母の
腹から
産まれた
憶えてないが
空白から
産まれたのではない
母は
絹といった
一人娘で
兄は
沖縄の戦争で死んだから
苦労もした
水をはった田圃に
屈んだ母の
姿を憶えている
空白から産まれた
のではないが
そこに
帰る
笑っている
母の
腹から
産まれた
憶えてないが
空白から
産まれたのではない
母は
絹といった
一人娘で
兄は
沖縄の戦争で死んだから
苦労もした
水をはった田圃に
屈んだ母の
姿を憶えている
空白から産まれた
のではないが
そこに
帰る
笑っている
深夜に
姉から
電話があった
母に代わるから
声を
かけて
あげて
姉は電話のむこうで
言った
もうすぐ
帰るから少し待って
もし
待てなかったら
もう
休んでもいいよ
そう
わたしは母に言った
ヒトはいつか湖になれるかもしれない