@150513音の羽  詩の余白に 4

 

萩原健次郎

 

 

p150513

 

もう、鼓笛の楽団が、楽器を床に置いてみなが坐している。項垂れることはないだろ、めでたい日でもあるのにと、こちらから睨み返すが、彼らとしても商売で音楽しているのだから祭りや祝い事といったって、なんの関わりもない。
でも寂しいではないか。派手に、じゃかじゃかとやってくれ。
白茶けた時間を、眼下の白道を見つめながら連れ立って歩いているだけなら盛り上がらない。そういう仕組みの中で、こちらは音を聴きそれから踊りのひとつも見せてやろうかと思っていたのに。
ぷふぅーって、軍歌、演歌、君が代か。
こちらも、「ご家庭で要らなくなった古新聞古雑誌」を集めて商売している。
音楽も目印に鳴らしている。
客は、ここらあたりの万人だから、なんとなく公共の仕事みたいに思っている。
こちらもお客も、ありがとうと言って応答しているのが変だ。
鼓笛? お囃子? なんか、聴こえてくる。
うきうきしてくる。踊りだしそう。
音羽川のかなり川上だと思う、叡山の麓から、白い帯の川面が、薄く照り返して市街へと下っている。そこへ、トラックに積んだ、色とりどりの紙をぶちまけたいと夢想する。すらりすらりとまっすぐに街へと流れ下る、絵や図や文字や、歓喜や怨恨や、願いや望みや。
紙の踊り、練り歩き、それに、伴奏付なのだから、燃やすよりいいや。
それとも、この紙の片々に一つひとつ火を灯してそれから水に流そうか。
こてきちゃん、さあはじめてよ。
ぼくはもう、準備できたよ。トラックごと突っ込んでもいいよ。
こてきちゃん、祭りだよ。
ボリュームいっぱい上げた。
「ゴカテイデフヨウニナッタ フルシンブン フルザッシ」
正法眼蔵随聞記、
夜と霧、
地に呪われたる者
ナジャ、、、、、、、、、。
いっせいに、千の蝉しぐれも重なるように。