一昨日の午後
ひかりに乗って帰ってきた
東京駅のホームで
猫を籠に入れた婦人が後ろに並んだ
覗き込むと
猫がひとりいた
滋賀に移住したのだと言った
猫が好きで
猫と暮らしてるのだと言った
猫は22歳なのだと言った
婦人は七糯子という煎餅をくれた
一昨日の午後
ひかりに乗って帰ってきた
東京駅のホームで
猫を籠に入れた婦人が後ろに並んだ
覗き込むと
猫がひとりいた
滋賀に移住したのだと言った
猫が好きで
猫と暮らしてるのだと言った
猫は22歳なのだと言った
婦人は七糯子という煎餅をくれた
あたまからかぶったおふとんは
ふたりのたいおんでみたされる
あったかくて
むしむしして
あっつい、と
つぶやいて あなたは
キッチンに水をのみにいきます
わたしは
ぱちっ、と目をあけます
あなたのいない
ベッドはさびしい
だから
かくれんぼしよう
くらやみのなかで
はだかのまんま
かけぶとんを
ひとがたに
ふくらませてから
クローゼットのかげにかくれます
くらやみのなかで
はだかのまんま
いきをひそめて まっています
くろい やみが
せぼね にそって
くつくつ あわだつから
よんでしまうのです
くろい やみが
ちぶさの あいだで
すうすう ながれおちるから
もとめてしまうのです
あなたは すぐに
わたしを見つけます
れすきゅー、します
はだかかくれんぼ
はだかかくれんぼ
まよなかの
れすきゅー、
わらって ふきだしたら
まけだよ
佐々木 眞
久しぶりに書棚を整理していたら、古いレコードが出てきました。
確かこれは私が1970年代の初めに、横浜の弘明寺の小さな楽器店で初めて買ったクラシックのレコードです。
当時フィリップスというレーベルの廉価版に「フォンタナ」という1枚1000円のシリーズがあり、私はその中から旧ソ連のピアニスト、スヴャストラフ・リヒテルが演奏するバッハとモーツァルトのピアノ協奏曲を選んだのでした。
オーケストラは、バッハはソビエト国立交響楽団、モーツァルトはソビエト国立フィルハーモニー管弦楽団、指揮はいずれも旧東ドイツ出身のクルト・ザンデルリンクという人でした。
生まれて初めて買ったLPを大事に抱え、急な坂を登り下りして。墓地を前にした狭いアパートに辿りつき、これも買ったばかりのステレオ・セットとのプレーヤーの上にレコードを乗せ、バッハのピアノ協奏曲第1番BWV1052を聞いた時の驚きは、いまも忘れることはできません。
この曲は、冒頭からいきなりピアノとオーケストラが全力で疾走するのですが、その悲愴な響きは私の心をまるごと鷲摑みにして、地獄に道連れにしていくようでした。
ああ、これがクラシックというもんか。なんて暗くて重々しいんだ。夢も希望もない音楽だなあ。でもこれは今の俺の気持ちにぴったりだなあ。
そう思いながらレコードをひっくり返して、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を聞くと、これがまた陰々滅滅たる序奏です。ようやくピアノが入って来ても、私の疲れた心はますます重苦しくなる。
なるほど「降れば土砂降り」がクラシックなのか。聞けば聴くほど悲しい憂鬱な気持ちになるなあ。でもでも、これは今の俺の気持ちにぴったりだなあ、と思えました。
いまでこそ分かりますが、偶然とはいえこの2曲は同じ二短調の曲でしたから、「元気はつらつ、さあいくぞ!」という活発で陽気な世界とは正反対の、死にたくなるような悲愴で厳粛な気分に満ち満ちていたのです。
当時私は2歳になった長男の脳に不治の障がいがあると知ってかなり落ち込んでいましたから、これはそんな退嬰的な気分にまさにぴったりのレコードだったに違いありません。
空白空白空白窓を開ければ墓場が見える。二短調協奏曲は死の歌ならずや? 蝶人
おふくろと
喧嘩して
居酒屋に
逃げ込む
となりの席から
常連のばあさんが
話しかけたり
自分のつまみを薦めたり
おせっかいな世話を焼く
オレは二歳児のように
ばあさんを投げ捨てる
ないない
親愛なる友人へ。
大学の入学式のあとの授業説明会があった講堂で初めて会ったときからもうすぐ丸8年がたつね。
たまたま座った席で隣にいたのはあなただった。
お互いきっと少し強ばったぎこちない顔をしてたんじゃなかったかな。
それからは卒業まで一緒に過ごしたよね。
ぐるぐると思い出すとなんだかあっという間だったなと感じるよ。
背丈や体型がわたしと同じくらいだったあなたとはなんだかすっと友達になれた。
初めの印象通り素直でどちらかというと控えめでだけれどもちゃんと芯があるそんな人。
か弱い印象のあなたが練習量の多い運動サークルに入ると聞いたときは驚いたけれど最後までやりとおしたあなたは本当に素晴らしい。
購買のあのお弁当が美味しかったなとぽつりとわたしが言った次の日、そのお弁当を食べてるあなたを見たときにはなんて純粋なんだと感じたよ。甘いものが好きだったね。わたしは苦手だったからそういうお店に一緒に行けなくてごめん。食の好みは結構合わなかったね。でもまた一緒に大学の食堂で各々好きなもの頼んでランチしたいね。授業中はよくうとうとしてたね。だけどきちんと単位をとっていくあなたが不思議だった。きっと家でちゃんと予習や復習をやってたんだろうなと今は思うよ。興味のない授業からは早々と退散したわたしと違ってちゃんと最後まで授業に出てたよね。ただ朝が弱かったあなたに変わって代筆してあげたこと絶対忘れないでね。通いだったわたしを台風や雪の日には泊めてくれてありがとう。きれいに清潔に整頓された部屋は女の子らしくていい香りがしたな。苦しかった卒業研究はお互い励まし合ったね。わたしのぶつぶつと言う不満や文句を嫌な顔せずにうんうんと聞いてくれたこといつまでも覚えてるよ。無事に卒業して初めて二人で卒業旅行で海外に行ったね。暑さに耐えながら香辛料のきいた食べ物食べたり、大きな動物園に行ったり、夜景の綺麗なところでお茶したり、最高の締め括りになったんじゃないかなと思っているよ。少し離れたところどうしで就職したわたしたちは大学卒業後はなかなか会えなくなったね。だけどたまに近況を報告したり、誕生日にはメッセージを送りあったりといつまでも繋がっていられることがこのうえなく嬉しいよ。ずっとずっと続くよね!?
そう思ってるのがわたしだけだったら少し悲しいけれど…笑
そして、今、きっと一番大切な人と人生を共にすることを決めたあなたに、ささやかだけどシンプルだけどこの言葉を心からおくります。
結婚、おめでとう。
親愛なる友人へ。
大学の入学式のあとの授業説明会があった講堂で初めて会ったときからもうすぐ丸8年がたつね。
たまたま座った席で隣にいたのはあなただった。
お互いきっと少し強ばったぎこちない顔をしてたんじゃなかったかな。
それからは卒業まで一緒に過ごしたよね。
ぐるぐると思い出すとなんだかあっという間だったなと感じるよ。
背丈や体型がわたしと同じくらいだったあなたとはなんだかすっと友達になれた。
初めの印象通り素直でどちらかというと控えめでだけれどもちゃんと芯があるそんな人。
か弱い印象のあなたが練習量の多い運動サークルに入ると聞いたときは驚いたけれど最後までやりとおしたあなたは本当に素晴らしい。
購買のあのお弁当が美味しかったなとぽつりとわたしが言った次の日、そのお弁当を食べてるあなたを見たときにはなんて純粋なんだと感じたよ。甘いものが好きだったね。わたしは苦手だったからそういうお店に一緒に行けなくてごめん。食の好みは結構合わなかったね。でもまた一緒に大学の食堂で各々好きなもの頼んでランチしたいね。授業中はよくうとうとしてたね。だけどきちんと単位をとっていくあなたが不思議だった。きっと家でちゃんと予習や復習をやってたんだろうなと今は思うよ。興味のない授業からは早々と退散したわたしと違ってちゃんと最後まで授業に出てたよね。ただ朝が弱かったあなたに変わって代筆してあげたこと絶対忘れないでね。通いだったわたしを台風や雪の日には泊めてく
れてありがとう。きれいに清潔に整頓された部屋は女の子らしくていい香りがしたな。苦しかった卒業研究はお互い励まし合ったね。わたしのぶつぶつと言う不満や文句を嫌な顔せずにうんうんと聞いてくれたこといつまでも覚えてるよ。無事に卒業して初めて二人で卒業旅行で海外に行ったね。暑さに耐えながら香辛料のきいた食べ物食べたり、大きな動物園に行ったり、夜景の綺麗なところでお茶したり、最高の締め括りになったんじゃないかなと思っているよ。少し離れたところどうしで就職したわたしたちは大学卒業後はなかなか会えなくなったね。だけどたまに近況を報告したり、誕生日にはメッセージを送りあったりといつまでも繋がっていられることがこのうえなく嬉しいよ。ずっとずっと続くよね!?
そう思ってるのがわたしだけだったら少し悲しいけれど…笑
そして、今、きっと一番大切な人と人生を共にすることを決めたあなたに、ささやかだけどシンプルだけどこの言葉を心からおくります。
結婚、おめでとう。
湿ちゃんのこと
湿、潤。湿ちゃんと潤ちゃんの、潤ちゃんはわかるけど、湿ちゃんって、呼びにくい。湿ちゃんって何かの間違いで生まれてきて、谷を降りてきた。湿ちゃんの縊死。それはおかしな譚にからまれているけど、湿ちゃんの湿り気は、よく知っている。思い出す。扇状地だったね。出会ったのは、死ぬ前。板に張り付いていた、湿ちゃん。ずぼずぼと腰までつかって、人か何かわからなかった。衣服着ていたかなあ。Tシャツやったかなあ。破れてるし、泥だらけで、もう生きてないの。案山子。案山子状。標。人柱で、じっとしてたら、拝まれるぞー、って言ったら、拝めと湿ちゃんは言った。小さな声ではないよ。人の声の最も高い周波数の、喉裂ける嬌声で、オーガーメーって。でも笑っているのはどうしてかなあ。笑いよる。湿ちゃん。笑夜。ショウヤと読めと湿ちゃん。信号で伝えてきた。生きていくのが嫌だとは言わなかったよね。生きたことはないと。それから、言葉を失って、笑夜の毎日で。拝まれる日々が続いて、縊死。にたりとして気色悪い。胴の下、泥土かと思ったら、甘い練り物で、羊羹、ところ天、ゼリーで、その上、見えてる部分がつくりものの。ゼリー状、半液体の上に、朝陽の下に、案山子状なんだもの。植わっている湿ちゃん。言いにくい湿ちゃん。そこにいろ。
潤ちゃんのこと
潤ちゃんごめんね。潤ちゃんのこと忘れてた。潤ちゃんはいつもじゅくじゅくで、湿ちゃんのずぼずぼとはまったく違っていた。羊羹やゼリーを食べる人だった。唇だった。唇の形をした、人だった。気色悪い。転落死。べしゃ。湿潤がふたりとも、べしゃ。それがね。扇状地に広がっているのよ。音羽の川がだらしなく喉ちんこあたりまで切開されて、べろりと扇型にひろがってるのよ。内緒だけど。内緒というのは、真夜中しかその姿は見えないから。真夜中歩けと、湿ちゃんも潤ちゃんも言ってたね。舌。舌出してる。この町の恥だよって、それは僧侶か神さんの言いぐさで、こちら側の言葉ではない。こちら側は、いつも甘い練り物なんだから、へたすると風土に成り下がる。風ちゃん、土ちゃんなどと言いかけて神が、まあまあそこは私に免じて、ご勘弁をなどと言い出すし。潤ちゃんは、とにかく口唇関係の専門家だったから、口の中、石膏みたいなものでからからにかためとられた。うるんでいた時などもう想像もできない。潤ちゃんごめんね。湿ちゃんと一緒に頭下げる。こんなところに池がある。ああ、昔の死が溶けて埋められている。
昔の死って変だよ。昔の生などないもの。昔は、死者だらけ。ほっとけば山になってしまうから、みんな見えなくされてしまう。池に吸い込まれていくのよ。ね。
朝起きて、パソコンの電源を入れたわけ。
いつものことさ。
スリープしていただけだから、
昨日とおんなじ画面が残っていて、
マシンが立ち上がったらすぐ、
ブラウザのリンクをクリックできるわけ。
だから寝ぼけ眼でちょっとゲームでもしてやろうと思って、
ゲームのリンクをクリックしたわけよ。
そしたらインターネットにつながってないとかいうんだよね。
携帯の画面を見ると、
4Gじゃなくて波のアイコンになってるから、
こっちはつながってるはずなんだよ。
でも、パソコンの設定画面でネットワークの診断てのをやってみると、
おれじゃなくてルーターが悪いんだって言うんだよね。
責任逃れってやつだよな。
こういうときのおまじないで、
ルーターと終端装置の電源を落として、
十数えて電源を入れ直してみたよ。
一度ならず、二度、三度。
パソコンの方も何度も再起動したさ。
でも、ネットにはどうしてもつながらない。
参ったなあ。
ここでひょっとしてと思い直して、
携帯でネットを操作してみたわけ。
波のアイコンは表示されてるけど、
動かねえじゃん。
これはパソコンと同じ症状だぜ。
なんだ、パソコンの責任逃れじゃなくて、
本当にルーターの方が悪いのか。
そういや、IP電話はどうなってるかな。
受話器を取ってみると、
ビジー音がする。
携帯からIP電話にかけたら、
おかけになった電話は電源が落ちているか、
電波が届かないところにあるだって。
どうしてくれよう、ソフトバンク。
料金がちょっと安くなるとか言われて、
ネットを乗り換えたのが間違いだったか。
ここで改めてルーターを見てみると、
インターネット回線のインジケータがついていない。
おんやあ?
終端装置からルーターにつながっているケーブルを抜いて
さし直してみたよ。
インターネット回線のインジケータが今度はついた。
で、インターネットにもつながるようになったよ。
なんだそんなことだったのか。
ごめんねパソコン、ごめんねソフトバンク。
でも、誰もそんなケーブルには手を触れてないぞ。
こっちが寝ている間に
どんな小人が出てきていたずらしたんだ?