snowy 雪の降る

 

雪の

降るのを
見ていた

世界が変わっていた

初雪には
世界の変化がある

焼石岳の頂の白くなるころ

霜がおり
初雪となった

子どもは世界をみる
子どもの心はふるえた

世界がみえる
世界はみえる

日野の駅でも
雪の降るのを見ていたことがある

 

 

 

厨藝坊にて── Chinese Community

 

今井義行

 
 

ちいさい中華街は Tokyoの下町の あちらこちらに ある
わかい 留学生たちが 日本のことばを学びに
家賃の安い部屋を もとめておとずれるから

幾つもの露地や公園に 咲く花は さくら はなみずき
ばら あじさいへと あしばやに 移りかわり
Tokyoを 四分の一世紀以上 転々としながら わたしは、

この街の舞台屏風を見渡し その艶やかな変化に驚いてしまう

いまは、あじさいが 色づきはじめている

入学の季節の 四月に目に馴染んだ さくら はなみずき・・・・・
その はなみずきがアメリカの幾つかの州花だと知ったのは
ふと 検索をした先日のこと 花言葉は durability(永続性、耐久性)

『私の想いを受けとめてください』そんな 淡い意味あいのもので
日本は、さくら。アメリカは、はなみずき。
どこか似たような愛されかたにこころが和んだのだった

荒川から駅前に向っての通りに日本語学校があって
昼どきにはわかい男子や女子がどっと
顔を 輝かせて 舗道へと あらわれる

ちらとロビーを覗くと日本の大学院への進学実績が貼られている
ああ、ずいぶん優秀な生徒さん達だな
わたしとわかい男女の行く店はおなじ

厨藝坊(ちゅうげいぼう)は 駅前なのに
目立たない 雑居ビルの 2Fにある
税込 600円ランチの 中華料理屋さん

メニューは豊富だし おかず ごはん
スープ 杏仁豆腐に加えうれしいのは
ざくざく 千切りになった キャベツと
日替りの中華粥が お替り自由なこと

上海料理四川料理と看板にあるけれど
台湾料理が本日のお薦めだったりする
中華人民共和国 中華民国など・・・・・ 中国系の若者たちが
グループで にぎやかに 4人卓に座り
お店のぽっちゃりした 丸眼鏡の娘(こ)
に注文を告げる 中国系の大衆食堂だ

丸眼鏡の娘(こ)は 楽しそうに会話を 弾ませる

北京語 広東語など
方言も あるらしいけれど 公用語としての 中国語が
にぎやかなランチタイムに流通している気配だ

厨藝坊(ちゅうげいぼう) ─── “腕のたつ調理師さん”のいる店
その店内 ─── Chinese Communityって まるで みんな 家族

Tokyoの下町で 日本人はわたし一人
厨藝坊(ちゅうげいぼう)のお粥愛好家
南瓜粥、薩摩芋粥、鶏粥、皮蛋(ピータン)粥は
どれも 胃膜に優しく 染み入る味だ

わたしは その日「蒸し鶏の四川ソース和え」を 頼んだ
茶に焦した鷹の爪 鶏は300gはある
それだけで 600円でもふしぎでない

ふしぎでないといえばふしぎなことが
あるそれは並のごはんでも大盛なのに
日替りの中華粥が 幾らでもお替り自由なこと──・・・・
客層が食べ盛りだからということかな
でも、炭水化物ばかりお腹に入らない

だから ごはんを残すお客は 多くいる
わたしは 「ごはん1/3」と伝えている
残飯にしたくないし商売上手な華僑を
うんだ地域だというのに 採算とれる
のかなごはんかお粥を選ばせるほうが
コストパフォーマンスよさそうだけど

たっくさん食べて、おおきな人に成りなさい、ってことかな?

わたしは 中国語を 覚えようとしない
わたしが 「蒸し鶏の四川ソース和え」
と言うと丸眼鏡の娘(こ)の眼鏡の奥の
目が こわばったようなまるさになり
弾んでいた声は静かな日本語に変わる

「はい。ご、はん ごはん1/3 ですね」

日本語を覚えて日本で暮していこうと
この娘(こ)は きっと 考えているんだ
Tokyoの Chinese Community を中心に

荒川から駅前に向っての通りに祥龍(しょうりゅう)という
中華食材屋さんがある ほの暗いその店に
この娘(こ)が出入りするのを 時々見かける
それがふと阿片の取引に感じられてしまう

留学生たちはスマホとタバコ 男子の
多くはピアスを キラキラさせている
ここでは わたしが旅行者なんだろう

旅行者としてのわたしが、初めて見るものに驚いて いるんだろう

彼らは タバコの煙の充満する場所で
何をそんなに 語らっているのだろう
わたしは 彼らの幾重もの青春の光に
話しかけることが なかなかできない

彼らの殆どは 日本語学校を卒業以降
日本の企業や 母国の日本投資企業に
就職していくらしい そこで 稼いで
出資した家族に返金し 国際人になる

障害者年金を受けて暮していて いまはもうおかねもあんまりない
わたしの───・・・・・・・・
視界のなかで 三年前の現在(いま)が咄嗟に立体化する
視界のなかで 永遠に水がゆれている
視界のなかで 永遠に波がゆれている

──あの中国人、東京湾に沈めてしまおうか (笑)
俺が貸した15,000円、
返す気ねえだろう あいつの家、放火するか (笑)
──まあ、ちょっと待ちなよ
施設 追放されるのおまえのほうだぞ
出入り禁止になるのは
錦糸町の飲み屋だけでいいだろ
──でもな、あいつは俺を舐め腐ってる (怒)
俺のブレーン集めて
そういう奴はぶっとばす それが信条だ (怒)
──まあ、ちょっと待ちなよ
施設 追放されるのおまえのほうだぞ
おまえさ、酒が入ると
まるで狼みたいな貌に変わるな

友だちの俺も噛み殺されそうだ

──だったら 暴力じゃない方法教えろ (挑)
──おまえだってな 安易だったんだよ (怒)
そんなこと自分で調べろよ 馬鹿野郎! (挑)

──・・・・・・・・なら、相談に乗ってくれ
飲みながらさ アイデアをさ 練ろうぜ (笑)
ほんとうはさ
東京湾に沈めちゃいたい 心境だけどな (笑)
ほんとうにな!

留学生たちはスマホとタバコ 男子の
多くはピアスを キラキラさせている
その内の一人が 向いの男子に訊いた
「オマエ、今度の土曜 予定どうよ」
「ちょっと中央競馬会に用があるな」

「そっかー、当ったらお寿司おごれ」

中央競馬会に馬券買いに行く子がいるんだ
ギャンブル嫌いなわたしには あまりにも縁のないところ

「ごちそうさま」
「・・・・・・・・・今日も、お粥 おいしかったです」
「あり、がとう」
丸眼鏡の娘(こ)の顔が少しほころんだ
午後二時を回ると 帰り道の照り返しは 強く
けれど Tokyoの Chinese Community を出たあとは
ふたたび 舞台屏風が鮮やかに変わる

旧くからあるだろう たくさんの家屋の
涼やかな簾・・・・ 木の引き戸・・・・ 風鈴・・・・ 鉢植えなど・・・・
この街 なかなかよい街じゃないか、と
わたしは ローソンで買ったパンをぶらさげて帰る

 

 

 

白い家に住む人は

 

佐々木 眞

 
 

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白い家に住む人は
清潔で純朴な暮らしを
心のどこかで求めている。

黄色い家に住む人は
ゴッホに憧れ、
ゴッホになりたがっている。

緑の家に住む人は
「緑はるかに」の浅岡ルリ子と
「緑の館」のヘプバーンが好きな人。

茶色い家に住む人は
遠い昔の田舎の家が
どうしても忘れられない。

赤い家に住む人は
目立ちたがり屋さん
ああ、まだ満たされない思いもいくつか。

灰色の家に住む人は
重巡洋艦鈴谷の元乗組員
いまなお米軍と戦っている。

黒い家に住む人は
精霊と仲良し。
愛読書は「アッシヤー家の崩壊」。

青い家に住む人は
永遠のロマンチスト
空や海に限りなく近づきたい。

 

 

 

letter 手紙 文字

 

広瀬さんは
メールとかウェブとか

どうかと思うので
手紙か

葉書にしますと言った

わたしは
そうですね

それがいいですねと
応えた

苦手なことや
嫌いなことを

わざわざすることはない

好きなヒトと居たい
好きなヒトと会いたい

手紙を書く

 

 

 

sing 歌う

 

NYから
荒井くんは帰ってきた

ギャラリーでパフォーマンスを
してきたのだ

軽井沢みたいで星が
綺麗だった

と言った

裸になって
蜂蜜漬けのドル札を

身体に貼った
剥がして口に詰め込んだ

Honey,Moneyと歌った
Honey,Moneyと歌った