若かったころ
四谷の
三栄町の
公園の
鳩の
地面のパン屑をついばむのを
みてた
夏の初めの
空の
水いろの
松の葉がさわさわと揺れ
てた
さわさわと
さわさわと
揺れて
いたな
みていたな
若かったころ
きみの夫は下層であった *
鳩たちは
公園の
パン屑を拾って
生きてた
若かったころ
きみの唇は赤く睫毛は長く黒く
きみの夫は
四谷の
教会の鐘の音を聴いてた
若かったころ
若かったころ
知らなかった
ラルゴも
エレジーも
知らなかった
きみの夫は
松の葉がさわさわと揺れてた
きみの夫は下層であった *
きみの夫は下層であった *
いまは
1886年のエレジー **を聴いています
* 工藤冬里の詩「酢waters」からの引用
** エリック・サティ「1886年の3つの歌」の「エレジー」のこと