豪奢・静寂・逸楽

 

加藤 閑

 
 

夏色に豪奢を呼ぶ歯生え揃ふ

光舞ふ花鳥を描き纏ふかな

生毛はや薔薇に染まりて懶惰

手のなかで羽化する揚羽愛を告げ

雷鳴秘めし空は女友達の色

熱風にしばし盲目太古の戈

金の雲無人の船のマスト灼く

オパールの裸体いづみに沈めゆく

信仰の茎剝いでゆく夏星座

白はすにカロンの櫂のしづけさよ

峰雲は静寂に立ち海に落つ

驟雨去り智慧の実熟す領土かな

恋人ら合歓ひらく音に息を吞む

液体に玉蟲と寝て溶ける夢

言葉なきエピキュリアンに夏日射し

逸楽の演技者たらんと蛇殺す

逸楽に眼射られ舌抜かれ晩夏

ゆふやけにキャラバンを組む贋天使

憑代としていかづちに撃たれけり

いちじゆくの割れて喜悦の落暉かな

 

 

 

Pella 或は一時的な娯しみは

 

工藤冬里

 
 

詩の場所で寝ているなら
寝シャカになってしまってそれは間違いだ
口中血を流しながら寝るのだ
やられたらやり返してもらえ
相対的に価値が低いので
時計を囮に使うな
娯しみよりも深くdeeper rooted
うれしさよりも輝きradiant
表現的demonstrative
瑠璃色の窪みが琉球ガラス
5時頃
蛍に続いて最期の挨拶に来たかなかなをビーリールしようとするのは間違いだった
ペレアで透明にされ、
紫の壁に引っ掻き傷の通報

 

 

 

#poetry #rock musician

豆まき

 

塔島ひろみ

 
 

おまわりさんが豆をまく
交番の前の道にパラパラと
子どもたちが寄って来る
豆を拾う 豆を食べる
なかには大人も混じっている
犬や小鳥も混じっている
寄ってこない子どももいた
豆を食べると行ってしまう
おまわりさんはまた
ポケットから豆を出す
おまわりさんの私
帽子をかぶって
豆をまくことしか知らないから
また豆をまく
誰もいない道
ガード下の私