広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
夏色に豪奢を呼ぶ歯生え揃ふ
光舞ふ花鳥を描き纏ふかな
生毛はや薔薇に染まりて懶惰
手のなかで羽化する揚羽愛を告げ
雷鳴秘めし空は女友達の色
熱風にしばし盲目太古の戈
金の雲無人の船のマスト灼く
オパールの裸体いづみに沈めゆく
信仰の茎剝いでゆく夏星座
白はすにカロンの櫂のしづけさよ
峰雲は静寂に立ち海に落つ
驟雨去り智慧の実熟す領土かな
恋人ら合歓ひらく音に息を吞む
液体に玉蟲と寝て溶ける夢
言葉なきエピキュリアンに夏日射し
逸楽の演技者たらんと蛇殺す
逸楽に眼射られ舌抜かれ晩夏
ゆふやけにキャラバンを組む贋天使
憑代としていかづちに撃たれけり
いちじゆくの割れて喜悦の落暉かな
月の初めの
日曜の
夕方
街に佇つ
昨日も佇った
静岡駅北口の地下広場に佇つ
天窓の向こうに青空と駅前の木立が見える
地下広場には水の流れる音がする
“殺すな!”
“STOP KILLING IN GAZA! ”
そう書いた
ダンボールのプラカードを持つ
佇つ
ほとんどの人たちは目の前を通り過ぎていく
チラと見て眼を逸らし通り過ぎていく
この世のすべてが通り過ぎていく
昨日は
インドの人か男性がカンパしてくれた
ほほえんで
握手もしてくれた
MITさんも最後に来てくれた
流転の人を感じる
目の前に通り過ぎていく人たちも
GAZAの人たちも
ここに佇つ男も
地上を過ぎ去る者たちだろう
夜になり
MITさんと別れた
地下広場の丸い大きな天窓に群青の空が見えた
#poetry #no poetry,no life
おまわりさんが豆をまく
交番の前の道にパラパラと
子どもたちが寄って来る
豆を拾う 豆を食べる
なかには大人も混じっている
犬や小鳥も混じっている
寄ってこない子どももいた
豆を食べると行ってしまう
おまわりさんはまた
ポケットから豆を出す
おまわりさんの私
帽子をかぶって
豆をまくことしか知らないから
また豆をまく
誰もいない道
ガード下の私