正山千夏
もうペンを持つことも
そうそうないのに
中指に盛り上がり続ける皮膚
私のDNAがつむぐ神秘
まとまらないあたま
ひまつぶしの余生
亡霊の行き交う交差点で
劣等感の夢を見る
目を閉じて
呼吸にゆっくり意識を合わせると
鳥が遠くで鳴き始める
いや、それは遠くなのか
上と下
右と左
前とうしろ
遠くと近く
内と外
過去と未来
光と闇
鳥と私
それらの真ん中とはしっこを
生み出すことと
もとにもどすこと
私の意識がつむぐ神秘
光年先の太陽
対流する大気圏が
5月に届いた輝く日差しのなかで
ほほえみを誘う風になる
盛り上がる皮膚をめくれば
痛みとともに赤い血が流れ
舐めれば鉄の味がする
いや、それは痛みなのか
空と大地 東西南北
仮想現実つなぐスマホ
賞味期限の順に並ぶ食品
奥の方から取り出す
私、とあなた
長いトンネルを抜けると雪国
それを明日見ることのない
昨日死んだもの