michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

秩序とか混沌とか

 

薦田愛

 
 

ユウキは恐るべき
マジックテープ使いである
ズボンの裾上げは当たり前
カーテンの丈つめにきっちり測ってアイロンがけ
色合いもぴったりのそれを無駄なく貼る
手際はむろん慣れたもの
ところが
ダブルベッドのベッドヘッドの
2㎝あるかないかの厚みに
ちょこんと置かれた目覚まし時計が
いつの間にか接着されている
ましてやリモコン
柱にエアコンの
食卓の脚にテレビの
リモコンが
接着されている
マジックテープってこんなふうに使うものだったのか
「散らかるのは許さないぞ
空0世界に秩序をもたらすのだ」
いやいや世界といえばカオスでしょ
混沌こそいのちのみなもと
すなわち豊かで可能性に満ちているってこと
秩序なんて何ほどのものだっていうの
だってあなた
束縛されたくないって
何ものも自由であるべきだって
言ってたじゃない
「あるべき場所におさまらなければ
空0混沌なんて混乱なんて
空0許しがたいものなのだ」

まいったなあ
わが家にとんでもない独裁者が出現したよ

齢重ねてふりかえるに
忘れ物なくし物机まわりの物の堆積
ノートをとった授業の結論ゆくえふめい
これはどうやら昨今いわれるところのADHDというそれではないかと
思い当たったわたしは
ねえそのうち
私の背中にもマジックテープをくっつけて
柱に接着するんじゃないの
言うとややあってユウキは
「そうだね
空0それもいいかもね」
って
いやいや違うでしょ
忘れ物なくし物授業の結論ゆくえふめいの
私だけれど
どうしてこれでけっこう地図がよめる女であるので
迷子にはならないんだから
接着定位置ぎめなんて
必要ないんだからっ

にらむのをわらっている
ユウキが立っていったあとの
食卓の上に
リモコン

 

 

 

アンドロイドはキャンプホレブの夢を見る

 

工藤冬里

 
 

あのまま行ったら
どうなってたかわかったもんじゃない
三角の
斜面だけに生きて
香川の雑煮の餡は泥井戸に

もしコロナがなければ
死んでいたかもしれない
坑に下って

僕から僕を引き剥がすために
コロナが興ったと
言えなくもない

そうすると
とんだとばっちり
ということになりますか
みなさん人類には

掘れば水が出たかもしれないが
掘る前に川となり
井戸から飲む前に出発した
そんな風にして
三八年僕に付いていった

 

 

 

#poetry #rock musician

He explained it at length.
彼はそれを詳しく説明した。 *

 

さとう三千魚

 
 

early morning
headed to the beach

the sky on the mountainside of the peninsula was bright

on the mountain
the light appeared

the golden light pierced the beach and the people on the ground

On the beach
there are people

they were praying

with a woman and moco
we prayed together

many people’s faces came to me

it was a secret act
it was something I can’t talk about

go home
I drank beer

I ate ozoni

afternoon

To Akita’s sister
I called

my sister said she was with a cat
because she couldn’t go out because of a snowstorm

He explained it at length *

 
 

早朝に

浜辺に
向かった

半島の山なみの山際の空は明るかった

山の上に
光はあらわれた

黄金の光が浜辺や地上の人びとをつらぬいた

浜辺には
人がいて

彼らは
祈っていた

女とモコと
手をあわせた

たくさんの人の顔が浮かんだ

それは
秘密の行為だった

それは語れないことだった

帰って
ビールを飲んだ

お雑煮を食べた

午後

秋田の姉に
電話した

吹雪で外に出られないので猫とふたりでいると姉はいっていた

彼はそれを詳しく説明した *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

poeta

 

工藤冬里

 
 

なんで立って歌わないんだ

いつの間にか大きくなって
これじゃ町で会っても分からないなあ
そうか辛抱するだけじゃなくて
お茶を入れてあげたり
今はそこだね
まあいいか

立って歌え
土地の境界ずらすな
ギンと罅割れ
包丁持って
蕎麦植える

高千穂と闘って
三百万の宿営を掻き分けて
山羊捨てに行く

蟹の甲羅年跨いで繋がって
コーヒーミルで蕎麦挽く

そっか辛抱するだけじゃなくて
お茶を入れてあげたり

 

 

 

#poetry #rock musician

Do you know him at all?
いったい君は彼を知っているのですか。 *

 

さとう三千魚

 
 

at the end of the year

at the entrance
I hung a picture of Masahiko Kuwahara’s “girl”

a nandin flowers of Hodai Yamazaki
I thought

a nandin flowers
eventually

disappear

called “Ami”

the people
in the Kamakura period

was there

Ippen did not have a temple

they set out to the north
a fruit of nandin will suffer snow in the northern land

Do you know him at all *

 
 

年の終わりに

玄関に
桑原正彦の少女の絵を掛けた

方代の南天を
思った

南天の花も
やがて

消える

阿弥と
号する

衆徒たちが
鎌倉には

いたという

一遍は寺院や堂舎を持たなかった

彼らは北に旅立った

南天の実は
北の大地で雪を被るだろう

いったい君は彼を知っているのですか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

保護膜は破れて言葉は

 

工藤冬里

 
 

ひっそりと越していった
色んなポーズで寝ていた
結局地下室は掘られないまま
常に泣き笑いの顔をしていた
よくインパクトを借りに行った
マキタだった
保護の膜が破れてから言葉は
文字型の木の玩具の剥き出しのようだった

 

 

 

#poetry #rock musician

She drinks a little wine from time to time.
彼女は時々少し酒を飲む。 *

 

さとう三千魚

 
 

midnight
put out a picture of Masahiko Kuwahara

I was looking

dawn
at the desk

drowsy
“He drinks to excess”

of such a title
a series of words

I wrote one

the sun rises
I finished writing the New Year’s card

I hung a picture of Kuwahara’s “girl” at the entrance
I drove to the post office with my woman

evening
I drank “White Horse”

then
I was watching “Diary of Air” by Yasuhiro Yotsumoto

he has a mother-in-law in Yokohama
he had his father in fukuoka

He had his wife and children in Munich

there was Du Fu
there was Santoka

there was Ami

maybe
from a young age

there must have been a window in his eyes

I can’t put into words what I don’t understand
I am Listening to John Coltrane’s “My Favorite Things”

She drinks a little wine from time to time *

 
 

夜中に
桑原正彦の絵を出して

見てた

明け方
机で

うとうとして
“He drinks to excess”

というタイトルの
ことばの連なりを

ひとつ
書いた

日が昇って
賀状を

書き終えた

玄関に少女の絵を掛けた
女と車で郵便局まで行った

夕方には
白馬を飲んだ

それから四元康祐さんの”空気の日記”を見ていた

横浜に義母がいて
福岡に父がいた

ミュンヘンに妻と子どもたちがいた

杜甫がいて
山頭火がいた

阿弥がいた

たぶん
小さな時から

眼には窓があったのだろう

わからないことはことばにできない
コルトレーンの”My Favorite Things”を聴いている

彼女は時々少し酒を飲む *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

dark house

 

工藤冬里

 
 

災厄と混ぜ合わせて逃げ切ろうとする暗い馬が多い
腹を揉んでいたら悲しくなり
白い馬を呑んだ
逃げ馬が大井から逃げて
羽で道路が塞がっている
爆弾巻き付けペガサスは
JALのロゴを毟り取り
穴と砂利のwastesとなった茅場町の萱鼠の
総武線に対してさえいつも
黒眼勝ちの真顔でありとある失敗と紛失に関し
落とし物センターへの祈りのように開いている
白目の多いのが人間の特長だが
健気に対してはまなこ荒れの御節の黒豆
逃げ切ろうとして

 

 

 

#poetry #rock musician