たいい りょう
明日は 来るのか
今日は いなくなったか
昨日は まだいるか
記憶は はるか地中の彼方に
埋もれた
深く深く
どこまでもどこまでも遠く
記憶は私を未来へと
連れ去った
真っ白なキャンバスは
無限の色彩がうごめいている
何も覚えてはいない
すべて身体に刻まれている
その刻印は 明日に向かって
地平線を滑り出した
明日は 来たのか
昨日は 来るのか
明日は 来るのか
今日は いなくなったか
昨日は まだいるか
記憶は はるか地中の彼方に
埋もれた
深く深く
どこまでもどこまでも遠く
記憶は私を未来へと
連れ去った
真っ白なキャンバスは
無限の色彩がうごめいている
何も覚えてはいない
すべて身体に刻まれている
その刻印は 明日に向かって
地平線を滑り出した
明日は 来たのか
昨日は 来るのか
先日通りがかった上原小学校の前で
2匹のカエルが死んでいるのを見た。
2匹とも、車に轢かれたのだろう。
ぺしゃんこで、黒く干からびていて、
ベージュ色の手先足先の斑点と水かきだけは、
かろうじて確認することが出来た。
2匹は仰向けで、片手を繫いで
ダンスをしているみたいだった。
2匹はつがいだろうか。
春が来て、やっと地上に這い出て、
これからどこへ向かうつもりだったんだろう。
誰も気に留めない死。
一緒にいた野々歩さんと私は、どちらともなく
「こういう風に死ねたらいいね」
「死ぬ時は手を繋ごう」と悲しい約束をした。
明日こそは、私たち
ちゃんと生きようと誓い合って目を瞑るのに
後から後から涙が流れ落ちて、
眠れずに顔が粉々に壊れてしまう。
毎日を無為に生き、着々と死にゆく私たち。
それから暫くして、また上原小の前を通った。
2体あったカエルの亡骸の内、1匹がきれいに無くなっていた。
きっとカラスか何かに食べられてしまったのだろう。
それを見て「もう1匹の残った方の亡骸を口に入れて噛んだら、
どんな味がするだろう」と思ってツバが出た。
ツバが出た。
私たちは生きている。
死ぬ瞬間まで、生きている。
残った方のカエルは、ひとりでダンスしているみたいだった。
ただの気持ちの悪いカエルの亡骸なくせに、
誰にも気付かれず、意味もなく朽ちていくことに抵抗していた。
死ぬ瞬間まで生きていたんだと、全身で叫んでいた。
おいおい
泣いて
樽が軋む
おいおいおいおい
秋霜の鏡
そうなのだけれど
おい、おーい!
とおい、とぉーい人
おいおいと追いかけ
おいつかない
ヨシキリはどう鳴くの
黄色い帽子が浮き沈む
おいおい
疲れて
坂上で見上げた雲
おいおい探す
「優しくなりたい、強くなりたい」
って歌聞いた
えぃえぃ
うえてねじ食う
「ネジしかないからしょうがないでしょ」
でも、歯は欠け
ういうい、なんでもあり
おい、いいかげんにしろよ
「おいはやめて」
えいが飛んでいる
あいはない
うえうえ
おいおい
おえおえ
あいうえおい
あいは
おいは
こないだおらっちが、セイユーで買ってきた大好物のドラ焼きを食べようと、冷蔵庫を開いたら、影も形も無かった。
きっと、コウ君に、食べられてしまったんだろう。
ドラ焼きは、木村屋總本店の特製で、「蜂蜜入りのしっとり生地」が特徴だ。
税抜き価格68円と安価で、「つぶあん」と「さつまいもあん」の2種類があるが、おらっちは、どちらかといえば、シンプルな前者を好む。
しばらくして、冷蔵庫を開けた妻のミエコさんが、「きゃああ、私が大事に取っておいたチョコレートがない!」と叫んでいる。
これもきっと、コウ君に、食べられてしまったんだろう。
コウ君ときたら、まるで欠食児童、みたいだ。
施設のご飯の分量が少ないうえに、食後におやつもデザートも出ないから、金曜日の午後に帰宅したコウ君は、“100年前から飢え続けの狼”のように、なんでもかんでも、がつがつ食い荒すんだ。
いいよ、コウ君。なんでも食べな。
お前さんの好きなものを、いくらでも食べな。
まもなく私たちが居なくなって、ホームが家の代わりになったら、ドラ焼きも、チョコレートも、あんパンも、アイスクリームも、自分勝手に食べるわけにはいかなくなるだろう。
だから、いまのうちに食べておきな。
ドラ焼きも、チョコレートも、あんパンも、アイスクリームも、
なんでも、かんでも、君が好きなだけ、食べていいよ。
いまのうちに、どんどん、じゃんじゃん、一生分を食べておくんだよ。
ぐにゃり
柔らかい
重さ
誕生から一夜明けて
「お父さん、じゃあ抱っこしてみて下さいね」って
手渡された
ぐにゃ、おっとっと
「あ、さっき言いましたけど
赤ちゃん、まだ首がすわってないんです。
頭が大きい割に首は細くてしっかりしてないので
首と頭を押さえないと神経痛めちゃうんですよ。
抱っこする時いつもいつも首のこと第一に考えて下さい」
保育ベッドから取り出されたこかずとん
真っ白なおくるみの中で目を閉じたまま
ぐにゃりとしてる
その中でも一番ぐにゃるトコ
ここ大事
大事なトコ左手でがっしり押さえ直して
「よーしよし、いい子だな」小声で呼びかけると
赤い身をちょいとひねったこかずとん
ぐにゃ、ぐにゃり
細い首が微かに傾いで
返事してくれる
柔らかさと重さが溶けあった
こかずとんの返事だ
重さが柔らかい
細くて大事
いつも大事
桜が咲き誇る日を遠い目で眺めていたときはすぎ
沿道のツツジは満開に。
春から夏へと移りゆく時季を待ち望んでいたのは
少しでもよい兆しを待っていたからだろう。
かなしみに押しつぶされそうなニュースが続くのはなぜだろう。
あまりに、あまりに。
時間の経過とともに癒されるということをわたしじしん信じて生きてきた。
生きていられるうちには喜びが感じられることを信じ続けてきた。
少しの喜びでいいのだ。大きなものを望むとき、人は尊大になりすぎる。
歴史というのは何かと考える。
人のあり方について考える。
今なお戦禍にある人たちに尊大になってはならないと戒める。
それでもことばや気持ちにこころがずきずきする。
過去を知ることは未来に必ず繋がるのだろう。
その過去への認識を誤ってはならないと更に戒める。
知らないふりをして生きてはならない。
外国から見たこの国のありよう、犯した罪、
それらは事実として学び続けなければ
また一歩ずつ認識がずれていくのだろうと
それがかなしい。
受けとめ、思考すること。
いったん手放して現実のなかにいることを確認すること。
同時並行でできることは確実にあるのだと。
嘘を並べればそれらは必ず明らかになる。
ズルをすればじぶんまではだませない。
そんな生き方しかできないけれど
今日も少しの勇気を持って一歩踏み出す。
かなしみや怒りにとらわれすぎぬように。
他者やじぶんを責め過ぎぬように。
あまりに過酷だ。生きるというのはときに。
それでも喜ぶことが互いにあると信じれば
明日は必ずあるのだと今日も踏み出す。
Apr 18
中西龍
https://youtu.be/ZQHDUmiujc8
Muerte, ¿dónde está tu victoria? Muerte, ¿dónde está tu aguijón?
Apr 19
「失われたのはパブリックである」から10年経った。今や世界は音声off機能の無いzoomのようなもので、理性の外側の領域の炙り出しが始まっている。強者と弱者はメビウスの輪のように絡み合いながら共に死滅するのだ。
私は自分の頭がネズミの頭のように小さくなったのを感じた。死ぬ前に一回り小さくなるのは知っている。
前もって死体を溢れさせている、現象ですらない裂け目が私である
らしかった
「悪にでもなる」がコンビニに溢れていた時期があった。裂け目としての自分があり得ない未来に跳躍するのが希望なら、つまりその等式が希望なら、私たちは「ナチにでもなる」
40万と聞いてそのクラスなら「目覚める前に遺伝子組み換え添加物漬けにする」の符牒だったのでは?と一瞬は思った
Tengo esperanza de que va a haber una resurrección tanto de justos como de injustos
Apr 20
ロンドンに居た頃日本語というと義父から毎月送られてくる文藝春秋しかなかったので頭のなかがすっかりおじさんになるという剰余享楽を体感しました
https://twitter.com/KS_1013/status/1513954014538637312?s=20&t=oJilCN9ubciA2jsYJ5FYBw
日常など続いていくわけがない。右手と額のしるしが続いていくだけだからだ。明日がデジタル・タトゥー化されていく進み行き
進み行きて大江の文末によくある
大江
人間が戦いを終わらせることができないのはなぜだと思いますか
藤棚の傍には必ずホークウィンドのジャケみたいなmumble beeがいるが怖くない

山越のsikuruスリランカでゲロおいしかった今日はホタルイカ
Apr 21
クラクラアブリール
足を洗ってカウンターだけのサイフォンを始めて、おいこれなんだっけママ、都忘れよ。

年号や数え年の共通点はゼロを1と見做すことである
令和ゼロ年の不在は不在(ゼロ天皇)自体を積極的に規定するものと見做される
それは既存の天皇に含まれない全ての天皇を一つの年号として含む
これはすなわち天皇としての浩宮、天皇全体の一部ではない部分としての浩宮part of no partなのである
だから数え年の人生は、人間が絵の一部ではなく、絵についた染みであることを正しく示しているのだ
いや僕も最初はアブリルラヴィーンか思てんけどな、オカンが言うには、店長自ら炙ってくれるらしいんや
毎日がXデーです
ヒロシ
I wanna be your dogは淡々と歌わないと眈々とはならんとです
Apr 22
重層を使うことを思いついた時点で路地の鉢植え氏は負けていた
逃げる場所は非決定ではなく逃げる場所がないという決定だからである
リベラル左派の分断こそがパンデミックの目的であった
そしてそれはこういうことかと接種してみせる魂が逆説的に命の芳名録にカウントされたのだ
Le digo a cada uno de ustedes que no piense de sí mismo más de lo que debe pensar
ポンコピピンはびっくらポンコピピンに変えたらいいと思う
今来たがってるのは城戸君、ゑでぃさんたちとかだけど投げ銭以上の援助が出来ないのがパンデミック以前みたいで
THOSE WERE THE DAYS MY FRIEND
https://youtu.be/2KODZtjOIPg
Había paz en la región.
近い戦争と遠い戦争がある。きみたちは戦争の音、戦争の知らせを聞く。
https://6105.teacup.com/iaf/bbs/5615
Apr 24
白い、薄汚れたとまではいかないけれどトドのように大きい
千羽鶴を折る時間を生贄にする
理性
ロギコス
合理的な
聡明な
言語化された原則の、文法を理解する
規則を探すな
無差別攻撃を避けるためにプロにやらせろという一理は宇田丸の押井新作への批判を少しばかりは、虚無の鏡餅の上に乗ってるお飾り付けた蜜柑くらいの一理という意味で、ずらしますかね
Me alegra recibir insultos
Apr 25
Sigamos amándonos unos a otros
コブラで落ち着くのはエンタメとして良いがじゃ参加ウグライナフェンの戦果どうなったんだと諦めの地盤沈下
八重までも散って呑み込む茶漬哉
#poetry #rock musician
雨になる朝
川沿いを河口まで歩いた
遠い国で
戦争は続いている
どんよりとした空の
下には
流浪する人たちがいる
わたしは
川沿いを歩いていった
売ってしまったけど
かつて
小舟を持っていた
小さな
エンジンを積んで
青暗い
朝の海に出ていった
凪いだ海のおもての
水面の
ゆらゆらと揺れて朝陽に輝いた
魚は
釣れなかった
釣れたこともあった
なにを釣ろうとしていたのかな
糸を垂らしていたな
午後には風がでて飛沫をあげて海は波立つだろう
* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”自動描写” より
#poetry #no poetry,no life
運ばれてきた
2台のワゴンのプラスチックごし
バクバクッ
真っ赤な手足を火のように投げ出して暴れる者
白い布に包まれたままヒクヒク微動している者
こかずとんだ
コミヤミヤだ
昨日妻ミヤミヤから帝王切開の日程が早まって明日になった、と電話があった
コロナ禍だから立ち会えない
但し双子の赤ちゃんには新生児保育室に運ぶ途中の廊下で会える
そわそわ待機していたぼく、かずとん
呼び出されて
ばったり、その瞬間
バクバクッ
嬉しい、とかない
かわいい、とかない
生命体だ
しわくちゃに
白い皮脂震わせて
息してる
見つめて心臓バクバクッ痛くなる
「写真撮っていいですか」「ちょっとならいいですよ」
透明プラスチックに光が乱反射
不格好な写真が撮れた
「ではエレベーター来ましたのでまた後ほど」
慌ただしく運ばれていき
バクバクッ
バクバクッ
痛いッ
ぼくも息してるじゃないか
ぼくとぼくから分離した小さな者たち
薄暗い廊下でばったり邂逅した計3体
揃いも揃って
息してた
名物カメラマンの写真の撮り方は、まず顔から始まって、次にボディ、次に全身、最後にまた顔のアップに戻る、というものだった。12/1
展覧会その1では1000円の入場料を取り、その2では無料どころか茶菓までサービスしていたので、10年も経つと両者の経営には大きな格差が生じたようだった。12/2
おらっちはひそかにA子を贔屓にしているのだが、それを他人には知られず、当の本人だけに分かるように伝えるにはどうすればよいか、あれこれ迷っていた。12/4
おらっちは源氏の末裔なので、もしも敵に襲われて捕虜になっても恥ずかしくないような由緒ある衣装を身に纏っていなければならないと思うのだが、それがどういう格好なのかさっぱり分からないのよ。12/6
「酒を飲めないこの子たちは、アッパークラスのバーで修行させたらええ酒飲みになると思うがな」と、さる酔っ払いがいうたずら。12/7
死にかけの痩身の老人の分際で、まだ名前もついていない難病中の難病を、3つも抱えこんでしまったもんだから、湘南鎌倉病院に行っても医者が喜ぶばかりで、いっこうに治してくれないので、雨の水曜日を自宅で静養することに決めた。12/8
私は、東西南北を行き来しながら、すべての営為の虚しさを、嫌というほど思い知らされていた。12/9
バーンスタインの私は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の劇伴だけをつとめて、ニールセンの交響曲なんかは、三流指揮者の棒に任せて帰宅した。12/10
整形外科の先生が「その後どうですか?」と聞くので、「相変わらず痛いです」と答えると、「じゃあ注射でもしてみますか」と言うので、「痛いのは嫌ですよ」と言うと、「ちょっとピリッとするだけですよ」と言うので、「ではお願いします」と言うて、注射してもらったら、やっぱり痛いのだった。12/11
その夫婦の生甲斐といえば、毎月1度だけ、それなりのレストランで、ランチを楽しむこと、だけだった。12/12
敵は、額に黒いサングラスをかけているので、それが、太陽光線で光る瞬間に射撃すれば、射斃せることが、分かった。12/13
今月のおすすめふぁつちょんは、レディスの白に対して、メンズはグレイだったが、その理由については、カラリストのイチカワさんにしか分からなかった。12/14
おらっちは、さっきまで、楽しく酔いしれていた、壮大な夢の尻尾が、大魚の尻尾のように、ゆらゆら、消え去っていくのを、呆然と眺めていた。12/15
その有名な素材講座では、2人の講師がかわるがわる教壇に立つのだが、今回の講師をよく見ると、あまりにも昔の恋人に似ていたので、ちと驚いた。12/16
長い間コロナや交通事故のせいで外出を避けてきたのだが、気がつけばぶらりと電車に乗って京都みたいな町にやって来て、あちこちをほっつき歩いているのだが、誰一人いない。12/17
最後に登場したのは不思議な荷物で、こいつに呪文を唱えると、たちまち容量3倍の大きさの3Dメデイアに膨れ上がり、わいらあ4人組は、その巨大な段ボールに、なんもかんも詰め込んで、上京したのよ。12/18
この白いアフリカの地で、褐色の少年たちにとり囲まれたおらっちだったが、ナイフを握った彼らの右手を掴み、次々に左手のナイフで彼奴らの腋の下を刺していったので、おらっちの周りは、死体がゴロゴロだった。12/19
下半身に茶色い液体が入った、無数の小さいビニール袋がぶら下がっていて、おらっちは、そいつを、2時間おきトイレに捨てに行かねばならんかったのよ。12/20
東京発の最終の新幹線こだまの窓枠にぶら下がって、食堂車にいる知り合いと談笑していたら、いつのまにか発車してしまっった。「さあ大変、どうしよう?」と思うのだが、こうしていても振り落とされはしないので、このままで続けることにしたのら。12/21
3匹の仔豚が行方不明になったので、FM横浜のアオキアナウンサーが心配して、何度も何度も放送で呼び掛けているが、まだ見つからないようだ。12/22
「おめえ、たまにはジョークの一つも言うてみろよ」、と強要されたので、必死に考えた末に「殿下の電話」と言うたのだが、誰も笑ってくれなかったずら。12/23
真夜中に誰かが家族で寝ている4畳半に忍び込んできて、幼い息子をさらっていこうとするので、必死に阻止しているおらっちなのであったあ。12/24
その病院では最強コロナで殆どの患者が死亡してしまい、金子院長は、唯一生存しているリヨ子に望みを託していたのだが、リヨ子は「わたし、一人は堪えられませんので」と言うて、勝手に退院してしもうたずら。12/25
これは昇進を続ける2人のエリート・ゴルファーの内緒の話だが、乳首島の5万羽の貴重種が、いつのまにやら全滅していたそうだ。12/26
腱板損傷で「痛い、痛い」と喚いていたら、「おらっち理学部の学生ずら」と自称する若者が、アルツ25mgを注射して痛みを鎮めてくれたのよ。12/27
今まで通っていた2つの病院に信を置けなくなったので、おらっちは急遽第3の病院を捜し始めたが、選ぶ基準が揺らいできたので、大層難しい作業になってきた。12/28
超多忙で超売れっ子のバリトン歌手のおらっちは、モザールのオペラのアリアなんか全部頭に入っているので、全然練習なんかしないで本番に臨んだのだが、いざ伴奏が始まると、どこから入っていいのか分からず、赤っ恥をかいてしまった。12/29
あの有名なタナカ一家が、展覧会の会場にやってきたので、主催者である息子は、少しばかり緊張しているようだった。12/30
おらっちはパーティで与太話をしていた貴族から、その街を発展させる計画についての感想と協力を求められたので、すぐさま断ったのだが、それは、そんな難しいことなんか、自分で出来っこないと分かっていたからだった。1/1
私は大阪城を大掃除していたおばはんの実態が、掃除婦ではなく、腕利きの印刷屋であると知ったので、新しい1万円札が出回る前に、偽札作りに協力してほいいと頼んだが、あっさり断られてしまったのよ。1/2
歯が痛い、歯が痛いと七転八倒する息子を見ていると、可哀想になって来て、そうだ日々を無為に過ごしている父親の自分が替わってやろう、と思いついたのだが、どうすれば入れ替わることが出来るのか分からなくて、往生している。1/3
正月になっても、朝から晩まで町内をほっつきまわっている夫婦がいるので、「どうしたの?」と訊ねると「暮れからうちの愛猫が行方不明なので、正月どころではないんです」と答えてから、またあちこち探し続けるのだった。1/4
犬派と猫派のふた手に別れて新春大討論会が開かれたのだが、両者相譲らず、まるで革マルと中核派のように武装して、時ならぬ大ゲバルト大会が始まった。1/5
「雨が降っても、雪が降っても、槍が降っても、おらっちは断固として前進するぞ!」と息巻いていたら、本当に雨と雪と槍が降ってきたので、ちと驚いている。1/6
若輩ながら販売チーフに抜擢されたおらっちは、年長の先輩たちに天文学的な売り上げノルマを課したので、たちまち総スカンを喰らい、その会社から追放されちまった。1/7
ここは陸軍の散髪屋なのだが、軍隊刈りのショートカットにあこがれる大勢の市民が、門前市をなして詰めかけている。1/8
明日からダム工事が始まって、村は湖底に沈められてしまうので、おらっちたちは、三々五々涙をぬぐって、住み慣れた襤褸家を後にした。1/9
生来おっちょこちょいのおらっちは、よせばいいのに両組の出入りの最先端に飛び出したので、あっというまに全身をなますのように切り刻まれて、儚いいのちを散らせてしまった。1/10
「「フィガロの結婚」を聴く前に、お互いの言い分を言いあって手打ちにしようぜ」と、敵の親分が提案したのだが、その時遅く、かの時早く、オペラの序曲が始まってしまった。1/11
その戦士は、女子供には傷一つつけないで、敵の男どもを皆殺しにしていくのだった。1/12
横浜市では毎年スポーツ大会を開いているので、それをそのまま毎年五輪に昇格することにしたそうだ。1/13
リュウホウ部長が、「企画のヒサミツ課長と相談して、新ブランドのPR案を考えてくれ」というので、おらっちは急遽、中目黒に出向いたのよ。1/14
木造の古いモナコホテルには、無数の貧民たちが住んでいるのだが、ここに30年以上住み続けると、その部屋を無料で払い下げてくれるので、とても人気があった。1/15
われひとは、何故か人世に失敗したのではないか、という疑いにとらわれて、城門の傍らで長く立ちずさんでいた。1/16
街中を歩いていたら「相撲取りになりませんか?」と勧誘されたのだが、人から勧誘されたのは生まれて初めてなので、「相撲取りになってみようか? どうしよう?」と、ずっと悩んでいるのよ。1/17
ゲーム カナリチ エニンシア カーターなどになって叩く僕。1/18
ボク、紅衛兵用の新品マスクを付けて「気をつけー!」で 「エライ、エライ」と、誉めてもらった。1/19
おらっちは新入社員なので、先輩たちに「おはようございます」と挨拶すると、「おい、そういう月並みの挨拶をしていると、すぐに社長から首にされるぞ」と警告された。1/20
八幡様の二ノ鳥居の傍で休んでいると、左側に自転車に跨ったセイさん、右側には仲間と連れだって歩いているセイさんがやってきたので、おらっちはどっちに声を掛けようかとしばらく考え込んでいた。1/21
そのマラソンレースは、ちと風変わりで、走者は、1キロ走る毎にシェークスピアの芝居のせりふ、例えば「生きるべきか、死ぬべきか」を喋らなければならないのだった。1/22
毎年大学を留年ばかりしているので、今年こそは卒業するぞ、と心に誓って久しぶりに登校したが、自分に必要な単位と講座がさっぱり分からないので、ただただキャンパスの中をうろうろしているのよ。1/23
新しいCMの製作を依頼されて、まずその企画内容の予告編を作らなければならないのだが、じつはおらっちビデオの撮影はやれても編集作業なんてやったこともないので、ひどく消耗しているとこ。1/24
どういう風の吹き回しか、おらっちはリーマンになっている。総務から机と椅子や文房具一式が届けられたので、とりあえず座ってあたりを見回してみると、なんだか嬉しくてたまらぬ。こんなに仕事がしたくなったのは、じつに生まれて初めてのことである。1/25
しかしここはどういう組織で、どういう仕事をすればいいのだろう。そもそもこの会社の名前はなにで、どういう職種に属するのだろう?誰かに聞いてみようと思うのだが、みな忙しそうに立ち働いているので聞けない。そうこうするうちにお昼になったので、弁当を使ってお茶を飲んだ。1/26
眠くなったので昼寝をしようかと思ったのだが、ふと午後いちで試写会があったことを思い出し、急いで会社を出てから地下鉄に乗って銀座で降りて試写会場に入ったら、顔馴染みのキサラギさんがいたので、ちょっと会釈して安楽椅子に座って映画鑑賞しているうちに眠ってしまった。1/27
しまった、これは申し訳ないことをしてしまった。試写会で見る映画は9割がたは詰まらない映画なのだが、今日のはそれほど酷い映画ではないので、ちゃんと終わりまでみようと思っていたのに、寝てしまった。これで感想文を頼まれても書けない。困った、困った。1/28
どうしたものかと考えてみたら、さいわいまだ試写は数回あるので、また来ればいいやと思いついて外に出たら、もう誰もいない。みんな3時半からの試写に行ってしまったのだ。おらっちも負けてなるものか、と銀座の別会場の試写会に駆けつけて、今度は居眠りしないで最後までしっかり見届けた。1/29
終って外に出たらもう5時半だ。これで会社に戻っても仕方がない。6時からはクロコダイルでロック、渋公でパンク、武道館では松田聖子のコンサートがあるので、急がなくっ茶。明日から午前中に会社の仕事をして、午後からは映画とお音楽にしようと決めた。1/30
ふぁっちょんライターのおらっちが久しぶりに巴里に行ったら、今年の秋冬のトレンドガ「ステルス・ろまんちっく」から「極超レアル」に180度大転換している、という話だったので、こないだアンアンに書いたお洒落速報を書き直そうと連絡したのだが、もうデリバリー済だった。1/31
三連沼に棲むオオウナギが、村人たちを襲ったので、おらっちは、長靴で沼の中に入っていって、オオウナギの大きな顔を、ズタズタに引き裂いたので、彼奴は、村役場のビルのエスカレーターに乗って、逃亡したようだ。2/1
オルハインと少年は、昨夜から一緒に過ごしていたんだが、面倒くさいので、昼間も一緒に過ごすことになってしまった。2/2
久し振りに銀座電通主催の新年会に出たのだが、相変わらず専務のフルカワちゃんが三色ホースを持ち出して、「鼠退治だあ!」と喚きながら、3色の汚水を撒き散らすので、フロアはたちまち水浸しになってしまった。2/2
昔むかし、田舎の森の中の巨大な岩壁の下に、広大な空間が発見されたが、そこは、とても音響効果が優れていることが、分かった。2/3
そして今、そこは町内で唯一、というか全国随一のコンサートホールとして生まれ変わり、第一発見者であるおらっちは、そのホールの支配人に選ばれたので、ブレンデルとマリナー指揮アカデミ―室内管を呼んで、モザールの協奏曲全集を再録音したのよ。2/4
コンミューン最後の日に、同志たちが一人また一人と墓地で処刑される姿を悲涙を呑みつつ胸に畳んでから、半年間寝床を共にした男女(♂♀)と別れ、深い森の中を一晩中歩き続けて露でぐっしょり濡れた体で村に入ると、村人たちが朝餉を準備する物音に交じってヤマガラの囀りが聞こえてきたので、なにやら生きる力が湧いてきたようだった。2/5
若い頃、戯れに天井からぶら下った巨大な三角形を燃やして、危うく、大火事にしてしまうところだったずら。2/6
どこかで鳴くアブラゼミの声が響き渡る両国駅。そこからは、遠く白い三角形をした富士山の山頂が望まれたが、おらっちは、その長い長いプラットフォームの反対側のその先を、どんどんどんどん進んで行った。2/7
おらっちはなぜだかお大尽だったので、立派な神輿のような乗り物にのせられ、4人の苦力に担がれて急な坂を登り、カブトムシやクワガタが群がっている栗林を過ぎて、高い高い山の中に入っていく。
おらっちは病気なのか、それともどこかを怪我しているのか? 胸に手を当てて考えてみたがさっぱり分からない。山のてっぺんを過ぎた神輿は、今度は急なヒヨドリ坂をいっさんに下っていくようだ。
山の麓には小さな村があり、村の真ん中の道に沿って一軒の古本屋があり、物珍しいので神輿から降りて中に這入ってみると、中世の古文書と江戸時代の黄表紙ばかりが整然と並んでいるので、店主に挨拶もしないで飛び出すと、完全武装した数人の米軍の兵士がぶらぶら歩いていた。2/7
眼前に宇宙戦争が迫ってきた。宇宙人の地球攻撃には各家庭で対応して下さいと阿呆莫迦政府がいう。「地下に潜ったら」と町内会長がいうので、おらっちはトラクター借りてきて、地面に防空壕を掘り、一家でその中に閉じこもることにしたのよ。2/8
教会が作っているカボチャやキュウリやナス、トマトを提供することになり、牧師夫人が「どうご自由にお持ちください」というた時には、モジモジしていた貧民たちだったが、彼女が姿を消すや否や、我勝ちに獲物に殺到し、獰猛な男どもは、女子供が持つ野菜を無理矢理ひったくるのだった。2/9
おらっち、殺人公社の専属スナイパーなんやけど、「殺傷対象が反社会的存在なら、勝手に判断して殺してもよろしい」と上司がいうんやけど、「自由に殺してもええ」と言われれば言われるほど、引き金を引けんようになっていくんや。2/10
北欧某国のデザイナーⅩ氏は、デザイン後進国のこの国で、ふぁっちょんから車、文房具、ビルジングまで、デザインと名のつくもののすべてを、超高値で引きうけて、荒稼ぎして来たのだが、最近ようやくメッキと化けの皮が、剥がれてきたようだ。2/11
韓国の山奥の珍しい景色をビシバシ写真に撮っていると、突然画面の右から左に、長い葬列が延びてきた。きっと、どこかの貴人の葬式なのだろう。2/12
キタカマのケンチョウジの北側は低山なのだが、なぜだか池の向こうが砂浜になり、そこからいきなり海になっている。おらっちはその海を見渡す厳島神社もどきの「立って半畳み、寝て1畳」の陋屋に住んでいたのだが、いつのまにか男好きのする女が棲みついてしまった。2/13
よく見ればまだ若い女なので、さぞや夜には、性欲的オーラを寝屋に発散しているのだろうが、なんせこちとらは、生まれながらのインポテンツなので、彼女がおらっちに跨って挑発しても、隆起の兆しはなかったのだが、最近は「もしかすると」という感じになってきたかも。2/13
会社の新しい上司が、社長のドラ息子になったのだが、こいつが嫌な野郎で、もうイヤデイヤデ仕方がない。出来るだけ話をしないよう、顔も見ないようにしているのだがあ。2/14
椿姫が亡くなったので、おらっちは彼女の遺言どおり、広大な庭の真ん中に本の紅白の椿の木を植えたのだが、今ではそれが亭々と茂る大樹となって、大空に聳え立っている。2/15
イシガキ医師は余の主治医であり、なおかつガンで余命半年の宣告を自らに下しながらも、10時間に及んだ余の右肩ガン手術を成功させ、予言どおり半年後に命終された。216
映画のラストで、主人公を海底深く沈めてしまうか否かについて激しく迷った監督のおらっちだったが、ここで美貌のヒロインを殺してしまえば、本作の印象は強化されても、続編の依頼が来なくなってしまうことを懼れて、やっぱ生かすことにしちゃったのよ。2/17
おらっちはケータイで、その都度「しんたんソフト」を駆使して、要所要所を微分積分したが、しばらくすると、その後にはなんにも残っていなかった。2/18
ここは大英博物館の地下だと思うのだが、なんとだだっ広い墓場に似たうすら寒い空間なんだろう。おらっちの仕事は、ここをなんとか無理やりにでも「活性化」させることなんだけど、ちょっと難しいなあ。2/19
わいらあワイラー監督の戦争映画を手伝っているのだが、彼は連合軍内部の因果応報を描くシーンを、みなカットしてしまったので、ついつい疑惑の暗雲が湧いてきたのよ。2/20
夜中にずきずき頭が痛むのだが、これが一体夢の中の頭痛なのか、それとも実際の頭痛なのかが分からず、朝になれば分かるだろう、と思っていたのだが、起きてみると頭痛はなかったずら。2/21
由緒ある大寺の床下で古布団にくるまって寝ていたら、真夜中に住職がやって来て「何か困っていることがあるのか?」と聞くので、「最近前向きに生きられないのです」と答えると、「そういう時には家ごと歩けばいいのじゃ」という。気がつけばおらっちは、大寺の地面毎前進していた。2/22
おらっちは新聞社に入って、あこがれの記者になったのだが、上司がいう公正公平な記事というやつが、何年経っても書けないので、擱筆、退職して郷里に帰ったのよ。2/23
最難関の洋裁学校を首席で卒業するために、私は毎朝早起きして、イの一番にミシンを磨き、イの一番に仕立てに必要な着分の生地を、全生徒の机の上に並べたのだった。2/24
「でもあんた、怪我はしたけど、死ななくてほんとに良かった。持って生まれた強運の星のお陰よ。ノーブルなサラブレッドはいつまでも走り続けるのよ」、とか言われると、おらっちも、だんだんその気になってくるのだった。2/24
あったかい宮殿でふんぞり返って「キエフを目指せ!ゼレンスキーの首を獲れ!」、などど矢継ぎ早に命令を下されたロシア軍兵士たちは、極寒の地で阿呆らしくなり、全員が戦車や戦闘機から降りて、投降したのよ。2/24
コロナ患者対応で、きりきり舞い。疲労困憊して、、金欠病の町医者たちに、おらっちが、金の延棒を呉れてやると、彼らは、たちまち、らんらんと目を輝かせ、勇気百倍、燃える闘魂、元気溌剌、になるのだった。2/25
そこであたいがしゃしゃり出て、「さあさ修学旅行帰りの皆さん、長旅でさぞやお疲れでしょう。でもこの我が家の特製麦茶を一口飲めば、ああら不思議、疲れなんてどっかに吹き飛んでしまう。さあ、1口いかが?」と2/26
知恩院前のバスに向かって呼びかけると、超ミニスカートの女生徒が、「あたしの目尻の皺を見て、まるで郷里のお母さんだと思って、一斉に駆け寄って来て、原価ほとんど無料の番茶が、バンバン売れちゃうの」と、商売の秘訣を語ってくれたずら。2/27
とうとう戦争になった。時代物の旧型長谷川戦車を駆使したおらっちは、3台の敵戦車を破壊したけれど、あっと言う間に殲滅されちゃったずら。2/28