ノッたもん勝ち

 

辻 和人

 
 

たまーにお願いするんだ
家事育児代行サービス
地域のNPOが運営してて安いお金で引き受けてくれる
コミヤミヤ・こかずとんはかわいいけど
双子育児はどうしても寝不足になるしたまには外でひと息つきたい
今日はミヤミヤが美容院、ぼくはお昼寝
ということで、ピンポーン
やったぁ、Yさんだ
この人何度かお願いしたことあるけどすばらしい
70手前くらいの年齢だけど昔保育園に勤めててね
子供をあやす技術バッチリなんだ
Yさん見ていきなり泣き出すコミヤミヤとこかずとん
「はいはい、元気がいいですね、手を洗わせていただきますよ」
洗面所から出てきたYさんが割烹着型エプロン着ると
ぴたっと泣き止むコミヤミャとこかずとん
この古びたエプロンのぼわぼわ感がいい
太い腕広げて
交互にぼわぼわ包む
包まれた方はほけーっとした顔
「子供たちが落ち着いたらモップで床を掃き掃除していただけますか?
 私、上で休んでますので何かあったら呼びに来て下さい」
目覚ましかけてベッドに倒れ込んだ、さぁ、寝るぞぉ

ふぁー、よく寝た
2時間たって下に降りると
おやおや、2人ともギャン泣きしてる
こいつらもお昼寝から覚めたばっかりで頭が混乱してる
ぼくなら取り乱すところだけどYさんは違う
ガラガラを鳴らしながら太い声で歌いだす
「ぞーおさん、ぞーおさん、おーはながながいのね」
「めーだーかーのがっこうはー、みーずーのーなかー」
「あっめあっめふっれふっれかーさんがー」
大昔の歌ばっか次々と、2人の上で身をかがんで
コミヤミヤが手を振り回して泣いても
こかずとん足バタバタさせて泣いても
動じない、動じない
「そうなのぉ、泣いてるのぉ、泣きたいんだよねぇ。
 じゃあもっと歌ってあげるからねー」
泣いてるから歌ってあげるってどういう論理だ?
しかし、ほれ見よ
コミヤミヤ、泣き止んでYさん見上げてる
こかずとん、泣き止んで微笑んでる
「すごいですね、さっきまであんなに泣いてたのに」
「リズムですよ、幾ら泣いてても騒いでても
 こっちがそれ以上にノッてると子供たちは必ずノッてくるんです。
 こういうのはノッたもん勝ちなんですよ、それにしても2人ともかわいいですねぇ」
皺くちゃの笑顔きらきら

地域の宝だなぁ
このすばらしい仕事に見合うお給料出てるのかなぁ
NPO勤めだもんなぁ
ああ、でももらえるお金少なくても引き受けちゃうんだろうなぁ
子供相手の仕事が
好きで、好きで、好きで
仕方ないんだろうなぁ
ううっ、ぼくはここまで仕事に情熱持てているだろうか
早く休日にならないかとかそんなことばかり考えてた
育休終わったらぼくも
Yさんみたく
ノッて、ノッて、ノッて
仕事して会社の業績に貢献するぞ
ううっ、Yさん、これから暑くなるからとにかく身体に気をつけて下さいね
エプロンみたいな歌声がぼわぼわ2人を包んでいく
「かーらーすー、なぜなくのー、からすはやーまーにー」

 

 

 

無題

 

たいい りょう

 
 

死という名の列車に乗って
はるか はるか彼方 
何億光年の星を旅する

ワインボトルは 
わたしのこころのように
空っぽになってしまったけど
愛する人との思い出が
そこには 詰まっている

黄色い三角錐の形をした流雲が
列車の窓を叩いたとき
これは 亡者たちの記憶の欠片だと感じた

わたしは 欠片に 手を伸ばしたが
ふれると とたんに 水泡のように
消えてしまった

その音は 耳を砕くような烈しい音で
わたしは 一瞬 音を見失った

 

 

 

海浜公園から

 

さとう三千魚

 
 

千曲では
根石さんと

戸倉の温泉に入り
近所の居酒屋の

きのこ鍋で飲んだのだったか

千曲から
帰って

何日か
経った

何日か
経って

何をやったのか
覚えていない

海は見ただろう

今日も
午後に

海浜公園から海を見ていた

モコは
居間のソファーに眠っていた

根石さんは
千曲川の流れを見て

詩は
一瞬だよな

そういった

詩は
一瞬でも

まだ生きてるから
書こうと思います

そう

わたし
いった

海浜公園では風が吹いていた

海の向こうに
半島が青く横たわっていた

半島の上に白い雲がふたつ浮かんでいた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

雲を描く

 

工藤冬里

 
 

縫いぐるみの尻尾のニ線の切り結ぶ哺乳類の目付きに動く大皿小皿
複合的な大小のからくりが組み込まれた洗濯機のような構造を考えていると嘔吐せざるを得ない
歴史を定点で観測する百葉箱的な設え
アレウトAleut

火によって明らかになる
焼いてみたら分かる
土台があるのに焼け落ちた
弱い部分を補強
土は燃えない
雲を描く
土台の上に建てたものが燃えずに残るなら
ひと言の土壁
ひと言の土が塗られて
燃え残れば
雲を描く
雲を描くことを考えた
辛抱してくれていると思うと安心する
鳥の視界に 頭蓋の中を 置き換えて
風が強くて寒い
辛抱強さは過渡的な側面として強調されているのではない
それは元々全体の中に含まれていたのだ
風が少し冷た過ぎる
クラフトフェアで辛抱し
アートフェアには辛抱しない
農家の人はコントロールできないことがある限り辛抱する
待っている間 優先順位を守ると 辛抱が勝ってくることがある
待っている間 畑仕事よりも優先すると 辛抱が優ってくることがある
待っている間待つことよりも辛抱を優先させる

雲を描こうとしている
筆は使えない
ターナーとか絵筆だろうけど
滲ませるといいのかもしれない
白は輪郭がはっきりしている
鳥は相変わらず電線に止まっている
鳥の脳内に置き換えることは忘れていた
鳥は雲を見ている
風が 寒い
漫画のような雲は描きたくない
字体が空に浮いている
柱とポーチはローマを排したことによってさびしくなっている
彫り物のひとつもなくて末世かな
オレンジの酸化焼成の屋根の一帯
この無装飾も辛抱なのか

辛抱されている時間

すぐにキレない
あ、鳥はいない
それぞれが負っている
メタモルフォース
個人的に体験を通して当て嵌めることを待つしかない
待っている間は
チョッキを着て辛抱
疑わなかった
クラフトフェアはもう寒いだろう
試飲の紅茶を一杯貰い
辛抱は冥王星のように遠くて近い
もっと穏やかで幸せな気持ちになれるし、もっと健康になれる
自分では無理

引け目からからくる辛抱と雲との違い

 

 

 

#poetry #rock musician

結婚指輪(Last one, My bell…)

2023©Cloudberry corporation
 

今井義行

 
 

Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(オネガイ、モウイチド…)
わずかな写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…
花、を…愛してしまったが最後、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
首の周りに silk 巻いてた、
だから、口吻、出来なかった。
僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」
「駄目な、僕デシタネ …」
…………「もう、いいわよ」
Rock ’n’ Roll With Me Last one, My bell…(タノムカラ、モウ一度…)
一枚の写真しかない
ソレは、
僕の、恋人…死ぬ前に、モウ一度。
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
“悠”はるか、
という意味デスネ
girly girl was 36ages.
ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソレは、歌詞のようなものである。
だからといって
恥ずかしがることなく
「恋は、水色」。
…彼女…と…いまは、
うたいたい…

君は、病みあがり、の
僕の部屋に すわって
「学生さんの住む
部屋みたい」と笑った

For Everyone!!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

調布から八王子方面まで降りて、
深夜の……
イタリアンに行った1993年……

seafood pasta
分け合い、ながら……
将来のことについて、話し合う
こと、一つ、無くって、

二つ、歳上……

黙ってしまった
モノデシタネ……。

「此処の、pasta、不味いのよ」

それから、しばらく
君は……、
スポットの下
dance して、いたね…

花、を…愛してしまったが
最後……、
で、アルヨウニ 君ノ夢ヲ見タ
瞳が零れ落ちそうだった、
だから、口吻、出来なかった。

僕が今度、君ト、踊る時ハ
君に、精一杯、
謝りたい……「ゴメンね」

本当は、
僕の、恋人…では、なかった
That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
死ぬ前に、モウ一度。
お逢い…、しましょう、ね!

girly girl 36 ages.

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 

ソウシテ……

君が、亡くなった……という
噂を聞いた。
ソンナ噂を、書いてはいけない。
だって……

ミンナが、
信じてしまうだろう?

僕は、取り消すよ、君とは
結婚してみたかった……

本当、だ。

That’s Mrs. Yuko,(悠子サン、)
girly girl 36 ages.

乳首が尖っているかどうかも、
知らないまま、

It was so fine……!

ねぇ、今からデモ
結婚指輪、贈りたい
キラキラ、ヒカル、モノ…!

 
 
(2023/10/04 アパートにて)

 

 

 

深淵

 

有田誠司

 
 

ひとつひとつの言葉に関係性を探した
理解出来ない謎かけ 暗号の様な言葉の欠片

その断片は他を寄せ付けない独立独歩
僕は全てを同意した
理解出来るか出来ないかなんて
たいした問題じゃ無い

詰問される事も
事の迅速さを要求される事も無い
沈思黙考が少ない語彙の間に流れていた

巧妙な罠 言葉巧みに警戒心を取り除き洗脳して行く
僕はその世界の一部を除外しただけの事だ

一面の雲に隠されたままの太陽と
何かをあてもなく待っている僕が居た
君は時計を持たずに
君に適した時間の流れの中に存在し続けている

僕の意識の周辺にある壁の枠組を
まるで何も無かったかの様に君は入り込んで来る

壁の向こう側にある深淵 其処に君は居る
恐れる事は無い 光無き混沌と沈黙と静寂
其処に君は居る もうひとりの僕が居る

 

 

 

質感って奴

 

辻 和人

 
 

ぷるん
服を脱いだコミヤミヤだ
お風呂場の発砲スチロールの台の上で
ぷるんしている
軽く泣きそうになったのを宥めて
赤ちゃん用シャンプー頭に垂らし
髪の毛シャカシャカ
ちょっと不機嫌残る眉を宥めて
シャワーシャーシャー
お次は首から腕からお腹から足から
背中からお尻から
ぷるんぷるん
シャボン流れる
あんなに小さく生まれてきたのに
保育器の中でけぽっしてたのに
ぷるんぷるん、だ
お腹の皮押せば
ぷるん押し返される
ぶるんとお腹だ
おしっこしたばかりのお股に手を差し込んできれいきれいすると
肉厚の割れ目ぷるん揺れる
2000gで生まれてきたのに
今や5000g
1回50gのミルクがやっとだったのに
今や1回120g
洗い終わってゴム製お風呂に入れる
ざっぷん
ぷるん
いいなあ、赤ちゃんって
この質感だよ
栄養が詰まってる質感
ダイエットなんて知らない質感
それにひきかえ皮膚しわしわ
ぼくの体がいかに硬化してるかわかっちゃうね
質感にやられて
触って触って
もっと触りたい
抱っこして抱っこして
もっと抱っこしたい
目で見ただけじゃわからない
ぷるんぷるんの抵抗感
質感って奴には
力がある
何しろ抵抗してるんだからね
触れた指に対して
ぷるんぷるん
抵抗して逆らって
力がある
洗い場は好きじゃないけどお湯に浸かるのは大好きなコミヤミヤ
顰めてた眉ほどいて
手足とお腹をお湯の中に遊ばせてる
栄養詰まった二の腕が
お湯滴らせて
ぷるんぷるん
たまんない
やられちゃう
抵抗感だ
質感って奴

 

 

 

破調・イムジン河

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

真夜中3時半に目覚めてしまった
二度寝できないたちなので
イ・ランのイムジン河を聴いた
イ・ランのイムジン河はいいよ
ソウルで踊ったばかりのせつ子のひとこと
雪の積もるイムジン河のほとりで
イ・ランが、かそけく美しい声と手話で歌ってる
静かな映像の凛たるイ・ラン
はじめてこの歌が好きになった

半世紀のむかし、フォークルが歌った頃から
この歌に感じていた靄々が消えて
イムジン河がイムジン河として流れていた

2017年4月連翹の花も盛りを過ぎたころ
38度線近く軍の砲撃演習が時折響く
ムンサンに独居していた弟サンヨンと
イムジン河に沿って車を走らせた
大きな川にしては、水は清く、滔々と流れ
その流れの遠くないところが北の大地
ほとりに降りてイムジン河の水を掬った
4月の水はさほど冷たくはなく、柔らかかった

川べりの料理屋で鯰の鍋料理を食べた
古びた韓屋風の店を選んで入った
日本で鯰料理は食べたことがない
言葉少なに流れるイムジン河で砂や泥をかぶり
風采の上がらない鯰氏をどう料理するのか
たっぷりの芹、青菜とにんにくの効いた汁で
鯰の靄々を覆い隠しているような鍋
鍋は大きく、「あら」というほど高価だったが
やたら骨が多く名物のわりにそっけない味だった

いつもはよく喋る弟がさっきから黙っている
イムジン河の北に思いを馳せているのか
なぜかと思ったら、鯰の小骨が
喉に刺さったという可笑しな始末で
よくやるようにご飯をぐっと飲み込んだら
そのうち小骨は取れたようだった
小骨はとれたが靄々はとれなかった

イムジン河がたどった悲運の物語はよく知られている
心に響くまっすぐな言葉、メロディも抒情はるか
万感こめて歌う歌手たちがいたが
僕が感じていた靄々、そういうことではなかった
僕にはさわれるようで、さわれない詩情
イ・ランは声と手話でさわっていた
イムジン河 水清く 滔々と流れていた

  私が彼らを愛してると言いはじめた時から
  人々はおかしなものを褒めはじめた
イ・ランの抑えながらストレート語る歌に虚を突かれた
「世界中の人々が私を憎みはじめた」
イ・ランの歌にはいつもチェリストの伴奏がつき
そのチェリストはソウルの友人の友だちであり
何曲か聴き、気がつくと外は明るくなっていた

いつもの朝の食事をしてせつ子がでかけたので
思い立ってu-nextで50年ぶりに
浦山桐郎の『キューポラのある街』を見た
60年代の北朝鮮帰還運動が伏線になって
映画のなかでチョーセン、チョーセンと連呼されるのが
次元を超えてなぜか新鮮だった
キューポラのある街が公開される数年前、小学1年生のころか
父親に連れられて埼玉の朝鮮部落に行ったことがあった
川口だったのだろうか、キムチの匂いと道沿いに積まれた塵芥
野放しの子豚が走り回り、土埃が舞い
座り込んで働くオモニ以外はあまり人影もなく
新宿落合の我が家もそこそこ貧しかったが
侘びしく立ち並ぶバラックは、時が停まった異界のようで
胸がしずかに動悸を打っていた
キューポラの煙突は残念ながら記憶にない

映画のモノクロ映像と少年たちの生態は
匂いがないせいかトリュフォーのように美しい
頑固な鋳物職人東野英治郎はチョーセンを嫌い
娘のジュンはチョーセンの娘ヨシエの友である
ジュンを演じた15歳の吉永小百合には魂を抜かれた
不良たちに犯されそうになったジュンが
公園の蛇口に唇つけて思い切り洗う場面
小百合15歳にして畢生の演技
ジュンの弟の市川好郎はこれも天才子役
ヨシエの弟で天才の子分サンキチが
北に帰還するくだりには泣けた

さてこんな日だから気を取り直して
またイ・ランのイムジン河を聴いて
本棚からイ・ランの小説『アヒル命名会議』をだした
訳者の斎藤真理子さんから送られて
まだ読んでなかったのだ
とても良き日になりそうだ

 

© kuukuu

 

 

 

英語は最後の最後まで主要言語である

 

工藤冬里

 
 

バットマンのような菱の実が丘々に散開している
映像は半導体に関する到着予想ナビのようなもので、小津は吸収され茶の湯の日本はもうない。(反日どころの騒ぎではない。)
どのショットにも日本消滅後に撮られたという刷り込みが確認される
英語は最後の最後まで主要言語である
そんな風にして仕切り直しの猶予みたいなものの最期がやって来た
食客の「今はここで暫く遊ばしてもらってるんだ」というクリシェの後に必ず出入りがあるように
四駆の車窓の風景は必ずスッパリバッサリ斬られる
接種済みの各兵士にひとつ張り付いていたロケット弾が頭頂に触れる
それが菱の実の形をしている

国家国家国家スパニエルと騒いでいるうちに御輿から振り落とされて肋を折る者は昔から男女問わず切りたての晒木綿をりゅうと巻いていて、それに血が滲むのだった
彼らは国家国家国家スパニエルと騒ぎ立てる静寂を予表していたのだ
騒ぎ立てる静寂は溝(ドブ)の上澄みの透明に似てエメラルドの暖かみはない

国家はいつのまにか主語ではなくなっていった
主客で「遊ばしてもらって」いたのだ
元々が雑魚なものだから、人称沙汰があれば主語と言えど簡単に殺される
映画はarkだからだ
その上の静寂をこそ振り落とすべきなのだが
担ぐ衆にミキを与えて反シオニストは身を隠してきた
酒を造る者たちはそれで儲けた

主語国家の目眩しのラッセラ製薬一世風靡YouTuber換骨囃子が大後悔後のスパニエル並に縮小するだろう
かといってUNはTVパーソナリティにはなり得ない
それは海上タクシーのようなものだ
Take me to the other side of the island!
あるいは島に続く浅瀬を渡る御輿そのものとなったフェリー
主語のpseudo引き潮ニストはハマチカマス養殖業者でもあり
投げ落とされた主語としての準国家汎国家の演出に携わる

御輿は正しくなさの半面にすぎず、深煎り150ccと決めた正しさの数量で言えば四分の一しかない
正しい御輿の上にも正しくない御輿の上にも平等に娼婦が乗る
空飛ぶゼカリヤ計量カップの中に坐る邪悪のように

 

 

 

#poetry #rock musician

姨捨にて

 

さとう三千魚

 
 

いつだったか

何年か
前だったか

根石さんと
姨捨の駅のホームから

千曲川の光るのを見たのだったか

根石さんは
母を

山の民だと
言ったのだったか

根石さんは

見ていると
詩だと

思える

山の人であり
詩人なんだと思える

なにも望んでいない
なにも望まない

あることのなかに
いる

いることのなかにある

千曲川が光っていたな
千曲川が流れていたな

その山は

姥捨ではなく
姨捨だった *

愛しいものたちを捨てたのだったろう

 
 

* 千曲市に実在するのは姥捨山ではなく姨捨(おばすて)山でした

 

 

 

#poetry #no poetry,no life