道 ケージ
雨の
鎌倉橋の交差点で
死んだS君と会う
とても急いでいるらしく
フードをかぶって
こっちには目もくれず
走り去った
鎌倉といっても鎌倉ではない
東京大手町のビル街
そのはずれ
死んでも働いているのか
近頃
死んだ人と会うことが多いのは
どういうことだろう
オヤジとはしょっちゅう
といってもいいぐらい
オヤジの禿げ頭が
「ああ、そうかねぇ」
交差点を過ぎ
首都高下
暗い日本橋川
これが鎌倉橋
上から水漏れのように降り注ぐ音
逆? いや逆じゃない
躑躅の大刈り込みが
真っ二つ
血液図のような横っ腹を見せ
橋桁に空襲の跡が
胃壁の腫瘍のよう
しつこさにかけては
Sのマルクスなみ
これからどこへ行くか
忘れてしまう
黒い人たちは皆忙しそうで
誇らしげだ