雨、浜辺に

 

さとう三千魚

 
 

朝には
女がクルマで出掛けるのを見送った

それから
浜風文庫を更新をした

何本か
メールを送った

それで午前は終わった
珈琲を

何杯か飲んだ
フジ子・ヘミングのピアノでハンガリー狂詩曲を聴いた

フジ子・ヘミングはあまり
聴かなかったな

流行りすぎるものは
聴かなかった

亡くなって
いま

聴いている
この正月は四国のクルマ旅が叶わなかった

用宗漁港で
初日の出を見た

浅間さんにお参りした

正月休みの終わりに
女と

三嶋大社にいった
いないモコのお守りを買った

函南で
お風呂に入った

今日は朝から雨が降っていた

雨の
午後に

浜辺に出かけた
クルマのなかで憂歌団を聴いてた

憂歌団は
若い頃

明治大学の学祭に聴きに行ったことがあった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ファとラは羽虫の囁き

 

一条美由紀

 
 


<ある殺人者のポエム>
小さな箱の中から覗き見てるような
自分と無関係に感じる世間
他人ごとのような僕の身体は
冷えた炎を放っていた
君の見開いた目に熱く流れる血の映像が浮かぶ
ピクピク動くデコネイルがとても愛おしい
甘ったるい歌詞を切り刻み
ナイフを舐めた時に走る絶頂感を
今君に教えたい

 


すべてを話せど足らず
すべてを聞けどわからず
捨てたものを思い出して
また捨てる
複雑さはいつまでも簡易にならない

 


昨日の北の空は
波立っていた
私は彼方までは泳げなかった
ただ恨めしく仰ぎ見て嫉妬するだけだった
人は叶えられないものほど
より強く望み
死してさらに肉体に求める

 

 

 

標野(open field)

 

工藤冬里

 
 

息を吸うのとシャッターを切るのが同時であるような
顔と半身を透かす文字群が配されている瓶
全く別の国に入ったみたいだ
標識も違うし

虎色は溶けて頽れ
愛想尽かした黄色と薔薇色
水色に紺の運河
大砲が火を噴きそこだけ白く剥がれる擦れ方の
発信源を探ると虫瘤のイスノキ
守ることも破ることも簡単な空洞だった
置手神
鱗から落ちて開くのか覚醒して食べるのか
祈れと言う三人称に属さない終止符
殴らず撃退する点猫法の算数
地上に望むものは何もない

 

 

 

#poetry #rock musician