広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
落ち着くんだ
空が青いぞ
空を見て
眩しそうな顔をすればよい
丹沢の稜線が見える
奥までよく見える
大丈夫、大丈夫
大丈夫、大丈夫
落ち着け落ち着け
生きていることに
さほど意味はない
可不可一条
ケンコーも言っとる
どうもこうもないから
ただ息をすればよい
それだけ
冬薔薇散らしみづうみにレダ眠る
蝋梅を数へて黄泉の燈しとす
転調を許さぬ吹雪死と乙女
冬蝶の翅の欠片を声に持つ
屈強のをとこの口に冬星座
義憤ならず霜咲く硝子見つめつつ
雪汚れし神は目隠しされしまま
月蝕の夜に眩しき海鼠切る
こがらしにそれはあたしと紙の鳥
骨あらば舟に組むべし霜の夜
矛盾と後悔 僕の弱さから来る痛みが空を覆う
気が付いた時には秋は終わっていた
漂う雲は形を変え その色さえ違って見える
冬が訪れるまでの暫定的な空白に
秋が好きだと言った 君の事を想い出した
僕等は地図も持たずに森を歩いていた
時の存在が失われた赤い森
其処は世界の終わりに似ていた
灰色の冬雲の翼 高く聳え立つ壁
僕を誘い込む幻影は暖かく
僕の心を静かに解きほぐす
君の息遣いで満ちた部屋の様に感じた
不完全な僕と不安定な君の狭間
また冬が始まる
昼前に
河口まで歩いた
ノラたちに
会わなかった
海がいた
凪いだ
海がいた
しずかに
風は
流れていた
見ていた
打ち寄せるのを見ていた
波が
打ち寄せていた
何度も
打ち寄せていた
波は岸辺を洗っていた
#poetry #no poetry,no life