michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

風の行方

 

涛瀬チカ改め神坏弥生

 
 

昼下がり、ふと目が覚めた
部屋の外で風の鞭打つ音がする
繰り返し聴こえている
嵐でもないのに強い風が吹き
窓の外を見ると
削られた土手の上に大木が並び
強風に揺すられている

私は、風の行方を知ろうとした

窓から見る大木は
木々の葉と枝をゆすり
木の葉が、光り揺れている
外に出て、歩く
見事な晴天が広がる
青く青く、高く高く、広がってゆく空
削られた土手を登ってゆくと
葉のきらめきは高く昇った太陽だと知る

土手を超え下りてゆくと
赤土の地面が広がり
低木や竹藪が続き
強風に煽られ
しなり、木の葉をざわめかせる

時折、風が止んでさわさわと少し聴こえ
また、風が吹き
風が私をなぞるように耳や頬や顔に沿って、後から私へと流れ
通り越してゆく

坂を下りてゆくと
海の匂いが鼻腔をくすぐる
水平線が見えて
汽船が、汽笛を鳴らし、渡る
強い南風に背が強く押され
歩くのがもどかしい

夏の終わりの日差しがやわくつよく照りつけ
向日葵が海を向いて夏の終わりに
名残を惜しんで別れを告げる
向日葵と私が並んで海を臨む
振り返れば山荘や民家が立ち並ぶのが見えている
そうだ、風は山から吹き下ろしているのだ
誰もいなくなった海辺に
私、独り立ち尽くし、沈黙する

波打ち際に打ち寄せられた
命無い貝殻や丸く波に削られた色んな色のガラス
風の行方は眼の前にある
カモメがつがいで高く飛びくるくると旋回を続けて鳴く


浜で空を振り仰ぐ私
空に俯瞰する二羽のカモメ

解き放つ  私を  風と共に
海へ

風が海を渡ってゆく

私は、長い間海辺に立って
水平線を見ていた

風の行方を

 

 

 

知ってる/知らない

 

辻 和人

 
 

耳をぴくんとさせるや否や
背中をくるっとほどいて
軽く波打ちながら降りてきて
たん、と床に立つ
真ん丸黒目をまっすぐこちらに向けてくるけど
ぴたっと同じ位置に静止して
それ以上近づいてこない
さっきまで
冷蔵庫の上で寝そべっていたファミとレドだ
アパートでかまっていたノラ猫を実家に預けて
もう8年
預けた当初は毎週様子を見に行っていたけど
最近は半年に一度くらいしか顔を見せてない
この人、ミルクくれた…っけ
抱っこしてくれた…っけ
ススキで猫じゃらし作って遊んでくれた…っけ
ぴたっと動かない真ん丸黒目の中で
ぼくの像、ゆらゆら揺れてるぞ
知ってる…っけ
知らない…っけ
知ってる…っけ
知らない…っけ
しっぽの先がぴらぴら震えてる
おいで
膝を折って床に座り左右の人差し指を差し出す
ちょっ、ちょっ、ちょっ
2匹は並んで近づいてきて人差し指の臭いを嗅ぐ
知ってる…っけ
震えを止めたしっぽをぴーんと立てて
背をうねらせ近づいてくる
だから
ぽん、ぽん
しっぽの付け根を力を入れて撫でてやるんだ

 
 

*この作品は、杉中昌樹編集発行の詩誌「つまり猫が好きなんです 第1号」に掲載されたものの再掲になります。

 

 

 

Deep In The Mists

 

狩野雅之

 

夕暮れにはまだよほど時間があるのだが、異様な濃霧に遭遇した。標高1700メート ルの山岳地ではこれは「雲の中」に入った状態なのだが、現象的には「濃霧」のよ うに見える。分厚い雲海にさえぎられて出現した薄明の空間。拡散する光のスペク トルによってじつに幻想的な世界を垣間見ることになった。

このような機会を心待ちにしている自分がいる。わたしの内なる薄明世界にも似たこの風景に、なによりもこころ惹かれるからだ。

全てカラー写真です。

 


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