さとう三千魚
身延へ行きたいと女がいった
朝
クルマで
身延へ
向かった
義母がいたころ
身延へ
行ったことがあった
義母と
モコと
行ったことがあった
身延には
俤が
残っている
だろう
身延へ行きたいと
女は
いった
久遠寺の長い階段を登り賽銭を投げた
急な坂道を降りてきた
そこにいた
坂道に
シャクナゲの花が咲いていた
ピンクの花だった
そこに
いた
それから温泉に入った
昨日
夕方
市原さんと
Tさんと
駅前の広場に佇った
湯船で
そのことを思った
母と娘と
インドの人たちから
戦禍のパレスチナへ喜捨をいただいた
分厚い男たちの黒い手を
握った
そこにいた
そこにいた
#poetry #no poetry,no life