廿楽順治
町の
左はんぶんは死んでいた
あたらしいパン屋があり
となりに葬儀屋がある
人影は 建物のさかい目で
足が切れていた
(寝返った将軍のように)
髭をはやした花屋の主人が
店員と仕入れのことを熱くはなしていた
その顔のはんぶんは
もう なくなっていて
くらすことが
どこか遠くでたたかうことのようだ
(けっして思い出されない空)
わたしたち家族は
その左側の川をわたろうとして
まだわたれない
町の
左はんぶんは死んでいた
あたらしいパン屋があり
となりに葬儀屋がある
人影は 建物のさかい目で
足が切れていた
(寝返った将軍のように)
髭をはやした花屋の主人が
店員と仕入れのことを熱くはなしていた
その顔のはんぶんは
もう なくなっていて
くらすことが
どこか遠くでたたかうことのようだ
(けっして思い出されない空)
わたしたち家族は
その左側の川をわたろうとして
まだわたれない
今朝
玄関の
自転車の
サドルの留具が壊れていた
河口まで
歩いた
小川の傍を歩いた
オオバンたちが水面に浮かんでいた
クチバシが白い
水面が
光ってた
キラキラ
光ってた
富士が青空に浮かんでいた
半島が青く見えた
海原にタンカーが浮かんでいた
海浜公園では
デイゴの木の枝葉が切り払われて
立っていた
デイゴの花の下には逢瀬もあったろう
椰子の葉が風に揺れていた
#poetry #no poetry,no life