もう
ねむりたい
ねむってしまいたい
遠い
岸辺に流れ着いて
いた
小舟が
入り江の遠い岸辺にながれついて
たくさんの
人の声をきいた
たくさんの死者たちの声をきいた
でも
通り過ぎていった
通り過ぎていったんだ
もう
ねむりたい
ねむってしまいたい
遠い
岸辺に流れ着いて
いた
小舟が
入り江の遠い岸辺にながれついて
たくさんの
人の声をきいた
たくさんの死者たちの声をきいた
でも
通り過ぎていった
通り過ぎていったんだ
鳥の声は
きこえていた
雪は溶けていた
林のなかにカタクリの花は咲いていた
およそ
前世の記憶はない
姉の
やさしい俤が空をあかく染めていた
この世の終わりを生きるしかない
この世の
果てを生きるしかない
裸になって歩いていくしかない
母をおもう
異端者は
母をおもい
少女の皮を剥ぐ
突破する
異端者は突破する
遠く
母型のなかに霊性をみる
東北の
母語のひびきあう
母語のひびきあう
ひばりが
ひばりが空で鳴いていた
ひばりが空で鳴いていた
両国の
居酒屋で荒井君とのんだ
店のまんなかが土俵になっている
まんなかに空白がある
荒井君はニューヨークから帰ったばかりだ
しゃべりすぎるんだよ
必要以上に抱擁するんだよ
スペイン系のひとびとについて
荒井君は語った
ぼうっとしてきいていた
どちらかといえばクレバーなんだよな
おれ
ぬけめのないやつなんだよ
ぬけぬけとして
舌をだしているんだよ
ずるいんだよ
ひどいんだよ
きちがいなんだよ
へんたいなんだよ
ほんと
サイテーなんだから
サイテーなんだから
モコの髪が
浜風になびきました
海浜公園の芝生のうえを走っていって
笑いました
芝生の上にしゃがんで
放尿しました
雲がながれていきました
海は大きくうねっていました
モコの髪が金色にひかっていました
モコの髪が金色にひかっていました
デパートには
すべての売られるべきものがあるのかい
デパートには
人類のすべての売られるべきではないものがないのかい
詩や
人糞や
ひとり死んだ漂泊者の入れ歯や
ないのかい
ないのかい
死者たちの思い出がないのかい
ないのかい
夕方
モコと散歩した
ハクセキレイが
電線にとまり呼びかけてきた
チチチチ チチ
といった
わたしはチュチュチュチュとこたえた
意味はわからないが
おたがいに語りかけていた
オーダーは
いたるところにあるだろう
すべてオーダーだろう
夏の日に
動物園の動物にであう
あつい
夏の日に
動物にであう
動物の声をきく
動物たちの声をきく
白い
夏の日に
動物たちの白い声をきく
動物たちの白い声をきく
海辺に
いたい
できれば
死ぬときには
海辺にいたい
磯ヒヨドリがないていた
カモメが空に浮かんでいた
モコが笑っていた
波が
くり返しうちよせて
雲がわれて
海原がひかっていた
海辺にいたい
海辺にいたい
海辺にいたい
海辺にいたい