about  およそ

鳥の声は
きこえていた

雪は溶けていた

林のなかにカタクリの花は咲いていた

およそ
前世の記憶はない

姉の
やさしい俤が空をあかく染めていた

この世の終わりを生きるしかない

この世の
果てを生きるしかない

裸になって歩いていくしかない

 

 

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両国の
居酒屋で荒井君とのんだ

店のまんなかが土俵になっている
まんなかに空白がある

荒井君はニューヨークから帰ったばかりだ

しゃべりすぎるんだよ
必要以上に抱擁するんだよ

スペイン系のひとびとについて
荒井君は語った

ぼうっとしてきいていた

 

wish 〜したい

海辺に
いたい

できれば
死ぬときには

海辺にいたい

磯ヒヨドリがないていた
カモメが空に浮かんでいた

モコが笑っていた

波が
くり返しうちよせて

雲がわれて
海原がひかっていた

海辺にいたい
海辺にいたい
海辺にいたい
海辺にいたい