michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

荒野

 

工藤冬里

 
 

僕だったら文句言わずに煮詰めて発酵させられないかとか十割で麺打てないだろうかとかあらゆる可能性を探ったと思う
荒野ではテント以外の工藝性は備えられなくてもいいが生き延びるには行商人のミニバンが必要だ
河南のキッチンカーがニラを運んでくる
あゝ高い、高い、高い
岩塩は土に塗れて

 

 

 

#poetry #rock musician

波が寄せてる

 
 

さとう三千魚

 

今朝も

女と
スーパーに行った

キャベツと
人参と

ブロッコリーと

秋刀魚と
明太子と

あんパンを買った

ノンアルビールも
買った

女がレジに行く間に
スーパーの花屋に行く

いつも
そうする

そこに
花たちは売られている

売れ残った
夕霧草の

鉢に
ヤブタビラコの花が咲いている

ミモザの
花芽も

膨らんでいた

それで
帰って

家の玄関で
ハグロトンボを見た

ふわりと
飛んできた

午後
電話の後で

浜辺にクルマで行ってみた

クルマでは
チチ松村の”イスにもたれて”を聴いてた

波が高かった
大風が近くにいるんだ

女のコたちと男のコたちが
波打ち際で

キャーキャー叫んでいる

クルマのバックドアから
イスを出して

座ると
鳩が来てくれる

餌は持たないが
鳩が来てくれる

鳩は
すぐに

歩いて
いった

浜辺には
タコさんがいた

ランニングシャツを着て笑ってる
浜辺には

波が寄せている
波は寄せている

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

腐る

 

さとう三千魚

 
 

女が

家に
いる

このところ
いる

昼過ぎに
比呂美さんの若い頃の「カノコ殺し」の朗読を聴いた

野々歩さんがvimeoに上げてくれたのだ
痛かった

午後に
女とデパートに行った

デパートの8階で美味いもの市があるのだという

女は
わたしに

米沢の老舗牛めしと
他の店の搾菜とモツ煮を買ってくれた

それで
ひとり帰ってきた

女は友だちと食事するのだという

帰って
夕方に

小川の傍を歩いてきた

土手に紅い彼岸花が朽ちていた
赤黒く花は腐っていた

小川の水面を見ていた
水面に空が映っていた

空を見て
歩いた

灰色のまるい雲が空に浮かんでいた

比呂美さんの朗読を聴いて痛かった
ガザの地で人々が虫けらのように殺されている

どうだろう

言葉はどうだろう
言葉はどうだろう

痛かった
紅い花が腐っていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

黄表紙

 

工藤冬里

 
 

ハンドルにガバと伏せ唐草の曲線で舵を切るように(頻繁に)車線を変えながら渋滞の夕暮れ
誓いの中、黒い卵のように後頭は並んで。エンブレムの佇まいで燻されて出てくる一群
エケケケ・・未明の黒い雨の爆撃に中身汁サークルの欠損はまた(また)拡がり
今何が地球で生じても以前のように持ち堪えられる気がしない
タトゥーは黄表紙のように捨てられ姉は卵を飲み込む
心配事​があまり​に​多い​と,夢​を​見る​こと​に​なる。(ecc5:3)

 

 

 

#poetry #rock musician