トレパク

 

工藤冬里

 
 

デストロイヤーのくせにデストロイされず
ビトレイヤーのくせにビトレイされずにいるあなた、
あなたはスカッとするショートムービーみたいに災いを受ける
あなたがデストロイし終えたらあなたはデストロイされ
あなたがビトレイし終えたらあなたはビトレイされる

デストロイし終えたらデストロイされるそうですトロいんです
ビトレイし終えたらビトレイされる見とれアシュトレイ行きじゃ

 

 

 

#poetry #rock musician

白と黒の **

 

さとう三千魚

 
 

遠くを見てた

本棚の
上にいた

座っていた
まるく澄んだ眼は

遠くを
見ていた

遠くにいる人がいる
遠くに行った人がいる

白と黒の
毛皮を着ていた

 

・・・

 

** この詩は、
2025年10月24日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第22回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

突如、ギュンッと

 

辻 和人

 
 

まあるい顔をニコニコさせてるコミヤミヤ
突如、ギュンッと
左足を勢いよく蹴り上げた
足の先にあるのは
やっぱりまあるいこかずとんのニコニコ顔
あーぶない、あぶない
慌てて2人を引き離す
蹴られそうになってもずっとニコニコ
顔を見合わせるようになってきたコミヤミヤとこかずとんだ
相手の体に触れるようになってきたコミヤミヤとこかずとんだ
指にも力がついてきて
相手の服をぎっと掴んで
引っ張る
引っ張れば
肘ガクン揺れて
体傾く
傾いてニコニコ
ずり這いずり這い
寝てる相手の上を
戦車みたいにずずずっ乗り越える
見下ろす顔ニコニコ、見上げる顔ニコニコ
あーぶない、あぶない
手加減ってのを知らないからな
並んで仰向けに寝て
鳴き交わす小鳥みたいな仲だったのに
今や相手に向かって、突如
ギュンッ
挨拶
顔と顔ニコニコどっきんこ
あーぶない、あぶないぞ
手加減知らない挨拶だ
蹴って蹴られて
ニコニコだ

 

 

 

根岸交通公園

 

廿楽順治

 
 

もうだいじょうぶ
(ここにはずっとなにもおこらない)

はねられて
空に埋められた子どもらを

(わたしはみた)

老いた信号機のもと
ひかりの色を思い出そうとしているが

あおも
きいろも

くらしているだけではみることはない

わらいながら
路は急に深くまがり

空は
子どもらの
とまった呼吸でもういっぱいだ

(それを轢いた)

そのことが公園なのだ

 

 

 

2025秋的俳六首

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

又,歲月填膺
見證了一種光輝
維多利亞灣

耳廓的寂靜
察覺野豬的喘息
被戮的低吟

秋風秋雨愁
腐敗着果欄內臟
賣春油麻地

安全詞瓦解
天使徘徊本雅明
愴然伴孤星

油麻地探戈
一首詩即將結束
為落日謝幕

2025年10月21日

 
 

 

 

 

水平ということ

 
 

さとう三千魚

 

昨日かな
昨日だな

朝には
近所の人たちと

小川の土手の草刈りをした

昼前に
帰って

朝ごはんを食べた

女に駅までクルマで送ってもらい
東名高速バスに乗った

バスから
由比の海を見た

いつもそうする
いつも

由比の海を見る

遠く雲の下に半島が浮かんでいた
灰色の海の上に青い半島が水平に伸びていた

中野では
ギャラリー街道で

佐藤春菜さんの写真を見た

写真には人びとがいて
街があった

お母さんの皺だらけの手が水平に伸びている写真があった

荻窪の公会堂では
高橋悠治さんの曲 “この歌をきみたちに” を聴いた

この曲は3楽章に別れていた

“きみたちは解放の道をあゆむ”
“ラレスに会いにきて”
“幸福の歌”

ここにも
水平があるように思えた

道があり
生があり
夢がある

“この歌をきみたちに”を聴いていた
なんどか眠りそうになった

そこに懐かしい水平があった
水平な夢があった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

gift

 

工藤冬里

 
 

見通せないようにしてもらっている
理解できないことに感謝する
不意に立ち去るのは失礼
もう声で実現している
あ、この人も声が戻っている
誰と再会するっていうの
大木裕之に再び会うのは誰

こりゃ言ってみりゃ肉の塊
落とし込まれたモオブの窪溜まり
転がる色わだかまるただ乗り
言葉が何かも分かってないのに
太陽も月も夜もないのに
受け取ってもらえるらしいアレンジ
模すとすれば大きなオレンジ
ジレンマ抱えてConstant sorrow but
Continuous peace peace peace peace
育ててくれたナミオに感謝
期待するのはバイデンの恩赦
聞き倒したのは敗戦後のdoowop
自分より高い大きな岩の上で

 

 

 

#poetry #rock musician

家族の肖像~親子の対話 その73

 

佐々木 眞

 
 

 

2025年1月

お母さん、ぼくタチヒロシです。
こんにちは、タチヒロシさん。
タチヒロシ、タチヒロシ、タチヒロシ

お母さん、スイシンってなに?
スイシン?あ、推進ね。うまくいって前に進めること。
スイシン、スイシン、スイシン

お母さん、花盛りって、なに?
お花がいっぱいのことよ。

わたしはコーゾーさんです。
こんにちはコーゾーさん。

韓国はソウルでしょ?
そうね、ソウルね。

 

2025年2月

ケンちゃん、駅どこ?
キタノでしょう。
キタノ、キタノ、キタノ

お母さん、旅立つって、なに?
旅行に行くとか、死んでしまうとか、よ。
旅立つ、旅立つ、旅立つ。

コウ君、リンゴケーキ食べたいね。
お母さん、リンゴケーキ作ってね!
お母さん、リンゴケーキ作ってね!
お母さん、リンゴケーキ作ってね!
わかしましたあ。

 

2025年3月

ぼく、タナカミナミとサワさん大好きですお。
お母さんもよ。

またサワサンに会える?
会えるでしょう。

サワさん、「光る君」みた?
みたでしょう。

 

 

 

荒野

 

工藤冬里

 
 

僕だったら文句言わずに煮詰めて発酵させられないかとか十割で麺打てないだろうかとかあらゆる可能性を探ったと思う
荒野ではテント以外の工藝性は備えられなくてもいいが生き延びるには行商人のミニバンが必要だ
河南のキッチンカーがニラを運んでくる
あゝ高い、高い、高い
岩塩は土に塗れて

 

 

 

#poetry #rock musician

波が寄せてる

 
 

さとう三千魚

 

今朝も

女と
スーパーに行った

キャベツと
人参と

ブロッコリーと

秋刀魚と
明太子と

あんパンを買った

ノンアルビールも
買った

女がレジに行く間に
スーパーの花屋に行く

いつも
そうする

そこに
花たちは売られている

売れ残った
夕霧草の

鉢に
ヤブタビラコの花が咲いている

ミモザの
花芽も

膨らんでいた

それで
帰って

家の玄関で
ハグロトンボを見た

ふわりと
飛んできた

午後
電話の後で

浜辺にクルマで行ってみた

クルマでは
チチ松村の”イスにもたれて”を聴いてた

波が高かった
大風が近くにいるんだ

女のコたちと男のコたちが
波打ち際で

キャーキャー叫んでいる

クルマのバックドアから
イスを出して

座ると
鳩が来てくれる

餌は持たないが
鳩が来てくれる

鳩は
すぐに

歩いて
いった

浜辺には
タコさんがいた

ランニングシャツを着て笑ってる
浜辺には

波が寄せている
波は寄せている

 

 

 

#poetry #no poetry,no life