妹よ

 

佐々木 眞

 
 

妹よ
お前は 私の懸命の追跡を あざ笑うように
北白川学園の 黄色い菜の花畑の 向こうを
手に手をとって 逃げて 行ったね

妹よ
お前は 希望を喪って 若狭の海辺を彷徨したが
まるで天佑のように 立ち直って
第2の人世を 歩みはじめたね

妹よ、
お前を 助けてくれたのは 運命のひと
限りなく優しい 寛恕の男が
限りなく弱い 迷える羊を 救ったね

妹よ
お前を 助けてくれたのは 聖マリア
限りなく優しい 慈愛のひとが
限りなく弱い 一人の女を 強くしたね

妹よ
お前は 死に至る病に 侵され
想像を絶する 苦痛に耐えながら 毅然として 逝ったね
その顔は まるで聖テレーズのように 気高く 美しかったね

妹よ
お前に また会う日まで さようなら
いつか どこかで
また会う日まで

 

 

 

冬河夜船

 

原田淳子

 
 

 

冬のうえのオーロラ
冬のしたに眠る春

吹く風は、銀色
冬は水の高さで横たわる
春が眠るあいだ
船は渡る

堕ちてきた氷はやがて
木々の芽に宿る露となる

降りしきる極小の光を潜り抜けて
髪は種子の白、
骨は灰と燃え、
船は最果ての地へむかう

眩しいほどに
冬は白に至る