光の疵 「青い矢」(十九歳)

 

芦田みゆき

 

 

部屋の窓をすべて鎖で縛った
無数の青い矢があたしに向かって
その一瞬確かに見た三次元の肉体が
黒いラシャ紙に焼きついて丸まった

マッチ売りの少女が戸を叩く

外は何世紀昔だろう

あたしは
探されていることを意識しながら
息を潜めたが
青い矢に成り変わったあたしは
向かう的をやはり探さなくてはいけない

マッチ売りの少女が獣に跨って
戸を突き破ってきた

不規則に燃え上がるマッチの火は
唯の炎に過ぎず
黒いラシャ紙が少女の体を裂いた

 

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―『記憶の夏』昭森社―