うれしい

 

駿河昌樹

 
 

  一度死んだ人が、わたしの身体のなかで何度死んでもいい。
                         土方巽

 

ネット上に
見ていないホラー映画を見つけたので
すこしずつ
明日から見ることにしよう

そろそろ
眠ろうかな
 (近くの消防署でなにかの訓練が終わった頃
 (土でふくらんだ人形をかたづけている消防士たちがいて
 (ヘノヘノモヘジみたいな顔の重い人形に
 (消防士たちはけっこう参っていた

水を
一杯飲みに台所へ行ったら
 (水一杯を台所に飲みに行くにも
 (思い出してしまう
 (過去のいろいろな台所

食べやすく
三角形に薄く切った西瓜が二切れ
宙を舞っていた

西瓜も
眠れ

高原に住んでいる人から
清流釣りの写真が
スマホに来た

わたしは街の人間に思われているかもしれないが
そう簡単ではないよ
わたしは

フォークまで宙を踊ると
ちょっと
剣呑

さすがに
ちょっと距離を
取っちゃう

むかし会った人たちがときどきいっぱい廊下に密集していて
どうしようかな、通りづらいな
と思う時がある
でも
みんな死んだ人
みんな
みんな
死んでしまっている人

死んでさえいない人
わたし

死者の名刺ってある?
いる?

暑さの募っていく朝がた
ラジオ体操に子らが出かけていく時間に
死んだ人たちが廊下に密集していたりすると
この世の真理に触れた気にすごくなる

うれしい

 

 

 

アンモナイトの見た夢

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

ワレヲワスレテミルト
こんなコトバが帰ってきた
ソシテ ソノヒトカヘラズ
ソシテマタ ソノヒトカヘラズ
ソシテマタ1000日が過ぎて
「アンモナイトの見た夢」
どこかで誰かがつぶやいたようだ
大仰だな 数億年の古層に
降りそそいだ夢のことなんか

土と火と藁と炭そして灰
炎上の窯はもうひとつのオーロラ
帰って来なかったその人の
偏愛の一挙手一投足が躍っている

 ワタシノミミハ カイノカラ
 ウミノヒビキヲ ナツカシム   ✶1
思い出さないわけにはいかない
アンモナイトの反時計回りの螺旋
海の響きと母なるイメージが交接する
洟垂れのころ最初に覚えた詩の王道

鼻の形が美しい反ダダの詩人と
鼻のつぶれた老ボクサーが
地中海の夏のジュラの幻影のなか
浮遊する玉虫色の巨大巻貝に嚥みこまれ
永遠をありがとう 黄昏をありがとう
絡み合う白い絹の言葉を吐き続けた

ワレヲワスレテミルト
さていつか来るさようなら
さて僕は小さなアンモナイトだとしよう
さてどこをどう旅してきたのか
ワレヲワスレテミルト 
ソノヒトカヘラズが幾重にも
さらにはるかな永遠日和を旅して
エーゲ海デロスの獅子吹く夕べ   ✶2

日帰り小舟が停まる船着場の
粗末な小屋に泊めてもらった翌朝
黒光りする石窯でパンを焼く
腰の曲がった老夫婦の呟きは無限悲歌
アポロンが生まれたという島で   
僕は25歳喉の渇きこそが存在理由

八月の獅子たちは身じろぎもしない
ピレウスから帰還した次男は
腰巻きひとつ半裸の含羞の男
コツコツと岩を削り 太陽が傾いて沈むまで
残酷に美しいアポロン像をひとつ
ささやかなドラクマに替える   
   
アンモナイトが見た夢のこと

 

✶1 ジャン・コクトーの詩「耳」を堀口大學が訳した余りにも有名な一行詩、ここではカタカナにて表記。
✶2 デロス島はエーゲ海に浮かぶ小さな島。アポロンとアルテミス双子兄妹生誕の地とされ、古代ギリシャ文化中心の聖地だが、筆者が訪れた1976年当時は無人島で観光客もまばら、船着場に住む老夫婦が管理していた。アポロン神殿を護るように立つ五頭のライオン・獅子像はレプリカだったが、印象は揺るぎなかった。

 

 

 

訪問看護は いかがでしょう

 

今井義行

 
 

わたしは 週に2回 精神疾患に特化した 訪問看護を 受けている



今日の朝も まだ 成り立てだという 訪問看護師さんが 訪れた



その 訪問看護師さんは 猫柄の マスクなんて してる・・・



(それにしても なんて 若くて かわいい 看護師さん なんだろう)



「はじめまして」
「はじめまして」



訪問してくれる 訪問看護師さんは 決まっていなくて その日によって 変わる



(その 訪問看護師さんたちが 揃いも揃って 皆んな 20代前半の かわいい 
娘たちばかりなのは 何故なんだろう)




わたしは ピンッと きた




(訪問看護ステーションも ビジネスなので 応募者が 資格を持っているのは 当然のこととして 所長の採用基準が 20代前半の かわいい 娘たちばかりに 
絞り込まれているのは 明らかだな)




(これは 風俗 か)




「まず 検温を しましょう」

「はい」

「異常なし ですね」 

「次 血圧を 測りましょう」

「はい」

「異常なし ですね」

「次 脈拍を 測りましょう」

「はい」
看護師さんが わたしの手を 柔らかく 握ってくれた・・・

「異常なし ですね」



わたしは まず わたしの メンタル面での 著しい低下について 相談したかったのだけれど

訪問看護師さんの方から 先に わたしに 相談をしてきた



「わたし マクドナルドの マックフルーリー(アイスデザート)を 食べるのが 
好きなんですけど きのう 体重を 測ったら 1kg 増えてて ショックだったんです
どうしたら いいんでしょうか」



「アイスクリームは 300Kcalくらい ありますからね こまめに 体重測定をして 
体重の キープを 心がけていくのが 良いんじゃないでしょうか」



「わかりました そうしてみます」

「ところで 看護師さんは 何故 敢えて 精神疾患に特化した 訪問看護ステーションを 就職先に 選ばれたのですか」



「そうですね・・・それは わたしの 家族に 精神疾患者がいて それが きっかけで 看護学校に 進学して 何か 精神疾患者の役に立てないかなと 思ったからですね 他の看護師たちも そんな感じだと 思います」



「・・・そうなのですね」



わたしは 今日の 訪問看護師さんを 見送りながら

「看護師さんの お話を 聞けて 嬉しかったです ありがとうございました」

わたしは 頭を 下げていた



わたしはその晩 強い抗うつ薬と 強い睡眠薬を服薬して 就寝したものの 著しい
メンタル面での問題を抱えているにも関わらず どうにも気もちが 高揚してしまって なかなか 寝つく事が できなかった


わたしは 翌朝 訪問看護ステーションの所長宛てに メールを送ってみた



〈訪問看護ステーション

 所長 様



 いつも 大変 お世話になっております

 ところで どうしても ご相談したい事
 があるのですけれども〉  




1時間ほどして ノックを 強く 叩く音がした 訪問看護ステーションの所長が訪れた



「良かった・・・突然の 体調不良でなくて 安心しました」 



「心配おかけして 申し訳ありませんでした ところで 所長に 提案が あるのです

いつも 看護師さんたちには お世話になっていて ありがたい限りです

それなのに このような事を提案して 毎日 がんばっている 看護師さんたちには 大変申し訳ないとも思うのですが・・・



看護師さんの 訪問看護は 30分ですね 最初の15分間は 体温測定・血圧測定・脈拍測定ですね 残りの15分間は 健康相談や雑談となっています」



「そのような システムです」



「この後半の15分の内 5分を 希望する患者さんへの オプションとして
 「ディープ・キス」へと 充ててみるのです



昨日 訪問看護師さんに 脈拍測定をしていただいたとき 手を握ってもらいました そのとき 得も言われぬ 気もちが 湧き上がってきました 



就寝時間を過ぎても 

いつもなら メンタル面での著しい低下に 苦しむのですが 昨夜は とても 穏やかな気もちになって メンタル面での著しい低下が 収まったのです」 



「そうだったのですね」



「希望者する 患者さんには もう1つ オプションとして 訪問看護師さんを 「指名」できるというのは いかがでしょうか

断っておきますが このプランには 確かに「風俗的」な面はありますが これは 
あくまで「医療行為」として行なうものです」

「普通のキスでは ダメですか」 
「ディープが いいです」



「実際のところ わたしたちのビジネスとは「風俗経営」に属するものだとは 分かっているんです・・・

ですから 突然の 提案に すっかり驚いてしまいました・・・

ところで 「ディープ・キス」には 患者さんの 気もちとしては どれくらいの 金額を お考えですか?」 




(所長さんの ビジネス魂が 釣れたかな・・・) 




「税込み5000円です 看護師さんの「指名」をするときには プラス税込み1000円です 後腐れのない「医療行為」としての「ディープ・キス」は いかがでしょうか?

わたしには 既に 指名させてもらいたい 看護師さんが 3人います」



「・・・まあまあの 金額設定だとは思います しかし現在よりも 収益は上がるのだろうか ところで コロナ対策については どのように お考えですか?「ディープ・キス」は 濃厚接触の極みになると思いますが」



「コロナ感染を危惧する 訪問看護師さんには 大変申し訳ないですが 退社して
いただきます コロナ感染を危惧しない

若い看護師さんは オーディションで 積極的に 採用をしていきます



・・・もしも わたしが 指名させてもらいたい 3人の 看護師さんが 
辞めてしまったら 本当に 悲しいのですが」



「・・・患者さん 応募者はいると お感じですか」



「おそらく いま 生活に 困窮している 若い看護師さんたちは とても 多いのではないかと 想像しています・・・」



「患者さん とても メンタル面での著しい低下を抱えているようには見えないです」



「そうかも しれませんね けれども このような 対話も 既に わたしに とっては 大切な 「医療行為」と なっています



この提案は 訪問看護を受けている すべての精神疾患者にとって「救済」になると 思っています



何より わたしは この数年間 病気のため 「ディープ・キス」など 経験できては 
いませんから」



「・・・それでは よく考えさせてもらいましょう 患者さん もしも よろしければ 
わたしたちの ビジネス・パートナーになって もらえませんか 一緒に考えて
もらいたい事など 多くあります」



「はい いまは オリンピックなど 観ている場合ではないと 思うのです
この プランの方が よほど 「平和の祭典」になると思うのです」



「その通りかもしれません わたし 今日は これで 失礼します
これから 早速 訪問看護ステーションのリニューアルについて 検討に 入って
みなくてはなりません

何か ありましたら メールか スマホで 相談させてもらいます」



「もちろんです 新人看護師さんの オーディションを行なう際には 必ずわたしも同席させてください」



「あはははは・・・」

「あはははは・・・」




・・・・・・・・・・




「承知しました わたしたち これからは 手を取りあって がんばって いきましょう」



「はい がんばって いきましょう」

 

 

 

美術室

 

みわ はるか

 
 

中学校の美術室。
なぜか心の奥にいつもある。
それは多分とても心地いい場所だったからだと思う。

決して美術は得意ではなかった。
むしろ苦手だった。
ポスターに描く絵も、粘土で作り上げる作品も、オルゴール作りも、何をやってもいまいちだった。
いつもこっそり誰かに手伝ってもらったり、開き直って先生に筆をわたして横でわたしは頭をかかえていた。
先生が作り上げていく作品はとても美しかった。
同じ道具を使っているのに、どうしてこんなにも違うものかとみとれていた。
先生も「まぁ、あなたは!ここまではやるけど後はやるのよ」。
なんて怒ったように言っていたけれど、それに反して顔はにこやかで、楽しそうに筆を走らせていた。
この人は本当に美術が好きで今ここに存在しているんだなぁ。
そんな先生の顔を見るのが結構好きだった。
作品は何回かの授業を通してやっと出来上がる。
なんとか作品を完成させたわたしはそれを提出した。
確かあれは自画像を彫刻刀で掘って版画にしたものだったと記憶しているけれど、先生は自分が手伝ったところを指さして、
「あら、この辺とても上手にできたわね。これはとてもいいわ。」
先生はきっと自分が手直ししたことをすっかり忘れていたのだろう。
「へへへ、そうでしょ。わたしもやればできるんですよ。へへへ。」
なんて今にも吹き出しそうな笑いを我慢してさらっとその場を去った。
その絵の評価は一番いいものになっていた。
ちょっと後ろめたい気持ちになったけれど、今では懐かしい思い出だ。

美術室はちょうど北側に位置していた。
木の机、背もたれのないこれまた木の椅子。
アスパラガスのようなグリーンの体操服で授業を受ける。
風通しもよかったため窓が全開に空いている時なんかは心地いい風が最高だった。
窓から見える夏の入道雲はいつまでも見ていられた。
もくもくと力強く青い爽やかな空に突き抜けるような白い入道雲が大好きだった。
美術の時間がずーっと続けばなぁと木の椅子をギコギコさせながらいつも思っていた。
すぐ隣にある美術準備室はひんやりとしていた。
過去の先輩の作品や、先生が見本でつくったものがたくさん並んでいた。
奥行きのある絵画、考える人のような彫刻、木彫りのフクロウ・・・・・。
わたしにとっては身近にある小さな小さな美術館だった。
そこには先生の許可があればすんなり入れたので定期的に見に行っていた。
学校の中の神秘的な場所で不思議な気持ちにさせてくれた。

中学校を卒業して、美術に触れる機会は激減した。
この季節になるとあの美術室を思い出す。
先生のことも、クラスメイトのことも、空も、準備室も・・・・・。
穏やかで心地いいあの時間が、あの時一緒に過ごしたみんなに今でもあればいいなと思う。

こんなご時世だからでしょうか、年を重ねたからでしょうか、またいつかみんなに会いたい。
ベランダの風鈴の音に耳を傾けながら文章を結ぶことにする。

 

 

 

1円

 

塔島ひろみ

 
 

清掃工場の水色の煙突を目指して
橋を渡る
襲いかかる雲から逃げるようにスピードをあげ
いらなくなったものたちが 橋を渡る
乾いた血のような色に塗られた橋を 
トラックで、バイクで、自転車で、あるいは徒歩で、渡っていく
風が強い ときどき顔を動かさないまま 目を閉じる
白いワイシャツの背中が風を含み まるで巨漢のようになったバイクの男は
ハンドルを握ったまま前だけ見ている
後ろに やせた女が乗っている
橋を渡ると
右手に金属リサイクル工場があり パワーショベルが金属片を砕いている
向かいには 一日500トンのゴミを焼却する清掃工場の大きな門
隣接する広場では、少年たちがサッカーをしていた
高く張られた網の中で ボールを蹴る みなゼッケンをつけている
ゼッケンには 彼らが正当な再生品であることを示すためにか
「○○工場でリフレッシュ出荷」というシールが貼られていた
小ぎれいな額から 汗がぽたぽたと流れている その汗が エメラルドグリーンに光って
泣いているようだ
太い煙突から 捨てられた500トンを燃やす煙が空にたなびく
買いすぎた野菜、去年のスカート、終わったマイブーム、病気の親、ほくろ、ワキガ、盗癖、いらない過去、いらない未来、いらない自分
スリムに生まれ変わって、正しく、新しく、失敗のない足でまっすぐに
ボールを蹴る
シュートを決める

ベンチに浅く腰かけて のっぺらぼうのサッカーをぼんやり見ていた
ベンチの下に1円玉が落ちている
門の前では 燃えるものと燃えないものを 分別している
リサイクルできるものとできないものを 分別している
いるものと いらないものを 分別している
いる心と いらない心 いる私と いらない私を 分別している
門の中にいらないものたちが押し込まれる 
そのやり方が 分別方法がむずかしくて わからなくて
のっぺらぼうのサッカーをぼんやり見ていた

高く蹴りすぎたボールが 網を越えた
飛んできたボールはバウンドすると コロコロ転がり 少し傾斜のある道路をどこまでも
どこまでもどこまでも どこまでもどこまでもどこまでも 転がっていった
まだこの先に道は続き坂下には人が住む町があることを 私は
そして 青い顔をしてボールを目で追う網の中の 少年の姿をした老人たちは
そのとき知った

ベンチの下に1円玉が落ちている
ゴミに分類されなかったから ここにあるのか
それとも いらないから ここに捨ててあるのか
拾って 砂を払って ポケットに入れる

ボールの転がっていった方角に 坂を下りてみることにする

 
 

( 7月某日、清掃工場前で )

 

 

 

思いだせる

 

さとう三千魚

 
 

朝早く
西の山の上の雲の金色にかがやくのをみた

スーパーの駐車場のアスファルトに水色の線が羽にある蝶をみた

いくつもいくつも雪は降ってきた

夕暮れの町の淵で
水の流れるのをみていた

思いだせる
偶然の必然に驚く

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

今、彼らは自分の行いに取り囲まれている。彼らは私の顔の真ん前にいる。

 

工藤冬里

 
 

Lunes 26 de julio
少女の中で青年とシラサギが秤にかけられ、シラサギが選ばれる。何故なら少女はシラサギに選ばれているから。18世紀アメリカの作家セアラ・オーン・ジュエットの、「シラサギ」という短編

二世紀以降北の王と南の王は存在しない
1800年代アメリカが南の王の位置にあった
wwⅠでは北がドイツで南が南が英米
wwⅡ以降は北がソ連南が英米となった
少しの助け、とあるのはソ連崩壊のこと
その後北の王は依然としてロシアである

Martes 27 de julio
もし違うプラットフォームがあればこのやり方は変えられる
脳以外に仕舞う場所がないのは宇宙から疎外されて倉庫がないから
宇宙にあるのは雹の倉庫
手幅より大きいカタマリがぼくらの頭を狙う
映像はその氷の中で一瞬煌め
ダウンロードは一回だけ
走馬燈用に取って置かれる

セミ 変換してみようとしてやめる
#俳句

Pusiste a prueba a los que dicen ser apóstoles
嘘つきだと見抜いてもだらだらと眺めている マニラや呉で

大分のヨナス君からマグカップの注文来たから作るけど
塩やってみるか

Miércoles veintiocho de julio
Al comenzar a suceder estas cosas, pónganse de pie y levanten la cabeza

手動のコーヒーミルでやっていたが埒があかないので蕎麦屋に聞いてみたら川内の製粉場は次々に廃業していて今は久万にあるというが検索には出てこない

大きな辛味大根がどんと置かれて食べる分だけ磨ってくれという
先客は丸々一本磨りおろし、葉の付いた頭が鉢に泳いでいる
ぼくはそういうことはようしないので
三分の一ぐらいにしておく

Jueves 29 de julio
黒アゲハは動きが柴犬に似ており、ツマアカオオヒメテントウの幼虫はテリアに似ている

秋が来たので燕は帰る
#淡海節

事故

viernes treinta de Julio
まだ生きてるの信じられない もう死ぬ

https://youtu.be/0KjRXH9M1Zc

ビリーホリデイのデビュー録音がかるとラジオが言うので、トンネルを避けて使われなくなった旧国道を登っていった
その後も同じベニーグッドマンの楽団でコールマンホーキンスが吹いているのもかかって大変幸せに感じた

rimski&handkerchief先々週くらいから観客ライブを再開している。皆マスクしてない。
今日の音溶の四国大会は安土さん来るなら渡したいものがあったが矢張り行けない。今週のクラスターで主催が槍玉に挙げられてるから。
ソルフェージュ周波数で密閉された部屋に窓を付けるというのをやるつもりでした

Sábado 31 de julio
Dale instrucción a un sabio, y se hará más sabio

日常よせめて混ぜ合わせた南へ流れよ

ドイツでは家の外に木を組んで虫用のアパートを作ってあげるそうです。シロアリとかは丸太を置いておけばそこに家を作ります。家の外の方が中より面白いよ、とアピールすると良いのでは
https://twitter.com/uchugohan28/status/1421280363142283265?s=20

despejadoと
desperadoは似たる 哉

Domingo 1 de agosto
なぜなら
紛れ込んでいる
報告した
主題に関連しなければ皆が主役となる
マンモス
視力に応じ取り分けておく
規模が違う
起承転結はない

忍冬二度目

蕎麦殻の灰釉で蕎麦猪口を作るとどうなる×8
夕方6時に映画館から「夜霧のしのび逢い」が流れ、八百屋のバケツには泥鰌が回っていた



父の同期だった沢田淳の抒情的でいかにも昭和なデザイン群

明らかに「産地」を意識した鈴木繁男の提案群

その頃は兎唇の子が多かった。人は大体60で老人になった。

 

 

 

#poetry #rock musician

餉々戦記 (関西、夏の)

 

薦田愛

 
 

五月半ばからなんて長すぎた梅雨がやっと明け
冷凍庫の底に眠らせていた

はもですよ
今年も
はもの落とし食べたい
みみう(うつくしいうさぎ)の
はもちりそば
なつかしい
くくるっくるんっときゅるっと丸まる
ほねぎられたしろい身の
うかぶあっつあつのどんぶり
そえられた梅肉のくすむ紅
のっけて

ふっくら

もうね
恐るべき食いしん坊がいっぴき生まれ落ちたのは
ミルク缶かかえてにっこりしていた赤ん坊として
ではなくて
ええ
好き嫌いのすくない人間ではありましたが
駄々こねるほどの執着もない
手のかからない生い立ちであったろうよ
当人の記憶の限界はありますれど
大人になるいっぽ前
男親をうしない
けいていしまいもなくって

針仕事の腕のたつ女親とくらした
ふた親そろうころから
ゆたかではなかったから
奨学金という借金を負ってまなんでいたりしを
かえしきるまでに十年あまり
立ち止まればたちまち背中が
ひときわ重くなりそうで
やすむことも
やめる やむ ことも
ままならなかった
みちのりで
ままいただく
空腹を満たすのに
いろいろをもとめなかった
なあ
なんて回顧回想
蕎麦とか日本酒とか
魚とか
おりおり味わったものの
それきりだった
職場ちかくの蕎麦屋で昼どき
くるひもくるひも
あつもり(あつあつのもりそば)を頼んだり
そう
つれそうた相手が
蕎麦をうったり酒蔵にかよったり
していたのだったが
わたしは
ずずっ んぐっ ごくり
ずずずい んん んまいっ

よろこぶばかりで

「勤め人だったんだねえ
空0日本の多くの男の会社員のように
空0生活者ではなくて」
と、ユウキ
(まだつれそう前のこと)
そうだね
でも私ときたら
おいしいものは
調えてもらっていただくがわ
それだけの
技倆がないからね
「いや いいや
空0男でも女でも
空0生きて生活していくうえで
空0なんでもじぶんでできてこそ
空0いちにんまえ
空0やってもらう部分が多いのでは
空0不自由でしょうがないよ」
そうかな
たしかにいまどきは男のひとでも
じぶんで作ったりするよねえ

う~ん
ハードル高い
冷蔵庫には味噌も卵もトマトも玉ねぎも
干物なんかも入っているし
味噌汁は作れる出汁もとれる鍋で炊いたことはないけれど米はとげる
でも
じぶんが好きなもの
食べたいものを
ちゃんと作ったことないなあ
気がついたらちゃんと
食いしん坊に育ちあがっていたというのに

なぁんて
嘆きかつとまどい
いちばん食べたい何かじゃない干物やら
何となくの味噌汁やら
トーストにひきわり納豆やら
かき分けかきわけ
引っ越して大阪
ユウキと交互のち
ほとんど
刻んだり炒めたりすりおろしたり煮たり焼いたり
しているうちに

ああこれ

はもだ
はもの骨切りが並んでる
東京では見かけなかったな
並んでたけど
気づかなかったのかな
お店で食べるものって
思い込んでたからね
ちょっと予算オーバーだけど
たまにはいいか
細長いパックひとつをかかえて会計
帰りの急坂も駆けあがれる気分
骨切りされた白い身を細幅に
ぶつっ ぶつっ
とは
き、切れない
包丁へまな板へ
前のめりに
体重かけて
ぶっつっ ぶ ぶっつっ
ああ
お湯を沸かさなきゃ
初めてメニューはとりわけ段取りがわるい
まな板の上で乾いてゆく白
小さいほうのフライパンの中にようやく
ふつふつ
菜箸でつまんでひとつ
水泡 身肉が
くっ くるっ
ふたつ みっつ
くるっくるっ
あっ
氷水いるんだった――
ボウルに氷と水
火を止めなきゃ
コンロと冷蔵庫の前で
おお うおう
吠えませんが
おろおろ
右往左往
むだなステップが多すぎますなあ
氷水張ったぞ再点火さあ
菜箸で放り込むはしから
丸まるひときれひときれを
掬いあげ
ボウルに落とす
梅肉練らなくちゃ
洗ったまな板の上で梅干し五つぶん
削いでたたいて
このくらいでいいのかな
小鉢で
みりんに砂糖料理酒も少し
かな
ぐるぐる
スプーンの腹でつぶし
ぐるぐる
ああ
冷酒が欲しい今夜
あ、ベル
ドアの音
「ただいま!」
汗だくの帰還
ユウキだ
酸っぱいものはあまり好きじゃない
ユウキは
これはどうかな

この日
味噌汁ともう一品
たぶん肉料理を作ったはずなのだが
その顛末は
まるで思い出せない
さあ
そろそろ解凍できたころ
ちかくのスーパー開店セールで見つけた特大トレイをあける
湯を沸かす

 

 

 

この夏に、きこえる

 

ヒヨコブタ

 
 

夏祭りのお囃子が
空耳のようにきこえてくるのは
こどもじだいのすりこみか

故郷は遠く、盆踊りも遠い昔になった今でも
歌える歌がきこえてくる
海沿いのとても短い夏に
浴衣を着せてもらってなれない下駄をはく
恥ずかしくて輪のなかに入れないわたしを
大人たちが誘う

そのうちに夢中になって踊る
さいしょは忘れていたような振り付けも
真似しているうちに思い出して
手拍子が揃うと嬉しくて

確かなわたしの記憶が
そこにつれていく

このはやり病のなかでは
それさえこどもたちには届かないのか
大人の無茶で理不尽な混乱を
堪えているのか

願ってやまないのは
こどもらの記憶に
少しの糧が残ること
下駄を脱いだあとの足の裏の違和感を覚えている
かつてのこどもが
この夏の少しの記憶を
いまのこどもたちひとりひとりに
楽しかったと残ること

これもまた大人の無茶な要求だろうと
百も千も承知のうえで
口ずさむ
盆踊りの歌を