「道程」の引用されるclimate futurismの光景

 

工藤冬里

 
 

建物がごちゃごちゃと 校歌を唄っている
バッハにとってのフランスはVOGUEのようだった?
準備しなければならない即興は身に余る
地球が禁煙して
随分経つ
参道は俯いて
携帯を見る人々の
クーポン用アプリの檻
バッハにとってイタリアは
Lanciaみたいなもの?
不死の主題は同じでも
山が、木が、代わりになっている?
コロニーの歌を唄うとでも?
集合の重なりが青くなっていて
そこに経済ITアナリストの正当性のみが簾のように呼んでいる
命のクーポンを前もってゲットしようと
人々は俯く
手指から首に
首から頭上に
疲労は二酸化炭素のように上っていく
ああ自然よ
父よ
ぼくの前に道はあるが青い
ぼくの後ろに道はできない

 

 

 

#poetry #rock musician

花の起源

 

村岡由梨

 
 

2007年に生まれた次女に『花』と名付けたのは、
「平和」を想起させる名前にしたかったから。
『花』の漢字を分解すると、
「艹」「イ」「ヒ」となる。
「艹」は植物を、「イ」は生きている人を、「ヒ」は死んだ人を表す。
生きている人と死んだ人の上に、草花が生い茂っている。
その光景が何だかすごく自然で平和に思えて、
娘を『花』と名付けたのだった。

今、世界は平和ですか。
世界中の人々は今、まるで
空っぽの鳥かごを見て呆然としているみたいだ。
その鳥かごにはきっと、
愛とか、慈しみとか
大切で温かな生き物が入っていたはずなのに、
それがどんなものだったのか、世界は思い出せずにいる。
盗まれたのか、殺されたのか、
それを失ったことがただ悲しくて
ドクン ゴボッと ナプキンに落ちてくる
経血みたいに揺れて、
徐々にスピードを上げて汚れていくみたい。

「ママ、ここにあるナイフで手を切ったら、どうなるの?」
「すごく痛いと思うよ。血も出るだろうし。」
「ふーん」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、別に。」

いや、別に。って
何て悲しい言葉だろう。
もっと私を信じてほしい。
心を閉ざさないでほしい。
自分勝手な私がそう言う度に
君は私から遠ざかっていく。

この世界の綺麗事の一切を脱ぎ捨てて、
使い物にならない自分をビリビリに破り捨てて、
手首をナイフで切り刻むように
君の内側に、真っ赤な言葉を刻みたい。

私が死んだら、そこらへんにある原っぱに
適当に転がしておいていいよ。
ぞんざいに扱っていい。
時々思い出してくれるだけでいい。
そして偶に生きている美しい君がやってきて、
ウジのわいた私の傍に寝っ転がってくれたなら、
それが私たちの「平和」なのかもね。なのかな。
ほったらかしにして、最後に残るものが
きっと大切にしなくてはならないもの。
骨片とか。
思い出とか。

ただそれだけの、少し拗ねて書いてみたお話。

素直になれない、ただそれだけの話。
きれいな思い出の上に、
いつかきれいな花が咲くことを願って。

 

 

 

Did they all embark on this ship?
彼らは全員この船に乗りましたか。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning too
open the window

looking at the west mountains

this morning too
looking at the numbers in the morning newspaper

“umaretekurutate
konndohakotaniwariyanogotobakaride
kurusimaanayouniumaretekuru “**

“Occasional words” this morning

Kiyokazu Washida
he was quoting “Eternal Morning” ***

368,640 people (+2764)
5193 people (+73)
99,203,600 people (+447,386 people)
2,129,597 people (+8551 people) ****

one side of the newspaper morning edition
looking at the numbers

beyond that
there are people

this morning too
the west mountains are standing

in the blue sky
standing

Did they all embark on this ship *

 
 

今朝も
窓を開けて

西の山を見てる

今朝も
朝刊の

数値を見ている

“うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあようにうまれてくる” **

今朝の”折々のことば”

鷲田清一さんが
“永訣の朝”を引用していた ***

36万8640人(+2764)
5193人(+73)
9920万3600人(+44万7386人)
212万9597人(+8551人) ****

朝刊の
一面の

数値を見ている

その向こうに
ヒトビトがいる

今朝も
西の山は佇っている

青空の
下に

佇ってる

彼らは全員この船に乗りましたか *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.
** 宮沢賢治「永訣の朝」より引用
*** 朝日新聞「折々のことば」のこと
**** 朝日新聞 2021年1月26日朝刊 一面「新型コロナ」の国内・世界における感染者数・死者数・増加数より引用しました

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ソイラテ◀︎

 

工藤冬里

 
 

国を人格で語り始める▶︎アナリストに取り込まれるにはソイラテの難しさが伴う▶︎スタバではジョジョに温め苦味系で▶︎東京新聞大波小波をやりおおせている▶︎分断風見鶏と化し▶︎酸味のシナ海で固まった▶︎蛋白

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注文すると
文春片手にオジサンとなった一世風靡セピアが後ろでソイやソイやと囃し立てる

そう言えば
寂年層も取り込んだ
二郎のギルティ
デモを眠らせ
仮小屋の屋根にも
雪はふりつむ

露国に脱鉄されてゆく土
グリーン車のWILLに骨抜きにされていく親父ギャングたち

広告 5、4、3、2、1 広告をスキップする

「鉄も粘土も共に砕かれ
籾殻のように跡形もなく」
夏から夏へ
の裏に
冬のソイラテの分離が進行侵攻信仰死たのだ

今後もこのようなはな死を死てゆきますのでご興味のある方はチャンネル登録をプチっとお願いします

 

 

 

#poetry #rock musician

Do it yourself, and that at once.
自分でやりなさい、しかもいますぐに。 *

 

さとう三千魚

 
 

asphalt road

it was shining
this morning

awake
when I open the window

the top of the west mountains was covered with white clouds

in the middle of the night
it’s raining

in the morning
did the rain stop?

it was shining

even now
the top of the west mountains is hidden in the clouds

covered in clouds
the appearance of the mountainside is appearing

be there
it’s still there

the words are standing there

Do it yourself, and that at once *

 
 

アスファルトは

光ってた
今朝

目覚めて
窓を開けると

西の山の頂きは白い雲に覆われていた

夜半に
雨は降り

朝には
雨はやんだのか

光っていた

いまも
西の山の頂きは雲に隠れている

雲に覆われて
山の中腹の姿が現れている

そこにいる
そこにいまもいる

ことばは佇んでいる

自分でやりなさい、しかもいますぐに *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

the Booths

 

工藤冬里

 
 

カーペットをはがしてむきだしになった畳は少し砂っぽいがそれほど焼けておらず猫の爪からも守られていて、墓川は、引っ越し気分のようなものが部屋に満ちるのを感じた。

二章 返品
ニトリに色違いだったカーペットを持っていく。それは受理され、更に濃い茶色のものに変更される。今のイエがブースだとすると、ブースにカーペットなど要らない筈だが、ブースのフェスの規定が書かれたのはブースで移動していたまさにその時なのであり、それは将来のイエで、ブース暮らしを思い出すためなのだった。今を思い出すための記述としてのカーペットなのだと思い至ると、墓川はフェスの移動のような土ぼこりが舞うのを感じるのだった。

 

 

 

#poetry #rock musician

I saw five airplanes flying away like so many birds.
飛行機5機がさながら鳥のように飛び去るのを見た。 *

 

さとう三千魚

 
 

the sound of the horn
I heard

intermittently
I heard

security guards may be guiding trucks during pier repair work on a nearby highway

the sky is clear

in the living room
moco says to play with the little bird pippi

when you release the little bird’s pippi
moco holds a small bird in a short run

moco
moco

let’s listen to Nina Simone

“you’d be so nice to come home to”

let’s listen

cessna is flying

in the blue sky
it’s flying

from the sky
there is a flying sound

I saw five airplanes flying away like so many birds *

 
 

警笛の
音が

聴こえた

断続して
聴こえた

近くの高速道路の橋脚改修工事で警備員がトラックを誘導しているのだろう

空は晴れ渡っている

居間で
モコは小鳥のピッピで遊ぼうと言う

小鳥のピッピを放ってあげると
モコは小走りに小鳥を咥えてくる

モコ
モコ

ニーナ・シモンを聴こう

“you’d be so nice to come home to”

を聴こう

セスナが飛んでいるんだろう

青空に
飛んでいるんだろう

空から
飛行音がする

飛行機5機がさながら鳥のように飛び去るのを見た *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

「現実にもかなり慣れてきた」𝗟𝗔𝗨𝗦𝗕𝗨𝗕

 

工藤冬里

 
 

昭和新山の麓、
海はいっしゅん静かになった
ゴジラが現れる前のように
水中から言葉の枝が張り巡らされていたが
それは迷路を試そうとする電流のようだった
ヘルメットを被り、
転倒せよ
救急車は間もなくやってくる
そのドップラーにライムを乗せて
きみが時間になれ

 

 

 

#poetry #rock musician

He went on with his reading.
彼は読書を続けた。 *

 

さとう三千魚

 
 

Bresson Photobook

where
did it go

that
with an aunt who dazzledly narrowed her eyelids
a moment of her face

took
Bresson

where did they go

nakameguro’s “cow”
at the bookstore

bought

there was a river nearby

He went on with his reading *

 
 

ブレッソンの写真集

どこに
いって

しまったのか

あの
眩しげに瞼を細くした

おばさんと
おばさんの顔の一瞬を

撮った
ブレッソン

どこにいってしまったのかな

中目黒の”牛”という名の
本屋で

買った

近くに
川が流れていた

彼は読書を続けた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

訪問看護師さんの 木暮さん(自由よ!)

 

今井義行

 
 

クリスマスの夜 午後10時
訪問看護師さんの 木暮さんが やってきた

──おゝ いらっしゃい!!

20代半ば位 髪をゴムで束ねて ひっつめ髪で 化粧っ気は無し
黒いズボンの 出で立ちで 何て言うか 女性性を脇に置いているようすだ(ゴメン!)

──おゝ 待ってましたッ!!

「こんばんは お加減は いかがですか?」
「向精神薬のパキシルを 3ヶ月間服用してきて ようやく 状態が安定してきました」

あゝ 木暮さん もっと女性性を楽しんでもいいんじゃないかなあ なんて余計なおせっかいか
パキシルは 切れ味鋭い薬品で 効果絶大な薬品なのだけど 副作用には 性機能を失わせる という事がある

わたしも 例に漏れず すっかり性欲を失って 男性性の外に出て
初めは 結構 虚しかったけれど
それにも だんだん慣れていって 今度は
どんどん ラクに なっていったのだった

57歳の今 あっと言う間に 迎えるだろう
還暦が 案外 愉しみにも なっていったのだ

──性欲が無いって 良いじゃない!!

──どうせなら 髭も 生えてこなければ 良いのに ね・・・

「最近は どのようにして 過ごされていますか?」
「この部屋は 日当りが悪くて とても寒いので 在宅している時は ほとんど ベッドの中にいて 過ごしています」
「昼間も 眠っているのですか? 昼夜逆転は 良くないですよ」
「眠ってはいません ぼんやりしていたり くだらない事を あれこれ考えていたり 昨日は 多目的トイレで わいせつ行為をした 芸人さんの事を 考えていました」
「・・・わたし あの芸人さん すっかり バッシングされて ちょっと 可哀そうだななんて 思ったりも してるんですよ」
「・・・どうしてですか?」
「だって 多目的なんですから 何したって 良いじゃないですか?」

「そういう もの ですかね」

「わたし ああいう シチュエーションじゃないと 燃え上がれない人たちって おおぜい いると思うんですよ
日本中にも 世界中にも──」

窓の外には しろい外灯が チラチラしている あゝ 今日は クリスマスの 夜なんだ

「芸人さんで たまたま バレちゃったから ああいう騒動に なったんでしょうけど クリスマスの夜の 今この時にも 似たような事は 行われていると思いますよ」

(あゝ そういう 考え方も あるかなあ)

──性欲が無いって 良い事じゃない
なんだか ややこしくなくて 良いもんだ

「人間だもの※ って事だと思います!」

「でも アレを イチローさんが やってしまったら もう 干されるどころの 話じゃないですね・・・?」

「国民栄誉賞を 何度も辞退して プロ野球の監督になる事も 眼中になくって 高校球児たちに 一生懸命 指導している レジェンド中の レジェンド・・・ そのイチローさんが そんな事したら もう 国外に 亡命するしか ないかもしれません ねえ」
「イチローだったら 亡命生活へっちゃら だと思いますよ 世界のイチローですからね
アフリカの子供たちに 野球教えてるかもしれませんよ」

「あはは・・・!!」
「あはは・・・!!」

「それはそうと これから 血圧を 測定しなければなりません」

訪問看護師の 木暮さんが わたしの すぐ傍らにきて わたしの腕に 血圧測定器を 巻き付けていく

わたしの目の前に 木暮さんの 乳房が
迫ってくる が それは 木暮さんの「乳房」という「もの」が 迫ってくる というだけで 衝動的に 抱き寄せよう などという 気持ちには まったく ならない

小暮さんの「乳房」は いいなあ
女性性から 自由になって
「もの」になって
気楽にぶらっと揺れている
わたしの「ペニス」も
男性性から自由になってから 気楽だもんなあ

「上が 132 下が 84 問題ありません ね」
「あゝ 安心しました」

「それでは わたし そろそろ 失礼しますね 訪問看護時間は 30分きっかりと 決まっていますので」

小暮さんが 血圧測定器を かばんにしまった
小暮さんが 立ち上がって 玄関に向かった
小暮さんが ブーツを履いて わたしに言った

「それでは また 来週
あっ そうそう 挨拶を 忘れていました
メリークリスマス!!」

「はい 小暮さん メリークリスマス!!
また 来週 よろしくお願いします!!」

・・・・・・・・・

わたしには この世で 最も愛している人が
2人 います。けれど、ずっと プラトニックのままで、良いと 思っています。
人間だもの
人間だもの

 
 

※相田みつを氏の詩句より