ジャスミン

 

工藤冬里

 
 

嫉妬するジャスミンはおだやかにものを言うことができなかった
金持ちすぎて女の子として育てられた
あっけらかんと夢を語ったので
マグロ船に売り飛ばした
嫉妬を宿してウグイス色の盲目に
生まれた時赤く、土地も赤く、スープも赤かった
自宅待機で髭が伸びた奴が多い
わかりやすい話をするのはなぜ大切ですか
空気に話すのはドルフィ
下書きからジャーゴンを削除せず置き換えてありふれた雲を演奏
全部貰い物で食べに行ったよ
一つ以上の見方があることも知っている
持ち出し袋に十九年分の責任を入れる
委ねられた二十キロの銀
持っていない人は、持っているものまで取り上げられる
川崎の馬
を念頭に置いて
クッキーの型を押す
エッヂがきれいだ
差し出すほどに愛して
エッヂが嘘つきです
できないからです
馬も愛さなければなりません
瞼がみどりの
感情を犠牲にして平和島記念を取り戻せ
他の人がすれば良い
最後まで蝕まれるのを許さなかった
端からみどりの腐食、

 

 

 
#poetry #rock musician

district・地区 地方

 

さとう三千魚

 
 

夕方

モコを
車に乗せて

港まで行った

海浜公園も

港の
駐車場も

閉鎖されていた

行き場もなく
帰って

近所を散歩した

小川の土手の韮の花の白く咲いている

道端には
オルレアの

花も
白く咲いている

オルレア
セリ科の花だという

芹の花も
白だ

秋田では田圃で育てていた
納豆汁に入れた

薬草なのだろう

一昨日みた
“火口のふたり”という映画を

思い出している

秋田が
舞台だった

象潟だろうか
海が見えた

西馬音内の盆踊りの景色もあった

セックスばかりしていた

男と女には
そうしたこともあるだろう

“火口のふたり”

もう
夜になった

西の山も見えなくなった

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

lol

 

工藤冬里

 
 

表層が剥ぎ取られ
惨めな層と交代する夜更けに
節節は散けて
投げ出された骨は
絵文字の丘で
発掘されるのを待つ
水枕ガバとある種の恐ろしい予期だけが骨となっているlol

耳鳴りの視野に検出されたされないで幸不幸は入れ替わり
警告なしで点滅する運不運を速報する
フォーマットされてからのDNAの回復はない
爆報とはよくも言ったもので
IT用語に換骨された器形を裏返しにして
戻ってはならない後ろを振り返らせる
後ろを安全に守ろうとする者はデータを失い
失う者はデータを生き長らえさせる
その夜、二人のデータが一つの寝床にいるだろう
一方は移動され、他方は消去される
その時二人のデータが(たぶん有機の)畑にいるだろう
一方はコピーされ、他方はごみ箱からもいなくなる
二人のデータが車なんでグラスは一つ〜とか偽って同じ瓶ビールから飲んでいるだろう
一方はクラウドに保存され、他方は共有を切られた前機種と共に消滅する
死体置き場には鷲も集まっているだろうlol

音の立ち上がりは敵味方をはっきりさせる
幸不幸運不運に関わりなくCOVID-19PANDEMICの間でも
だめなものはだめだ
顔の左右非対称が進む政治家のように
なぜ?と訊かれたら
終身パスポートをもらってもウォルトに愛は感じない、と答える
遠くの絵文字の丘から毎日摘んで来てくれたらだんだん感じるかもしれない
“彼(lol coxhill)の音楽にはユーモアがあったが、フリーの演奏は冗談ではないことを観客に伝える必要があると時々感じさせるものだった” (wiki)
愛しているか知るために試しているんです
行おうとします
しかも一生懸命にそうします
デレク・ベイリーとリチャード・タイテルバウムの二人のデータ(あまりおもしろくない)が左右対称性の後ろをあるく
鳥は鳴く
変わらないなら罔(クラ)く殆(アヤ)うい

 

 

 
#poetry #rock musician

ふいに真の恋に

 

駿河昌樹

 
 

わたしの詩の読みかたなんぞ
いいかげんである
なにをするのもいいかげんだが
詩なんかを相手にするときなんぞ
なににもまして
いいかげんである

けれども
いいかげんな読みかたをしてさえ
りっぱに引き込まれちゃったりするか
どうか
詩の見分けかたは
そこにあるような気がしている

いい詩というのは
読み手のいいかげんさを貫く
まるで
怠け者でぐだぐだで
あたまも悪い愚か者が
ふいに真の恋にだけは貫かれるように

 

 

 

発生即思い出

 

駿河昌樹

 
 

いまとなってはいい思い出だ と よく 言う

これもいつか いい思い出になるよ とも けっこう 言う

ぼくのいま現在の感覚をしゃべらせてください
毎瞬毎瞬が発生即思い出です
いつの頃からかそうなってしまって
もう
ありありと発生即思い出です
一瞬一瞬なにかが起こったと同時に思い出として思い直しているのです

あ 洗濯機がピーピー言って
洗濯の一回分を
はげしく懐かしんでいる!

 

 

 

spread・広げる 広がる

 

さとう三千魚

 
 

5時に起きて
浜風に

HAPPY HONG KONG 2047 was disturbed by TOKYO 2020
のコンテンツをまとめた

昼前に
アップした

それから
広瀬さんのブロック塀の写真と

工藤さんの
少年という詩を

アップした

昼過ぎに
階段を降りていくと

モコと女がソファーで待っていた

昼食なしで
おしるこを食べて

また

二階で
アニュス・デイを

聴いてた

全てが貨幣に置換された世界に

その声は
いらない

辻潤は死んだ
たくさんの人が死んでゆく

汚泥に佇つ
人よ

汚泥に佇つ人たちよ

声は
与えられたか

夕方

モコと
散歩した

ノラたちがいた

西の山が雲に隠れていた

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

少年

 

工藤冬里

 
 

上の△は下では▲か▽
△は正しい正しさ
▲は間違って正しい正しい間違い
▽は正しく間違った間違った正しさ

△を下で敷衍しようとすると必ず齟齬が生じる
その霊性を欠いた原理的な正しさは逆に下では間違い▲として現れる
間違い▲としてしか現れない、現れ得ない!
ほんらい正しいが故にいまは非難されているのだ!
そしてその非難にはじゅーーーうぶんな根拠が添えられる
添えることができる!

▲に対するそうした批判は絶対的に正しく間違っている!
正しい間違いである!!
正論とはいまはそうした正しく間違った▽のことである!
世の中とは正しい間違い▽でできているのである!
▽は絶対的に間違っているゆえにいまは正しいとされているのだ!

(▲や、△を知らない▲に対する▽の非難は「正しい間違い▽」でも「間違った正しさ▲」でもなくほんとうのほんとうに間違っているだけなのだが)*

それに対して正しさらしさ▲のほうも間違っている!!!
それは正しいからだ!!!!
圧倒的に正しい正しさだからだ!!!!!
正しいゆえに絶対的な正しさ△からは遠ざかっていく!!!!!!
正しさ▲がいまはいちばん間違っている!!!!!!!
正しさ▲のほうが間違い▽よりももっと間違っている!!!!!!!!
ゆえに正しく間違った間違った正しさ▽から非難されているのだ!!!!!!!!!

 

*(作者注)

 

 

 
#poetry #rock musician

flesh・肉(体)

 

さとう三千魚

 
 

仕事
無く

家にいる

元々
仕事はなかったが

もっと
無い

午後に
浴室の裏の草むしりをした

軍手に
枯れた草が絡まる

素手で
草を毟る

トカゲがいて
女は

逃げていった

昨日の夜
“火口のふたり”という映画をみた

男と女が性交ばかりしている

西馬音内の盆踊りの
場面で

男は女の手を曳いてゆく

“はぐれている肉体” **

という
いいかたを土方巽はしていた

寒い
雨の日

家の軒下で小石を積んでいた

家出して
自転車でどこまでも走っていった

肉体は

どこへも
帰らない

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.
** 土方巽「美貌の青空」より引用しました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

すべてに失敗した五月の、抑鬱段階にある落窪の歌

 

工藤冬里

 
 

柿の葉が太くなって考えられていた大きさまで太くなってきています
考えられていた太さはとても太い
柿には二種類しかない
なで肩か肩幅があるかのどちらかだ
柿は肩幅だ
肩幅があると頼もしい感じがする
女は差別なく公平に言ってたおやかだ
差別なく平等に扱われているだろうか
女偏に弱いと書いて嫋やかと読む
ちなみに魚偏なら鰯である
イワシは強いのではないか
前針に掛かったことがある五寸くらいなのに一尺のベラくらいの力があった
将来起きることは左肩と右肩の間の金ネクタイに落ちてゆく
ネクタイは見える喉のようだ
男前の顔が漏斗に落ちるようにタイの太い結び目に落ちてゆくのだ
スーツは黒がいい
オスカーワイルドの世紀末からの結論だ
ワイルドは一九〇〇年の十一月に死んだ
非の打ち所のない柿だった
だれも洪水など経験したことのない時代に
木を加工し樹脂を使ってハコを立ち上げタイを流行らせたのだ
不快なものである東京軍が包囲をやめて一時的に撤退する
その間に秩父の山の方に逃げたのです
箱舟の七人練炭自殺
連合赤軍大菩薩
ロックフォークのシオンて子音の嗄れだね
熱帯なのに三寒子温は変なのでもうストーブ捨てて了い給えよ
シュッとして認める
現在、人種や国籍にかかわらずなで肩と闘っています
疲れ果てて弱ることも
躓いて倒れることもある
骨格の闘争
落窪の笑窪
下落合・戸塚辺りの雑草
忽ち老成する二世
過去の過ちなどない
ネットで中傷するようになりました
竹を割ったようなメンマ
青だけ踏み赤は棒編み
悔いのない共食の共食いから
目を逸らす犬
注ぎ出す水の駅ビルといえば岡山が噴水
鈍色のパッドが置いてけ堀
傷つけられる状況は変わらなかったが
傷つける北の方(キタノカタペニンナ)をカキの葉の太さが凌駕していた
そういう虐めには耐えられても
正当化できない失敗柿なのであれば無駄なことだ
考えることを止めることを決意するしかない
唯一の抜け道は間違った言語を通してその間違いを学ぶことだ
それにしても柿の葉は太い
それを自分はもはや言うべきではない
玉は尽きた打ち止めだ
トータルで損して終わった
終わりの時代が終わるのはそれが終わりだからだ
終わりが終わらないのだとしたら終わりなどいらない
白いカバの形のグラデーションに一瞬青空
不安の原因を教えてもらうこと
いや、すべてに失敗した五月の、原因の原因を教えてもらいたい

 

 

 
#poetry #rock musician