広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
昨日か
朝
嵐の朝か
雨のなかを河口まで歩いてきた
小川沿いの歩道には
蛞蝓や
蝸牛が
いた
角のような眼をのばしていた
ゆっくり
歩いていた
時折
雨が地上を叩いた
蛞蝓も
蝸牛も
地上に
いた
人もいた
午後に女と
映画「国宝」を観に街に出かけた
女は
よかった
三時間眠らずに観れた
そう言った
満席の映画館は
夏休みのアニメ映画のようだ
エンターテインメントなんだ
面白ければいいのか
我を忘れるほどにか
昨日か
嵐の朝か
いつもの朝にか *
激しい雨に打たれて *
いた
歩いていた
角のような眼をのばして
ゆっくり歩いていった
* ボブ・ディランのアルバムのタイトル”HARD RAIN “と歌のタイトル「One Too Many Morning」を引用しました
#poetry #no poetry,no life
夏色に豪奢を呼ぶ歯生え揃ふ
光舞ふ花鳥を描き纏ふかな
生毛はや薔薇に染まりて懶惰
手のなかで羽化する揚羽愛を告げ
雷鳴秘めし空は女友達の色
熱風にしばし盲目太古の戈
金の雲無人の船のマスト灼く
オパールの裸体いづみに沈めゆく
信仰の茎剝いでゆく夏星座
白はすにカロンの櫂のしづけさよ
峰雲は静寂に立ち海に落つ
驟雨去り智慧の実熟す領土かな
恋人ら合歓ひらく音に息を吞む
液体に玉蟲と寝て溶ける夢
言葉なきエピキュリアンに夏日射し
逸楽の演技者たらんと蛇殺す
逸楽に眼射られ舌抜かれ晩夏
ゆふやけにキャラバンを組む贋天使
憑代としていかづちに撃たれけり
いちじゆくの割れて喜悦の落暉かな