括って、無くなりたい。
わたしはもう、燃えている。
赤い肉は、焦げていき
胃の中の子を、道の面に投げだす。
貌を落として、わたしの貌と子が、遊んでいる。
光は、天に昇っていく。
光は、笑っている。
わたしを、笑ってはくれない。
薄く削がれた愛が、七輪の上の
金属の網であぶられている。
一抹の、生もまた、光に焼かれ笑われて
わたしの物体は、どこかから、大声で叫んでいる
さよならに、呼び返している。
わたしの身など、誰かにあげる。
微粒の生も、生きたいか。
泥水の中にいる、粒粒の遺恨も
臓の恋人も。
わたしの、微粒子。
やがて不要になる胃液。
胃の中の子。
陽は昇れ
海に沈め
ギャグを言え。
サバイブの微光に。