爽生ハム
わざとらしく集まって
ぼくらの忘れていた部分など
噛み合っていた
蚊などが するどく飛んでる夏
膨らんだ どんより永い夏の事
近い人間やわ
似てる うんうん
それなりに 嘘つく憑依が
美味しい恥肉
わざとらしく忠実に蚊を掌で挟み
障子をつきやぶり逃がす
蚊も殺したりしない
おおらかな人間ですよ
と 日記にでも書いといてくれ
お婆の冷や汁に また白毛が
混じっとる
美味しいきゅうりの食感が
口の中に貼りつく
お婆の孫たちは きゅうりを障子に
貼りつけて
ぺたぺた 遊びだす
成人した人間は白毛で喉が
詰まっとる
苦しそうに窒息や
けらけら わらって腹抱え
腹を通して繋がっとぉ
美味しいって幸せや
苦しいって幸せや
この家は大きいな 年々膨らむ
蚊に負けるんちゃうか
住み心地で人間は勝てへんよな
あなたの事は 忘れるかもしれへん
殺伐とした軒先
手紙が 会えない人間から届く
遠い場所から商業的な手紙や
開封
山の反対側にAEONが
路地裏にAEONが
可愛い都市の笑顔は
お婆の生活をひろげる
奥の部屋
お婆のひげに砂糖がついている
舐めて その後は
なんにもできない
こしらえた白線に 内緒で
シロナガスクジラ引っ張ってきた
部屋も障子もなぎたおして
自由に飼い馴らすペットやで
喰われて眠る 最後の安眠を
なにか他の生物の粘膜で
泣きながら 涙なんかにしない
餌になって喰われた場所が暗闇
静かに 結いしい哀しみ
洞窟
穴を塞ぐぼくらの粘膜は
障子に住むようになった
野苺
慈母は森のなかにおり
時間の端にいる
あの頃の目線では もう立てない
この落差に本格的な盲目の出現を