海から帰った

 

さとう三千魚

 
 

昨日も
行ってた

昨日も
海に行ってた

知り合いのおじさんが
マリーナ横で

竿を出していた
黒鯛をねらっていた

陽に焼けた
白髪の

おじさんはいた
ずいぶんと会ってなかったな

おじさんは
おとなしく話す

おじさんは
オレンジの軽トラに乗っている

膀胱と前立腺を手術でとったんだと言った
海浜公園の土手の坂はもう登れないから

ここで竿を出している
と言った

今日も

海に
行ってみた

おじさんはいた
おじさんに会えた

マリーナ横の海は

空を映して
青く

うねうね揺れていた

風に吹かれていた
夕方に帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

川岸で女たちは見つかる

 

工藤冬里

 
 

うっすらとはみ出してゆく
盤の外へ雪崩れて
水平の斜面を氷河のように

ガス抜きを見抜けても
本体に属していない党派性など
ボンベごと爆破された方がよい

不安は和らがない
サメに喰われるので街路は進めない
薬剤では治せない

はみ出た貝の中身のように絶望し
どこから始めてよいのか信号待ちして
探りながら
閉店だらけの街道の
雨に濡れた舗道をゆき
川岸で女たちは見つかる

晴れた日も雨の日も
はみ出たまま
碁盤の街を潰してゆく

 

 

 

#poetry #rock musician

わたしに足りないもの ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 108     yumiko さんへ

さとう三千魚

 
 

はじめての
花は

クリーム色の

バラの
花だよ

おおきな
バラだったよ

あれから会ってない

けれど
いつも

いっしょだよ
クリーム色のバラの花だよ

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った108個めの即詩です。

タイトル ” わたしに足りないもの ”
好きな花 ” クリーム色の大輪のバラ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

美というよりも罪の匂いし彼岸花

 

一条美由紀

 
 


不便な天国より便利な地獄

 


ハグする時のやわらかい髪が言葉を伝える
笑い合う瞳は生きていい許可のよう
幸せや愛は儚いからそっと手のひらに隠す

 


色々あるよね?
うん、休みなしに色々と事は起こる
疲れちゃって、もういいやと思うことある
うん、やめたいな、、と思ったりする
でもなんとかね、どうにかね、明日も行くんだよね
うん、仕方ないよね たまにいいこともあるしね

 

 

 

なにもかも ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 107     syun さんへ

さとう三千魚

 
 

歩いていると

バラに
出会う

近所のヒトが

庭に
植えている

いろんな
バラが

いる

なにもかも
好き

になる

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った107個めの即詩です。

タイトル ” なにもかも ”
好きな花 ” 近所のバラ園のバラ全部(いろいろな色) ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

あなたを見ました

 

原田淳子

 
 

 

書を焚く煙
燃える東の空の下に
あなたを見ました

あの子が塗った緑色
崩れ落ちた壁のなかに
あなたを見ました

オレンジが沈む河の底に

片足の猫が寄り添う隣に

並べられた白い布のひとつに

花柄のコーヒーカップの脇に

錆びた井戸の底に

引き裂かれたオリーブの枝に

向けられた銃の先に

あなたが愛したその土地から
あなたが去ってゆくのを見ました

 

*「あなたを見ました」韓龍雲への返詩として

 

 

 

動静 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 106     toshio さんへ

さとう三千魚

 
 

野に
ゆけば

会えるのか

野の
きみに

会えるのか

待っている
ここに

いる

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った106個めの即詩です。

タイトル ” 動静 ”
好きな花 ” 野の花 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

fantasizing a clean conscience

 

工藤冬里

 
 

過渡的であることに甘えきってぶら下がっているわけだがそれには二種類ある
前に寄せるか後ろに寄せるかのどちらかだ
それは曖昧なので共闘のふりができるがそれだけに厄介である
いつか追われ地下に隠れることになる
幼児期から迫害者の顔をして
原因も結果もない娑婆の中で
期限切れの缶詰を開け続ける
靴底から結果は上って来る
その時間を知ることはできない

 

 

 

#poetry #rock musician

長崎 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 105     shornem さんへ

さとう三千魚

 
 

くずれた
教会の

天使の

首の

飛ぶのを
見た

おんなの
からだのような

爆弾の
黒く光るのを

見た

のうぜんかずら
の花の

紅い
紅い

青空に
咲いていた

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った105個めの即詩です。

タイトル ” 長崎 ”
好きな花 ” 凌霄花(のうぜんかずら) ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

まいご ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 104     chie さんへ

さとう三千魚

 
 

夏の初めか

坂の
多い街を

ぐるぐる
歩いたことがあった

汽笛が聴こえた
教会の鐘の音が聴こえた

風が吹いていた

街は
海を

抱いていた

夏の空に
二十六聖人たちが浮かんでいた

ピンクの針を集めて
眠ろう

すべての葉を閉じて

ゆつくり
眠ろう

 
 

***memo.

2024年10月4日(金)、
自宅にて、作った104個めの即詩です。

2024年9月16日に大阪でご依頼いただきました。

タイトル ” まいご ”
好きな花 ” ネムノキ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life