花より団子

 

佐々木 眞

 
 

花より団子
団子よりタンゴ
タンゴより丹後

丹後より丹波
丹波より哲郎 
哲郎より鉄道 

鉄道より自転車
自転車より散歩
散歩より散髪

散髪よりパーマ
パーマよりパーマン
パーマンよりアンパンマン

アンパンマンよりセールスマン
セールスマンよりウルトラマン
ウルトラマンより人世マン

人世マンよりマントヒヒ
マントヒヒよりネアンデルタール
ネアンデルタールよりホモ・サピエンス

ホモ・サピエンスよりホモ・セクシャル
ホモ・セクシャルより野茂英雄
野茂英雄より野口英雄

野口英雄よりリービ英雄
リービ英雄よりリーバイス
リーバイスよりストラウス

ストラウスよりシュトラウス
シュトラウスよりベートーヴェン
ベートーヴェンよりモーツァルト

モーツァルトよりモンドリアン
モンドリアンよりエイリアン
エイリアンよりシガニー・ウィバー

シガニー・ウィバーよりマリリン・モンロー
マリリン・モンローよりオードリー・ヘプバーン
オードリー・ヘプバーンより若尾文子

 

 

 

雫石

 

道 ケージ

 
 

雫石をどうすべきかは
皆知っているようだ
何もわからない私は
途方に暮れる

なんのためにあるのか
どこにあるのかさえ
わからない

調べてくれる田村は
二階の片づけに忙しい

橙の水玉模様
板状らしい

どこで知ったのかわからない
それをどうするのか
なんのためにあるのか
わからない

ともかくも
何かに必要らしい
雫石は何になる

あやめたい朝に
曇が映る
好都合のように

露がたまると
もう不吉ではいられない

走らされ
シャツを引き裂くと
それが合図のようだ

ハバロフスクあたりの
郊外の水で
犬の死体を見た

 

 

 

無柄眼類の胎児 *

 

さとう三千魚

 
 

女が
台所で

洗い物をしている

水の音が
聴こえる

金木犀の木立の中で

今朝も
雀たち

鳴いていた

朝の光の中でナメクジが金色に光るのを見たことがある

柄眼類なのだろう
体の端から

触覚の眼を伸ばしていた

伸びる触覚の眼がない者が
無柄眼類というのだろうか

黒く大きな瞳をしていた
黒く大きな瞳をしていた


きみは

黒い瞳で空を見ていた

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”ひからびた胎児” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

わたしたちはどうして死ぬまでここに座っているのだろう

 

工藤冬里

 


縦横に織りなされゐし内奥の何かのやうにむらさきの紐
夢で糺される杉のchoochoo
ミニアさん
ソチュアト
三津浜
なんと寿司
同じ通り
いとやん
蛙軒ゲロ軒
田中戸
Como no son parte del mundo, el mundo los odia
池上彰の14歳からの政治入門を返しに来た人が、他の作者で似たような本はないですかというので斎藤美奈子学校が教えないほんとうの政治の話と響堂雪乃ニホンという滅びゆく国に生まれた若い君たちへを紹介した
Hago exactamente lo que el Padre me ha mandado
Consideramos felices a los que han aguantado
小坂の翔の、春光亭がベトナムに移転したようなトリ魚介平打で、駐車場になりたいとさえ思えてきたのを、
Cuando hay comunicación, los planes salen bien; haz tu guerra con orientación experta
不平等だと国が成り立たないと憂えるのではなく国がそもそも成り立たないから格差が開くのだと思い直すべきだ。
国家よりも大きい旅商人達から見れば不平等だと騒ぎ立てる「国民」は「何それ?」という感じだろう。
劣勢の全体主義国家の言い分が「ホワイト」に見えるのもそのためだ。
Si el mundo los odia, ya saben que a mí me odió antes que a ustedes
Take away for free
70代生活保護夫婦に頼まれギターの五弦を苦労して張り替え終わり、動機は加山雄三だったというのでブラサンビーチの一節を弾くとおゝ、俺は十番街の殺人が一番好きで、と話し始める。
malmute
やまぐちゆうた
crum
clum
東に今日高円寺だと伝えると第8ぱなのになぜ来るのかと言われた
大江カレーの牡蠣美味しかったですよ
あゝいう暗いディストーションはBGMに合うんですね
見かけの動きはいく通りかの数式で表すことができる
数式によって動くのではなくて観察者によって数式が作り出されるのである
そうすると数式を使って説明しようとする行為そのものが真ではないと言える
死者とは観察者ではないというだけで、データとして立派な存在である
今や死者の方が生きている
国とは見かけの国であるので死者は国民ではあり得ない。国葬や地域興しデザイン主義が意味を成さないのはそのためである
インターナショナルを唄うのは死者たちである
観察者たちが歌うのはすべて鬼太郎のテーマソングである
一切の希望は死者にあり一切の人権は死者にある
数式がなければ貨幣もない

Ayuden a los que son débiles
今月はプチ今村夏子フェアを設えますのでどちら様も奮ってご来車ください。
https://jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx?itemid=6548言われても絶対置かないからな
https://addendumrecs.bandcamp.com/album/black-eyed-susan-live-at-forestlimit-2017アリゾナにもカッティングマシンはありぞな、もし
愛は感情ではない
愛の反対語は感情
愛はカットされた石
蝶になる毛虫がぶら下がる新築の家は六角形の多面体で
雪達磨を止めるsarcastic なブルックリンの坂で
自分を見る
脾臓フィロストルゴス

「安らかな心は最高の枕」
Why are we sitting here until we die? 2k7:3
わたしたち​は​どうして​死ぬ​まで​ここ​に​座っ​て​いる​の​だろ​う
音楽は昔は一つだったかもしれないが今は音を使っているというだけで用途は全く分断されている

https://youtu.be/u5WN1iKEEUw leven(e)違いだった

 





 

 

 

#poetry #rock musician

年终总结
年の終わりの締めくくり

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

手中的命運線鬆開,
樂師鬆開了琴弦,
彷彿要撈起那些暗黑的血姓名,
讓沉默開始沉默。
這一年死期將至,一如少年。
昨日的月亮,血眼睛,全食。
且石頭正緩慢成熟,
趨向着行星,成為光束
去承認黑暗,瀕臨垂熄的手相。
哦,鹽越來越重。低音。
這一年堅硬無色,鹽艱困成巖。
鐵淚渾圓,她淚懸一線!
她沿着鐵道,沿着坍塌的長城
讀我,讀杜甫!沿着忘川之水。
沿着籟籟之聲,脆弱的秋色。
擋住去路的水馬鐵馬,
哭號南無!誦讀詩篇。
掌心的命運線填滿陡峭的雨,
垂直。直擊秋日的深處。
從大海。

 
2022年11月9日、12日
血月次日 西貢

 
    .
 

手中的命運線鬆開,
 掌の運命線が緩やかに開き、
樂師鬆開了琴弦,
 奏者は琴の弦をゆるめて、
彷彿要撈起那些暗黑的血姓名,
 まるであの黒々とした血の名前をすくい上げようとするかのように、
讓沉默開始沉默。
 沈黙を沈黙に向かわせる。
這一年死期將至,一如少年。
 この一年が臨終の時を迎えるのも間もないのだが、変わらぬ少年のようだ。
昨日的月亮,血眼睛,全食。
  昨日の月は、血の眼の、皆既食。
且石頭正緩慢成熟,
 まさに石は緩慢な成熟をとげつつあり、
趨向着行星,成為光束
 惑星に向かって、光の束となるが
去承認黑暗,瀕臨垂熄的手相。
 暗黒の行方を認める、薄れ消えかかった手相なのだ。
哦,鹽越來越重。低音。
 おお、塩はいよいよ重く。低く音を響かせる。
這一年堅硬無色,鹽艱困成巖。
 この一年のうちに堅く無色の塩は艱難のうちに岩となった。
鐵淚渾圓,她淚懸一線!
 鉄の涙はまん丸な粒となり、彼女はいまにも溢れ落ちんばかりの涙をたたえている。
她沿着鐵道,沿着坍塌的長城
 彼女は鉄道に沿い、崩れた長城に沿って、
讀我,讀杜甫!沿着忘川之水。
 私を読み、杜甫を読むのだ!忘却の川の水にそって。
沿着籟籟之聲,脆弱的秋色。
 かそけき風の音に寄りそう、はかなげな秋の色。
擋住去路的水馬鐵馬,
 行く手を遮る放水とバリケードに、
哭號南無!誦讀詩篇。
 南無と泣き叫び、詩編を朗誦する。
掌心的命運線填滿陡峭的雨,
 掌の運命線は激しく降り注ぐ雨に充填され、
垂直。直擊秋日的深處。
 垂直に。秋の日の深みを直撃して。
從大海。
 海にいたる。

 
2022年11月9日、12日
血月次日 西貢
 ブラッドムーンの翌日、サイクンにて

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

くねくねくねる

 

辻 和人

 
 

くねくねくね
くねる手
ウィーンウィーンウィーン、ウッワァーン
22時過ぎ
泣き叫ぶコミヤミヤ
どうしよう
コミヤミヤは元々観音菩薩様のように優しい顔つき
目も口も鼻も
顔の真ん中にちょこんと小さくまとまってる
なのに突如
菩薩様の顔がウィーンと歪む
口が四角く割れる
眉毛が逆八ノ字に折れ曲がる
ふわふわの頬に
ごっついヒビが入るぴくぴく震える
般若だ、般若の顔だ
その顔の周りでは手が
くねくねくねくね
右手が左にくねる
左手が右にくねる
これは何かのまじないか
ウッワァーン
さっきオムツ替えたばっかりなのに
さっきミルク飲ませたばっかりなのに
あ、右手が飛んでくる
メガネ弾き飛ばされた!
どこだ、どこだ、ここだ
わぁー、レンズはずれちゃったあ
生まれてひと月たたないのに
くねる力はこんなに強い
意識をなくしたいのに
意識がある
空間に溶け込んでいたいのに
体が邪魔をする
その怒りが般若を呼び出す
ああ、コミヤミヤよ
この世に生を受けるってそういうことなのに
個としての意識があって体があるってことなのに
まだ納得してくれないんだね
くねくねくね
くねる手
かわしながら
抱っこして背中ポンポン
ポンポン、それ、ポンポンポン
少しは怒りを鎮められるか
…………
ん? くねる速度遅くなってきた
0時5分
眉毛まっすぐ
しわしわ消え失せ
般若の面、溶けていくぞ
目も口も鼻も
顔の真ん中にちょこんと小さくまとまって
やったぁ、菩薩様の顔が戻ってきたぁ
手は上に投げ出してバンザイポーズ
もうくねらない
すーやすや
でもコミヤミヤ、納得してくれたのかな?
くれてないだろうな
ぼくだって何十年も生きてるけど
いまだに納得してるかどうか定かじゃない
コミヤミヤ
かずとんパパと一緒にこの世って奴の勉強をしようか

 

 

 

deepest fall

 

工藤冬里

 
 

色を選べる
目に映る色は選べない
このドームの端の寒さの中に
マスターは飛ばされ
色の心強さを蜜柑色のトラムにもとめる
どれも似ているマスターの物語made in chinaのボールペンで重ね書きする
地球はほぐれながら浮かんでいる
郵便配達員は熊の子を散らすように山に入った
名前の付いた神社たちに
ほつれた縄糸は張り巡らされ
二、三本足を失った親たちが逆さになって待っている
閃光除けのゴーグルをかけて
殺風なぬめりのある壁を背景にして
妄想が拉致される
犀のラインのマスクのまま
微妙な歳差に切り込め、
蒸発せよ、とバビロンに言う
南予のイントネーションで赤道辺りの蓋を開け
熱水による結晶を見せる
ホラホラこれがきみの中身だ
エリシャは王将に居たが
マスターに誘われると戻って肉を煮、餞別として人々に与えた
悲しみがどう表れるかは人によって違う
呼吸だけに集中とか言うけど目が詰まったマスクをしてたら苦しいだけだ
馬鹿な質問するんじゃない
子熊たちは散り散りになった

 

 

 

#poetry #rock musician

ポジティブ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 21     michiru 様へ

さとう三千魚

 
 

やわらかい
花弁で

きみは立っていた

ピンクや
白や

紅い花の
きみがいた

風に揺れていた

さわさわ
揺れていた

わかい

きみがいた
光っていた

 

 

memo.

2022年11月6日(日)、静岡駅北口地下広場で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第六回で作った詩です。

お客さまにお名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”ポジティブ”
花の名前 ”秋桜”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

帆をあげたる舟

 

駿河昌樹

 
 

来る冬。
まだ仕舞っていない団扇。
ヴェランダに出したままのアレカヤシ。
すぐ出せるが箪笥の冬物の引出しにしわくちゃになっているセーター。
夏も冬もズボンはだいたい同じだが夏物の短パンはそろそろ。
かなり死んだがメスばかりまだ生き残りのいる鈴虫。
冷蔵庫に入れなくてもよくなった飲みかけのワイン。
玉葱も馬鈴薯ももう室内に出しっぱなしでいい。
家の中でもTシャツより長袖のシャツを選ぶようになって。
足先はいつのまにか冷え始めているのにまだソックスを履かない。
急に温度が冷えた時のために一応スカーフをバッグに潜ます。
居酒屋ではおでんを求める客が出てきている。
朝少し冷えたので薄いコートを着て出ると駅では蒸して困る。
いつのまにか萩の花がちょんちょん口紅をさしている。
まだ草木は色づかず紅葉の頃もまだまだ遠い。
タンクから来て蛇口から出る水が下がった気温の中で温かい。

来る冬。
いなくなった人。
なくなった物。
私からいなくなった私。
私の内からなくなった何か。

 ただ過ぎに過ぐる物。
 帆をあげたる舟。
 人の齢。
 春夏秋冬。
       清少納言『枕草子』