michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

夜について

 

松井陽大

 
 

甘いうつの織りなす絹の十字路で
ぼくは夜の墨に呑まれ彷徨う。
とても深い墨の夜
ぼやけた夏の空を浮遊する鈍い影。
その「墨」を放つ
軟体動物をしめ殺して
昼が再び訪れるとしたら?
また君に会えるとしたら?
あたりはしんとして蜘蛛の糸が
天から降りてきそうなほど
アスファルトに汗を垂らすエアコンと
室外機の虫声
ハイブリッドカーの低音が
僕の腹をかすかに揺らす。
あいも変わらずの夜の街。
ぼくらはこの空っぽのおもちゃ箱の
広大な黒い色面にくっついた
小さな二つの目にすぎない。
偉大な夜の子宮のなかでは…
「ドレイ」は夏を、「靄」と「ユメ」
を曖昧にさせ、2本目の煙草に火をつける。

 

 

 

漁港にいた

 

さとう三千魚

 
 

昨日の夜は
漁港にいた

漁港の幸八という

店で
食事をした

家族たちを迎えた

サラダふたつと
刺身の盛り合わせと
焼鳥と
煮出し豆腐と

ビールと
お酒と
カルピスと
あと

しらす丼と
食べたのだったか

家族たちと別れて
帰りは

漁港の
夜の

水面を見ていた

女がクルマで迎えにきてくれた

今朝
アイスを食べた

白クマのいる山の動物園まで家族たちを送った

白クマはいとしい動物だよ
家族たちもいとしい動物だよ

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

立秋

 

工藤冬里

 
 

秋に鍼を刺しても西瓜を買っている
足りないのは頼る能力だ
四次元空間の表面積と体積を求めよ
さまざまなレシピが老齢の嘘を教える
専門医を調べず今の年齢に期待されている四要素が織りなす式を知らずに奇跡は移動している
囲み枠にべからず集を探しては破棄し
光る蜂

 

 

#poetry #rock musician