光の疵 「青い矢」(十九歳) 投稿日時: 2015年11月6日 投稿者: michio sato 返信 芦田みゆき 部屋の窓をすべて鎖で縛った 無数の青い矢があたしに向かって その一瞬確かに見た三次元の肉体が 黒いラシャ紙に焼きついて丸まった マッチ売りの少女が戸を叩く 外は何世紀昔だろう あたしは 探されていることを意識しながら 息を潜めたが 青い矢に成り変わったあたしは 向かう的をやはり探さなくてはいけない マッチ売りの少女が獣に跨って 戸を突き破ってきた 不規則に燃え上がるマッチの火は 唯の炎に過ぎず 黒いラシャ紙が少女の体を裂いた ―『記憶の夏』昭森社―