くもり空で、
すっきりせん頭 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 002     ken さんへ

さとう三千魚

 
 

降るの
かな


降るのかな

黄色い花が好きだ

ここに
いる

花の
咲くの

待ってる

 
 

***memo.

2025年6月1日(日)、
水曜文庫にて開催した”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第2期、 2個めの即詩です。

タイトル ” くもり空で、すっきりせん頭 ”
好きな花 ” フリージア、黄色 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

見ようとした見えないもの

 

工藤冬里

 
 

打ち壊しは見えないがConfuciusは見える
サラ地も口座も見えないが長者を路頭に迷わせる良心は見える
見えるのはディスプレイ、見えないのはファクトリー
裁かるゝジャンヌ、
ブレッソンが嫌ったドレイヤーの見ようとした見えないもの
エロイカをバックに騎兵が展開する
ヤツデの葉見えない大塩平八郎
見えないローザ
見える結婚
〈それは私のこと
そしてそれはこの世のこと〉
見える
その方法
カエルを上って来させることまでは彼らも出来た

 

 

 

#poetry #rock musician

休み明け ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 001     kouichi さんへ

さとう三千魚

 
 

空に
雲が

ひろがっている

どこに
咲いているの

くれないの花
紅い花

空を見あげてる

 
 

***memo.

2025年6月1日(日)、
水曜文庫にて開催した”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第2期、 1個めの即詩です。

タイトル ” 休み明け ”
好きな花 ” つつじ、紅い ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

つなぐ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 127     tokihisa さんへ

さとう三千魚

 
 

つなげないだろう

なにも
つなげないだろう

ダリアは

佇んでいる
崩れている

なぜ殺すの
なぜ飢えさせるの

なぜ
見捨てるの

なぜ声にならないの

なぜ
声に

ならない声で言うの

なぜ
呻くの

なぜ
白いの

なぜダリア白いの
なぜダリア白いの

ダリア
咲いている

佇んでいる
崩れている
叫んでいる
呻いている

 
 

***memo.

2025年5月29日(木)、
自宅にて

“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 127個めの即詩です。

タイトル ” つなぐ ”
好きな花 ” 白いダリア ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

冬 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 126     maiko さんへ

さとう三千魚

 
 

秋が終わり
冬の始まるころ

天辺が
白く

光るのを
見たことがある

あれが焼石岳と教えてくれたひとは
いない

もうみんな
いない

冬は
言葉がない

紅い椿を胸に抱いている

焼石岳の
天辺を

白く光らせ

紅い椿を
抱いて

雪の細道を行くひとがいる

 
 

***memo.

2025年5月28日(水)、
自宅にて

大磯 ” soui ” 詩をひらく、の後で

“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 126個めの即詩です。

タイトル ” 冬 ”
好きな花 ” 椿、紅い花 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

初めて食べる

 

辻 和人

 
 

くん
この匂い、何?
ミルクみたいに甘くなく
でもかすかーに甘―い
とろっ
この感触、何?
流れていかない
でも粘らない
べろの上をにゅにゅん滑った
ごっく
飲み込めたぞ
ミルクじゃない
初めてだ
嫌じゃなかった
もうひと口、大丈夫

ミヤミヤがコミヤミヤに、ぼくがこかずとんに
2人同時にお口あーん
2人同時にぱくっ
2人同時ににゅにゅん
べろ動かして
ごっく
飲みこんじゃった
2人同時に何だか上向いて
2人同時に何だかちょっと笑った
お米のピューレ
食べ物って奴
初めて
初めて
そういやお尻に硬いベビーチェアで足ぶらぶらも初めてだ
とろっ
にゅにゅん
ぶらぶら
嫌じゃなかった
そうして
初めては
ちょっと笑って
いつのまにか通りすぎてね
いつのまにか初めてじゃなくなったんだよ

 

 

 

会えた **

 

さとう三千魚

 
 

人がいた
猫もいた

猫は
本棚に飛びのった

人は
味噌汁の味がする

煮干しの味がする
藁を焼く匂いがする

しあわせを抱いていた

母と父が
笑っていた

 

・・・

 

** この詩は、
2025年5月23日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第17回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

二見ヶ浦霊園
山本哲也先生十三回忌まえに

 

道 ケージ

 

「和」なんですが
多いですもんねと石屋
百合地区蘭地区すみれ地区

いくら探してもないお墓
月曜日は管理事務所の定休日
記憶は確かなのに
ない

墓じまいしたとかねと友人
もうすぐ13回忌やもん
あー、早めにね
そうね、あるかも

「和」をひたすら探す
「和」が多すぎる
海は広い

オレなら
生か無か
道はいやだ
謝、元、思、「し」
いっそ狂
無と謝はあったな

なぜ「和」なのか
生前聞いた気がする
すっかり忘れて

オジキの墓も同じ霊園に
こちらも見つからない
やっとこ石屋さんに聞けて
あやめ区とわかっていたので
すぐに教えてくれた
オジキとちょっと話す
石は風の声

オヤジは
飯盛山の西部霊園
「海」
これはたぶん一つだけで
見つけやすい
しかしなぜ「海」かはわからない

オヤジは元から
話さない
石もあまり話さない
潮騒は聞こえない

 

 

 

盲人

 

廿楽順治

 
 

「夜がくる
するとだれも動けなくなる」

ひとりで
その本を読んでいると
道の前に入り込んでくる盲人がいる

泥のついた眼で
(やがてそれは開くのだが)

本の男はなにも知らない

なぜ眼なのか
なぜその先が他人の風景なのか

「見える人たちが
見えないようになるために」

ぬるぬるするものが
足のうらへ

くっついてくるのだ

 

 

 

千曲へ

 

さとう三千魚

 
 

雪の降る前に
行った

去年
だった

千曲の戸倉で茸鍋をつつき福寿草の温泉に入った

春になったら
また来ます

そう約束した

それで
この春に千曲に向かった

高速を走った
275kmをクルマで走った

眠くなり
何度か休んだ

八ヶ岳と諏訪湖のPAで休んだ
姨捨のスマートICで高速を降りた

根石さんを乗せ *
田沢温泉に向かった

やっと
ここに

ひとりの詩人がいた

富士屋の風呂に入った
夕食にビールを頼んだ

そこにいた

翌朝
根石さんは言った *

“吉本は喉の奥にひっかかった骨みたいだ” **
“ひとりで荷なっているものが吉本にはある” **

そう言った
そこにいた

 
 

 * 根石さんとは、詩人の根石吉久のこと
 ** 吉本とは、詩人、評論家の吉本隆明のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life