michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

numb・感覚のない 麻痺した

 

さとう三千魚

 
 

今朝も
晴れている

西の
山々がみえる

青い

風が吹いている

風が吹いて
川沿いの桜並木の花たちを揺らしている

人がいない

鎧戸も
風で

鳴っている

眼を瞑ると
聴こえてくる声がある

祖母であったり
母であったり

姉であったり

女たち

だったり
する

女たちの声が聴こえる

眼を瞑ると
見える

感覚が消えても
幻影が消えても

女のぬくもりがある

笑っている

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

千年眼鏡

 

工藤冬里

 
 

今日のあけがた
まつりの熾火はまだくすぶっていたが
さむさのなか期待してうろうろしていた
組内のヤクインたちが起きてきて(ずるいな)協議しているようだった
ここで暴力装置と自治会が系統を別にしていることが明らかになったのをあらためて感じる
ケーサツを呼べ
はまだ生きていた
反逆禁止条例は直接的には暴力装置とかんけいはなく
長の前で「うん」と言ったからといってどうなるものでもないのだ
罪状は大抵の場合突き上げによる
だからもうなにも応えなくていい
仕組まれた事件を扱う長はうらみや嫉妬まで見通しているものだし
なおかつ恩赦の餅撒きまで持つのが支配の生政治というものだ
ヤクインは薬院に集まり鯔背なまつりの死者のハレに衆の焦点を持って行った
まつりの死者はべつの満月のまつりをすでに昨晩用意していた
目の前にあった飲食物を回して与(アヅカ)るメモリアル、という簡素なカウンターであった
暴力装置は作動した
あざけりや唾をかけることはこんどは代理の暴力装置の仕事だった
罪状のパロディを演じるのは共生の実感がないからこそ出来る、虐殺に従順な軍の特色だ
群衆の代理としての暴力装置は個々人には冷たく、棒杭を運ばせられるなどしてとばっちりを受ける者もいた
長が訴訟の裏を見通しているのと同じように、群衆はゴルゴ13のように背面を取られないためにだけ想像力を用いる
まつりの死者はじぶんのまつりの中にいるが群衆はかれらのまつりの中で裏へ、裏へと情動をマネジメントするので
雷の声を聞いてもその解釈に於いてつねにずれていく
えりという語が発せられているのに聞き間違いを耳に強いてまで裏を取って意識決定をずらせてゆくのだ
それは消防団的なリーダーたちへの付和雷同という消極的な側面もあるが
苛められて来たゆえの防御反応でもある
昼なのに闇が垂れこめている
奥の奥に通じるとされていた幕が裂けてやっと裏がえしていたものが現実だったと知る兵隊もいる
動態視力としてのカメラは引かれまつりの外の大勢の女たちが映し出される
roll it on him!
読者よ想像力を働かせなさい
支配の複雑さと虐待のトラウマから来ているのかもしれないが
本当の場面に遭遇した時いつものように裏を想ってしまうならば
人の子を殺してしまうのだということを。

花の季節に閉じこもって花の写真を見ている
忙しくしていれば乗り越えられると信じて
欠落を見続けている
だが今日は見てやる
ちらとでも見てやる
花の永遠を
見たら爆発する
去年との違いを見てやる
おう 書き言葉 書き言葉
詩の役割語よ
腹を立てていた
自分に対してだけじゃない
ほとんどすべてのものに
そばにいる
画面にない手を見る
猫を見ていると
種の違いよりも
個体差の方が本質的であるように思える
千年眼鏡を外すと
聖霊なきシュールの彼方
ここまで画像整理に励んでいるということは
ほんとうに死者からのアルシーヴを実践しているということだ
平たく言えば今年からはサクラもガン見しようとせず既に死んだつもりになっているということだ
happy passoverなどというGIFが散見されることからすれば
地上性の開き直りの世俗は天に達している
すなわち滅ぼされる
きみはガクモンにヨリドコロを見てはいけない
天にも地にも居場所はない
緑の濃いとりわけにちゃらけた写真があった
セイタカアワダチソウの黄色が見えた
耳鳴りの中痙攣しながら自分で自分の肩を抱いて寝なさい

 

 

 
#poetry #rock musician

風があること

 

小関千恵

 
 

風があることを見ていた

遠い空
遠い時間

この流体は
碧落からやってくる生きものだろうか

手をかざせば
掴めもしない透明な糸の束が
血を撫でるように指の間を抜けてゆく
その冷たく柔らかな感触ではっとする
空気は物質だったこと
「ない」とされやすい部分が
「ある」に満ちていたこと

それは身体を破った風だった

立ち止まり
身体を開いて
目を閉じる
風が吹いている
時が膨らむ
音や匂いが膨らむ
風は頬に髪を掠めてゆき
胸の奥までくすぐったくなる
胸から深い吐息が出てゆく
吐息という生まれたばかりの風は
たましいを乗せて
小さな虫を乗せて
花を揺らし
水を揺らし
気づかれないまま
誰かと誰かの間合いに吹いてゆく
いつかは
雲を運び
ゴミを巻き上げ
木々を揺らす
きみとわたしのあいだを吹いてゆく
星とわたしのあいだに吹いてゆく
それを見つけて
鳥が羽ばたく
雪が舞う
花びらが舞う

むかしむかしの地図で見たことがある
風の出どころは
天窓から地上を覗き込んでいる天使たちが
唇を尖らせて吹き付けていた吐息だった
ルーアハ ルーアハ って

風にならなければ
地上を巡り巡って
撫でられないだろう


たましい
呼吸

凪が落ちている
体の中
みちのうえ
一歩一歩
それを拾いながら
優しく握っていた
風で浮くこと
沈むこと
生が
どこまで飛んでゆくのかを

猫の寝息が聴こえます
ただ心地よく
浮いてゆく

目を閉じて
見ています
風のこと

 

 

 
#poetory

opposite・反対の 向こう側の

 

さとう三千魚

 
 

この
部屋の

机の前に窓がある

窓には
ガラス戸の手前に

障子の引き戸があり
日が障子に射してやわらかく

明るい

障子を開けると
西の山が見えるだろう

西の山のうえには
青空が

あるだろう

反対の
むこう側の

イタリアの
カタンツァーロの

Claudio Parentelaからメールの返事がこない

今朝

風の音が笛のようだ

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

千年花月

 

工藤冬里

 
 

ユダの声色で
腑の出た魚
トリチウムの様(やう)に捨てられた旧神は剥(ムク)れる

千年花月

薄つぺらい写真で出来上がつてゐる菊人形状の身体から満月を剥がし
その欠落について補填するのなんの
減収のはなびらで装ひ
理由のある唯一の札を引くやうに
現実と永遠を重ねる
オートバイは失恋を吠え
罪のレセプターに給油する
その愛はリッター何兆円ですか
何かわるいことをしたのではないが質(むかはり)になつてねこの視線にまで入り込んだ
生き返らせるには写真アルシーヴの配列を変へるだけでいい
サイズでも作成日時でもなく人は名前で並べ
パオの中で火が燃え
ねこは内側に揺蕩(たゆた)ふ
外で繋がれてゐた人間はウヰルスのついた無酵母の煎餅様(やう)を食べた
とりわけ白茶けた一葉が抜き取られた
決して到達しない花月に向けて

ある種のマリン・ブルーを敷き詰めた部屋で
法律用語こそが最上等リアルだつた
それを知ることはそれを愛すること
その乖離に竦(スク)み
生き返つたねこの視線を骨組みとした天蓋の白を以て
いぬの目に降る花月に揺蕩へ

 

 

 
#poetry #rock musician

correspond・文通する 一致する

 

さとう三千魚

 
 

おおきかった

昨日
夕方にみた月は

青空のなかにまるく
白く

浮かんでいた

夜の
TVニュースで

いまの月が地球にもっとも近づいていて

大きく見えるのだと言ってた

同じニュースで
この国の首相が緊急事態宣言を語っていた

今夜
風呂場に防水スピーカーを置いて

湯舟で

乾からびた胎児を聴いていた
通信なのだろう

サティは

たまたま
この季節に近づいていて

白い
そのおおきさに驚いている

月はいつもいる
地球をまわっている

偶に通信に気づく

棒杭が
佇っている

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

千年ランチ

 

工藤冬里

 
 

音楽の中世化が必然であったのであれば思想もまた中世化しなければならない
必要なのは超越ではなく退却なのだ

栄光を示すと言う
これまで二回示したしこれからも示すと言う
目に見えないけれど声を出すことが栄光を現すことになるらしい
じゃあぼくは声を出し続けていてしかも目に見えるからずっと栄光を表していることになるけど
そうならないのは全てを反映させていないからか
その欠落の周りに欲望が生じているのか

演劇の一部として使って際立たせるというのが音楽を活ける方法だったが、詩に花道はあるか。

非対称が際立ちすぎてはいけない
自力で飛べないならリーダーになってはいけない
変哲ない木立の写真に
絡まった見えない羊を探せば
鉄格子越しのきみの顔が見えるだろう
羊頭からのその折り返しは変身しない隊員のようだ
スマートではあってもヒーローではない
コロナ怪獣対策の隊員はTVの中で
令和に昭和を滑り込ませている
お兄さんキャラがドブ板に白黒で立ち上がる
御同輩!と紙一重の電化羽根
パンシロンのバンカーは禁令下の駐在地で妻のランチを
首を切られた白鳥のように
詩を活ける室町にする
頬痩けたスーパーマンの力強くげっそりして
アメリカでも中国でもない
灰色のキャラメルごと飛ぶ宇宙船のなかの静止画像の地染め前の伏糊感
おお 立体よ
バナナのように直立しマカダミアの顳顬を持つ
一九六ニ年から西暦しか使わなくなった韓国に昭和はあったか
生き残る人に共通していたのは

掃除機の空洞を思い浮かべてみる
コロナじゃないよ花粉だよ
と抗弁している仮想の現実を
受け入れているかどうかだ
画面を見るとゆうちゃんて一家の中心なんだね
髪の分け目の用水路が上に延びて
今は令和だ
あらゆるGIFがあるように思える中で
欠落のみに注目しよう
英語にはないニュアンスは集められて
仕分けられぬまま
春のゴミ屋敷に
菜花として生え
生首として活けられる
天には無い光景として
生花は切られ
タイで絞められ
鯛は不躾に活け締められるから
称賛しないなら弟子にならないで済むと
花の下で論語教師の落としたUSBの
早口のワクチンのデータを届ける
光る柿の芽を早く食べなきゃ
大艱難が始まってしまうが
アーカイブは花瓶に活けられなければならない
選ばれることはミュージシャンの願いや努力にではなく憐みのあるコロナにかかっている
授業がストップして学力の差が出ることを心肺している
選ばれることと選ばれていないことの界面はない
アゴニストとアンタゴニストの汐に晒されるが
その内面は孤児レセプターのリガンドとして
高潔さを捨てずに歩む

アルシーヴに忙しすぎて見れない(ラ抜きすいません)と過ぎ越して
今年もやはり桜を見ることは出来なかったと桜の下でホカ弁のランチを食べながら思う
いつかきっと花を見れる(ラ抜きすいません)日が来る、
というのは決して充足することのない対象aであり
今年も花見なのに花の欠落を見るということになる

人の写真がアルシーヴに這入り込んでくる
見えない道徳律を守れないのだから見えないコロナから身を守るなどということはできない

いつ死ぬかわからないのに引き落とし契約などできない

 

 

 
#poetry #rock musician