足を上げていた

 

辻 和人

 
 

朝の
ミルクを飲み終えて
こかずとんが
仰向けの姿勢で
こちらに顔を向けながら
足を
上げていた
右足左足一緒に
いち、に、さん、し、
5秒数えるか数えられないか
湯気が立って消える
みたいに下した
こんなに高く上げたのは初めてだ
足は
ぴんとしていた
30度くらい?
マットの上でもぞもぞ
動かしてるのとは違う
足に力を込めていた
こちらを向いた顔は笑っていて
力を働かせたことを
知っていたよ
誇っていたよ
ミルクを
飲み終えた
朝の
湯気が立って消える

じゃあぼくもいっちょやってみるか
ごろっとこかずとんの横に寝っ転がる
いち、に、
足上げるのって結構きついもんだな
おや、湯気立ってる
横で寝てたこかずとん
いつのまにかこちらに顔を向けて
さん、し、
足を
上げていた
ぼくはただ足をいっちょ上げてるだけだけど
こかずとんには上げた先に待ってるものがある
足はぴんとしていて
笑ってた

 

 

 

コリコリコリック

 

辻 和人

 
 

コリコリだ
このところ夜はまとめて寝てくれる
このところ笑顔も増えてきた
なのにコリコリ、コリコリ
コリコリコリック
和名「黄昏泣き」
夕方、激しく泣く
4時にむっくとお昼寝から覚めて
ちっちゃなウェンウェンから始まり
やがてギュエエーンギュエエーン
泣き止まない、3時間泣き止まない
縦長に開いた口から呪いの声吐き出すコミヤミヤ
目腫れ切って真っ赤な手足震わすこかずとん
コリコリだ
コリコリコリック
必ず泣くこの時間帯
コミヤミヤを縦抱きしてゆっさゆっさ
涙がひと筋、ふた筋、流れ落ちて
落ち着いたかな
マットに下すと途端にギュエエーン
ああ、どうしたらいいんだろう
ミヤミヤと相談して代わりばんこに夕食をとる
ミヤミヤが抱っこ、ぼくがごはん
モグモグササッと食べ終わって交代
こかずとんを抱っこ、コミヤミヤにガラガラ
それでも泣き止まない

ミルク飲ませたしお昼寝もしたし
オムツも変えた
じゃあ、どうして泣いてるの?
ふと頭に浮かんだ
昔読んだ吉本隆明の難しくてよくわかんないところもあった本
『言語にとって美とはなにか』
「言語は、動物的な段階では現実的な反射であり、
その反射がしだいに意識のさわりをふくむようになり、
それが発達して自己表出として指示機能をもつようになったとき、
はじめて言語とよばれる条件をもった」
おお、コリコリ、コリだよ
生後すぐの大泣きは
まあ動物的な段階だ
でも生後3ヵ月を過ぎた今は目を見て笑顔、社会的微笑を連発
「意識のさわりをふくむ」ようになった段階ってことだね
言語まではまだ遠いけど
<自己>が生まれて<表出>する
コミヤミヤはコミヤミヤでコミヤミヤだ
表出! ギュエエーン
こかずとんはこかずとんでこかずとんだ
表出! ギュエエーン
理由なく泣いてる、わけじゃない
さわりがコリコリを呼んでいる
コミヤミヤがコミヤミヤでこかずとんがこかずとんだから
コリコリだ
コリコリコリック

2人を交互に抱っこして
だんだん顔つきがとろっとしてきた
そろそろ7時か
抱っこしてると疲れるけど
その重さが快い
横抱き抱っこを縦抱き抱っこに変えて
お尻の感触がもちっと腕に伝わってくる
コリコリ?
意識のさわり
うん、こりゃさわりだ
コミヤミヤのお尻の感触、こかずとんのお尻の感触が
2人をただ目で見た時とは違う感情を連れてくる
ギュエエーン、とはならないけれど
何かコリコリしたもの
お尻を、腕で、食べちゃいたい
ぼくの中から<自己>が飛び出して
勝手にさわりを作ってやがる
こういうのも
<自己>が<表出>してるって言うのかな?
『言語にとって美とはなにか』、ちょっとわかった気になってきた
なったところで
コミヤミヤとこかずとん、とろんとろんと落ち着いてきた
親指をお口に入れてくっちゃくっちゃ
もう少ししたらお風呂入ろうね
それで明日の夕方またコリコリしようね
コリコリだ
さわりが<自己>で<表出>だ
コリコリコリック
コリコリコリック

 

 

 

しっかり臭い

 

辻 和人

 
 

出ない、出ない
こかずとんのウンチが出ない
おととい、出ない
昨日、出ない
今朝も出なかった
前は1日に4、5回はウンチしていたこかずとん
このところ1日に1回ペースだけど
丸2日も出ないとなると
こりゃ便秘かな?
「病院で教えてもらったやり方試してみようか」とミヤミヤ
綿棒にワセリン塗って
「肛門、ここかな? かずとん、足押さえてくれる?」
ぷゆぷゆする丸いお尻に空いた暗いピンクの穴に
ゆっくり綿棒を差し込んで

ぐーりぐりぐり
ぐーりぐりぐり

これで良し
暴れることもなくニコニコ顔のこかずとん
期待に応えてくれるかな?

ところが出ない
次のオムツ替えも出ない
その次のオムツ替えも出ない
出ない、出ない
困ったなあと思ってたら
きゅーっとちっちゃな音
やにわにミヤミヤがこかずとんのオムツに鼻近づけて

くんくん
くんくん

「してるかもしれないよ、かずとん、オムツ見てくれないかな?」
合点だあ
急いでオムツ開くと
出てるぞお
黒味がかった黄緑ウンチ
べたばべたっぷり
病院にいた頃の甘い匂いの黄色いウンチじゃない
しっかり臭い
やったぁ
さっすがミヤミヤ
ウンチの匂いなんて普通嗅ぐものじゃないんだけど
嗅ぐときゃ嗅ぐぞ
ミヤミヤ、やったぁ
かずとん、やったぁ
指しゃぶりながらこかずとんも嬉しそう
お尻ふき何枚も使ってきれいきれいして
さて、新しいオムツ履かせるか

まさにその時
ぶっりゅりゅりゅーっ

かずとんのシャツめがけて第2弾発射
2日と半日分
黄緑の濁流は
かずとんの白いシャツを
べたべたたっぷり染め上げた

「大変大変、洗濯するからすぐ脱いで。
それにしてもこかずとんのウンチ、勢いあってお見事だね」
あはは、見事お見事
ぐーりぐりぐり、が
くんくん、になって
ぶっりゅりゅりゅーっ
見事お見事
しっかり臭い
黄緑ウンチはいい匂い

 

 

 

顔色はいい

 

辻 和人

 
 

妹の電話がどやどや連れてきた
「お父さんとお母さん車に乗せてあちこち走ってたら
何か近くまで来ちゃったの。
突然で悪いけどさ、今から行ってもいい?」
近いうちに孫の顔見せに行かなきゃとは思ってたけど
向こうから
どやどやどやってきた
父は膀胱悪くて腰に尿パックつけてる
顔色はいい
母は父を支えるのに忙しいけど顔色はいい
突発的な行動取るのが得意な妹は顔色はいい
コミヤミヤもこかずとんもミルク飲んだばっかりで顔色はいい
折角来てくれたんだから抱っこもしてもらわなきゃ
オジイチャン、腰にオシッコ袋つけたまま抱っこ
意外な重さによろけたけど踏ん張れた
コミヤミヤ、ちょっと傾いて
ふぇって顔崩れそうになったけど
まだ人見知り始まってないコミヤミヤ
態勢立て直すとほわっと笑顔
ぼく含めて3人育てた経験あるオバアチャン
昔取った杵柄でこかずとんを一発でしっかり横抱き
まだ人見知り始まってないこかずとん
肘のくぼみにすっぽり収まって
薄目開けてほわっと笑顔
介護の仕事長いオバチャン
高齢者も赤ちゃんも基本は同じと2人一緒にピシッと抱っこ
人見知り始まってない2人、今度は正面向いて
ピシッと笑顔キメる
「ああ、笑ってる笑ってる」
「あんなにちっちゃい手なのにしっかり服つかんでかわいいねえ」
さて、あり合わせだけどお茶にしますか
ちょっと疲れたコミヤミヤとこかずとん
下したマットでもぞもぞ
大人はスーパーで買ったモナカをもそもそ
小休止
沈黙の時が訪れた
もぞもぞ、もそもそ
音がする
ありゃりゃ
ここにいるみんな
体でつながってるな
コミヤミヤとこかずとんを真ん中に
性器やらへその緒やらその他いろいろ
体でつながったことのある者たちだ
性器は見えない
顔は見える
意外な重さによろけたりしたけど
体でつながってるから
沈黙してても途切れない
もぞもぞ、もそもそ
いい音がして
いい顔色だ

 

 

 

座った、座った

 

辻 和人

 
 

座った、座った
―何が座った?
首が座った
―首が座るなんてこと、あるのかな?
あるよ、見てご覧よ
まずコミヤミヤの両肩の下に手を入れます
首に支えはなし
きょととんきょとん目を回転させるコミヤミヤ
じゃあ、ゆっくり上体持ち上げますよ
肩前に出る、背中マットから離れる
きょとんの顔が持ち上がって
―ぐにゃりってなったりしないの?
見てて、ほぅら
首が胴体の動きに従って
にゃぐり
ついてきてる
コミヤミヤの首、まだ細い
まだまだ細い
しなりそうに、しなりそうに
ここで懸命に重力に逆らって
にゃぐりっ、にゃぐりっ
胴体から離れるなっ
逆らって逆らって
もうひと息
上体まっすぐ
ちょこん
―わぁおーっ、座ったぁ
でしょでしょ? 
首って座るんです
足はなくても座るんです
コミヤミヤのまだ細いまだまだ細い首にとって
座るって楽な姿勢じゃないけど
寝てばかりは嫌
体の上に座ってちょこんしたい
ちょこんと座れば
白い衣服に包まれた自分のアンヨが
きょとんとした目に飛び込んでくる
―感動、これがアンヨかってなるね?
アンヨだけじゃないよ
首がちょこんと胴体に座れば
おおっ、庭の柚子の木が飛び込んでくる
おおっ、さっき口拭いてもらったガーゼハンカチが飛び込んでくる
今まで見えなかったものが
にゃぐりっ、飛び込んでくるんだ
首が座ると目が忙しくなるんだよね
上にも下にも斜めにも見たいものいっぱいあるよ

―かずとんパパ、首が座るって素敵だね
ああ、首
いっつも首だった
細い首
抱っこするたび
ぐにゃり
柔らかく曲がって、それっきり、なんて
ほんとに怖くてね
お風呂の時もミルクの時も
まず首押さえた
押さえると
柔らかい重さが腕全体に零れた
コミヤミヤの首とぼくの腕が一体化する
すると不安が安心に変わって
柔らかい重さがぽっと周りの空気に広がるんだ
―首押さえたら安心がぽっと、ね
そう、ちっちゃな安心
首が座ってこれから味わえなくなっていくのは
ちと寂しいかな

 

 

 

吸血キスマーク

 

辻 和人

 
 

腕の中にいるのは何だ?
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ
ひっきりなしに吸っている
目は固く閉じて吸っている
シャツをぎゅっと掴んで吸っている
コミヤミヤ、軽いうなり声あげて甘えたそうだから
抱えあげた途端
ぷっくりした唇が
ちゅぱっ
Tシャツから覗くかずとんパパの二の腕に吸いついた

皮膚の一番薄いトコはどこだ?
ここだ、ここだ
狙って
吸え、吸え、吸い破れ!
破っちまえば精のつくものが出てくる
何かしら濃いもの
ミルクより濃いものが
たぷたぷ出てくる
牙の代わりのぷっくりした唇のねっとりした内側の
鋭いこと鋭いこと
かずとんパパのうっすい皮膚を破って精吸い尽くせば
グングン成長するぞ
今は抱っこされてるけど
成長すれば逆転するぞ
かずとんパパの方が小さくなって
こっちの腕にしがみつくことになるぞ
口動かせ、もっと口動かせ
つむった瞼の奥の奥で
ほら、かずとんパパ、もうこんなに小さい
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ

かれこれ20分も一心不乱
そっと剥がしてみるか
げげっ、二の腕にキスマークできちゃってるよ
おっきいのが2つも
キスマーク、つまり内出血、つまり血
こりゃ吸血鬼だな
口動かせば生きる元気が湧いてくる
あんなにちっこく生まれてきたのに
こんなにでっかいキスマークつけるようになっちゃって
ならば吸血鬼コミヤミヤ
吸え、吸え、吸い破れ!

吸われて縮むかずとんパパ
縮んで縮んで
吸血鬼コミヤミヤの腕にしがみつく恰好に
どうしよう
でもこのままじゃ終わらないぞ
コミヤミヤのぷっくりしてきた二の腕
2000gで生まれたとは思えない二の腕
かずとんパパ、ちゅぱちゅぱし返して
いつか復活してやるからな
ちゅぱちゅぱ
ちゅぱちゅぱ

 

 

 

旅の最中

 

辻 和人

 
 

ハイ
ロー
ハイ
ロー
前に進んで
後に下がる
こかずとんのギャンギャン泣きが止まらない
洗濯にとりかかりたいのにできないよ
ハイローチェア様
出番ですよ
耳をつんざく声の主
ヒックヒック反り返らせる体を乗せて
カチッとベルト締める
ちょっと弾みをつけて
スイッチON!
耳つんざく声
だんだん弱まって
オッオッ……オッ
バタバタさせてた手がだらりと下がって
涙いっぱいの目も閉じていく
ああ、太古より赤ちゃんは移動時静かになる
移動中は危ないから騒ぐなって本能が教えてるんだって
前に進んで
後に下がる
プラマイゼロ
一歩も進んでないし一歩も下がってない
だけどこかずとん、君は今
抱っこされての旅の最中
振り落とされると危ないから静かにしようね
はぁい、くらーい森を通過中
はぁい、あかるーい平野を通過中
はぁい、あつーい砂漠を通過中
はぁい、すずしーい洞窟を通過中
進んで進んで
ひたすら進んで
はぁい、遂に眠りの国に到着
はぁい、プラマイゼロの旅、お疲れ様でした
ぽかっと開いた口からじゅるっとひと筋の涎
はぁい、まぁるい太古の顔だ
さてウンチついたベビー服手洗いするか
ハイ
ロー
ハイ
ロー

 

 

 

今更ながらパパっていうこと

 

辻 和人

 
 

今更ながら
何なんだ?
2階に引き上げるミヤミヤ、ぼおっと浮かぶ
「かずとん、後はよろしくね」
午前1時のシフト交代
コミヤミヤとこかずとん、ぽおっと浮かぶ
オムツ替えてミルク飲んで
じき寝るかな?
次にぽおっと浮かぶのは
おっと、2カ月半の新米パパ
擦り切れたジャージ着て寝不足の目しょぼしょぼさせてる
パパって何だ?
一生独りでいくぞって決めてたよな
なのにひょんなことからノラ猫かまうことになって
ひねった首で舐め舐めしあう冷蔵庫の上のファミちゃんレドちゃん
ぼおっと浮かぶ
一緒に過ごすニンゲンの仲間もいいかもって
待ち合わせの改札でこっちこっち背伸びして手を振るミヤミヤ
ぼおっと浮かぶ
お腹ぷっくりミヤミヤが
お腹ぺったんこミヤミヤにぼおっと入れ替わって
入れ替わったと思ったら
へその緒ひょろっとコミヤミヤとこかずとん、ぼおっと浮かぶ
上手なジャズ研があるからってぼおっと大学を決め
本が好きだからってぼおっと就職先を決め
詩が書きたいからってぼおっと書いてきた
その先に
深夜1時のぼおっとパパだ
何にもない
今更ながら
ぼおっとパパだ

赤ちゃん見守り用ベッドに横になる前に
お楽しみを一杯
実はウォーターサーバーをレンタルしたんだ
ちょっと贅沢かと思ったけど何の何の
お湯と常温水と冷水が出てミルク作りがめっちゃラク
富士山麓のおいしい水使ってる
赤ちゃん用の水だけど一杯だけ失礼するよ
ビー、コップについで
ごくっ、浸みるぅー、ンうまい

コミヤミヤとこかずとんの呼吸確認するか
両手バンザイポーズで眠ってる
耳近づけて
ぼおっと吸って
ぼおっと吐き出す
ぼおっと規則正しく顔色も良く
浮かんでる
次のミルクは午前4時
コップの残りの水ぼおっと飲みほす
水って味がない
ないからンうまい
今更ながらパパって
何にもない
味もない
午前4時にぼおっと浮かぶ
ぼおっとパパなんだ

 

 

 

奇襲成功

 

辻 和人

 
 

新兵器の投入だ
顔真っ赤手足バタバタの魔の7時
ギャン泣き声に挟まれて危機に陥ったかずとんパパ
だが今日は新兵器があるぞ
両端に膨らみを持つ赤い棒状のものが
コミヤミヤとこかずとんの頭上を駆け抜けた
西松屋で1000円で買った
マラカス型のガラガラ玩具
ジュカジュカジュカジュカジュッ
かずとんパパが強気で振ると
強気の羽ばたきの
ムクドリの急降下
コミヤミヤの声ぱたりと止む
こかずとんの声ぱたりと止む
撓んだ曲線の航跡から
にゅっと嘴生え出て
空気を鋭く切っていく
あっけ
に取られた
2つの口をまあるくする
お次はアゲハチョウ
かずとんパパが人差し指と中指を使って弱気に振ると
ながーい触覚もそっと動かし
ゆらゆら舞い上がる
小刻みに上下
小刻みに羽震わせ
シュカシュカシュカシュカシュッ
描き出されるゆるーい八の字に従って
2×2の目
きゅっきゅきゅ動く
さっきまでのギャン泣きが噓のよう
かずとんパパの魔法の手の力で
両端が膨らんだ赤い棒の中から
突如出現した
ムクドリとアゲハチョウ
奇襲成功だ
よし、またムクドリいくぞ
次のミルクまでの1時間持ちこたえるぞ
ジュカジュカッシュカシュカッ

 

 

 

背中スイッチ

 

辻 和人

 
 

背中

スイッチ
背中スイッチ
そおっと解除しないと
爆発する
赤ちゃんの背中にはスイッチがあるんだ
押されると
抱っこされてないよって信号が発信されてしまうんだ
やっとウトウトしてくれたコミヤミヤ
かれこれ1時間泣きっぱなし
抱っこユラユラ、抱っこユラユラ
さすがに腕が痛くなってきた
涙ひと筋垂らしたままの目閉じて
背中まあるく
ママのお腹で眠っていた時の姿勢
これがいいんだ、と
これが落ち着くんだ、と
下手に寝床に降ろしたら
スイッチが押されて爆発するんだ、と
おおっ、そんなことになったら
すやすや眠ってるこかずとんともども木端微塵だ
柔らかく呼吸する爆発物
そっとそおっと抱えて
まず膝を折り
腕を寝床に近づける
ここはママのお腹の中だよぉ
あったかいお水たっぷんたっぷんだよぉ
超小声で話しかけながら
足の方からゆっくり降ろすのがコツ
背中刺激しないようにゆっくりそおっと
途端
ウッワァーン、ワァーン
抱っこされてないんだぁー
ママのお腹ン中みたいなトコにはいないんだぁー
コミヤミヤ、爆発
隣で寝てたこかずとんも、爆発
2人して真っ赤な顔で、爆発
あーあ、解除失敗
背中

スイッチ
背中スイッチ
午後4時の薄闇には
硝煙が漂っていて
まっくろこげのかずとんパパ
ギャン泣きするコミヤミヤの前で
おろおろしてました、とさ