モコ、ぼくの犬

 

さとう三千魚

 
 

今朝
木蓮の白い


咲いたよ

モコ
お母さんと植えたね

白木蓮の花だよ

木蓮の花は
モコのようだよ

ふんわりと
白く

ひらいたよ

 

・・・

 

この詩は、
2024年2月28日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第2回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

また、2024年3月3日 15時〜18時に、静岡駅北口地下広場にて、「無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第22回としてスタンディングを行い、この詩と憲法前文などを拡声器を使って朗読しました。

以下、資料をご参照ください。

・・・

イスラエル軍の攻撃で3万人以上が殺害されたパレスチナ自治区ガザで、2月29日、支援物資を求めて集まった人々が発砲を受け100人以上が死亡したことが報道されました。
国連安全保障理事会は緊急会合を開き「深く懸念する」という声明に、理事国15カ国中、14カ国が賛成しましたが、米国が反対し、合意に至りませんでした。


ウクライナでもまだ戦争は続いています。

日本では、いま、憲法の基本原理である「国民主権主義」「基本的人権尊重主義」「平和主義」が脅かされ、軍事費が増強され、国内で製造された兵器が輸出され戦争に加担されようとしています。

戦争 やめれ!
すぐ やめれ!
殺すな。


・・・

日本国憲法 前文 読みます。


日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

・・・

先の戦争の過酷な体験を基盤とした日本国憲法の基本原理である「国民主権主義」「基本的人権尊重主義」「平和主義」を、わたしたちは忘れてはならない。

戦争 やめれ!
すぐ やめれ!
殺すな。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

日の果て

 

工藤冬里

 
 

線路内で傘を差した女が土筆を採っていた
男も久米土と思える線路脇の泥を裏返した袋で掴んで走って逃げた

移動が思わしくなくなった世界で未だに観光を続ける群れがいると旅の不可能が際立ってくる
シャブ喫茶も値上げして暮らしにくさと移動しにくさが定点を襲う
観測はプルーストが得意としたものである
その男は旅に行けない、と「私」は書く

その男の走り方はよくなかった
歩くほうがまだましだった
日の果ては
近づいてくるものではなく
満ちていくものだからだ
つぎつぎとクリアしてゆく障害走のようなものではない
一歩ごとに地雷を踏んで、と女は呟く

 

 

 

#poetry #rock musician

鈴木

 

塔島ひろみ

 
 

鈴木のおやじは目が半分見えなくて 足も悪くて
よたよた危なっかしく歩き回っては 会う人会う人に悪態をついて
ボロボロの服でいつも汚く
よぼよぼで 直死ぬだろう 死んでしまえ
みんなから嫌われ わたしも嫌いで
いつしか姿が見えなくなった

冷たい沼底の どろどろの 暗くて臭い 沼底の一隅に
そこだけぼわっとあったかい場所があり
つぶれかけた家がある
傾いた木戸の隙間からぬるんとメダカが出たり また入ったり
狸がいた
護岸工事で河原を追われた狸たち
何もしないでただゴロンと
あったかいどろどろに身を任せ
窓からふきのとうが顔を出す
ヤブカンゾウ
ノビル
つくし
オオイヌノフグリ、われもこう
いろいろいた
道端にも 土手にも 生えてこなくなった植物たち
生えても引っこ抜かれるだけの雑草たち
そこにいた
誰も寄りつかない 見つけない場所
そこだけあったかいけど そこだけあったかいことは誰も知らない
みんな もういないんだと思ってた
もういないと思って
次々に3階建の家が建った
スマートな家 スマートな犬 スマートな庭 ピカピカの車
もう思いだされることもない鈴木のおやじは
暗い目で 毛並みが荒く人になつかない野良猫といっしょに
そこにいて
相変わらず悪態をついている

傾いて 崩れて どろどろになったその家は
カレンダーを見なくても 天気予報を聞かなくても
春が来たことをわかってて
だからこんな沼底なのにじわっとあたたかくて
なんかうれしくて

わたしはそこにいなかった
路地に立って「鈴木」という表札を見ている
古びたプランターにパンジーが咲いていて
見上げると大きなスモックが物干し竿に袖を通して 揺れている

 
 

(2月某日、細田4丁目、路地で)