極楽浄土

 

たいい りょう

 
 

私は 休日の夜
妻と二人 中華料理を食べようと
店を探していた

一件目の店は 満員で
あまり感じがよくなかったので
入ってすぐ 店を出た

私は 間違えて
同僚の携帯に電話をしたが
彼は 電話には出なかった
彼の番号表示は なぜか ハングルだった
後ほど 彼から コールバックがあったが
私は 無視した

見覚えのある歓楽街
そこは かつての知人が
風俗嬢をしていた店のある街だった
私は 友人に連れられ
久しぶりに彼女に会って話をしようと
その店を探したが
見つけられなかった

諦めた私は 脇道に入り
少し坂道を登ると
そこは 鳥居が沢山並ぶ神社のようだった
私は 鳥居を潜り抜けながら
参道をゆっくりと登っていった

すると ある白い石の姿の仏様が 私の手をつかんだ
「お前さん ちょっと お待ちなさい」
とその仏様は私に言った

私は 友人に「仏様に 呼び止められたよ」と
告げた

参道と境内には 無数の仏像が立ち並んでいた

私は「南無阿弥陀仏」と唱えようか「南無妙法蓮華経」と唱えようか迷ったが、
「南無妙法蓮華経」と唱えながら
さらに 山奥深いところへと向かった
周囲からは 「南無阿弥陀仏」の読経が鳴り響いていた

そこから 先は 何も覚えていない

 

 

 

幸せな結末

 

村岡由梨

 
 

仕事に疲れて、
帰宅してベッドに倒れ込んだ。
体の震えが止まらない。
目を閉じて、少し眠ろうとしたけれど、
あの人や
あの人の取り巻きの幻影にうなされて
呼吸が苦しくなる。
朧気な意識の中、
不意に赤ん坊の頃の花を思い出した。
私の腕に抱かれて
お乳を飲んで
私の顔をじっと見つめていた。
両腕にかかる花の重みや温かさ。
ほんのり香る、甘い乳の匂いに包まれて
私たちは幸せだった。

それから15年経って、
家の中から外へ
徐々に軸足を移し、
私に背を向けて離れていく花。
あれは去年の暮れのことだった。
夜22時を過ぎて
雨でびしょ濡れになって
塾から帰ってきた花の、
私の不甲斐なさを射抜くような目。
親としての嘘やごまかしを一切許さない
真っ直ぐな目。

まだ、ママを置いて行かないで。
冷たい言葉で遠ざけないでほしい。

そんな私の自分勝手な気持ちを
全身で振り払うように花は、
私の知らない世界へと
スピードを上げてゆく。

 

2023年3月20日、晴天。
花の中学校の卒業式だった。
受付を済ますと、
生徒一人一人が保護者に宛てて書いた
手紙を渡された。
席に座って、早速封を切った。
そこには、
15歳の激しい怒りと
早すぎる諦念と
精一杯の優しさと
訣別の言葉が、あった。
一度読み、二度読み、
三度目読んだところで涙が止まらなくなり、
読むのをやめた。
親として、
花の孤独や苦しみに
きちんと向き合って来なかったこと。
私には泣く資格も無い。
一度言った / 書いた言葉は簡単に消せない。
一度傷付いた心は簡単に癒えるものじゃない。
けれど花は、深く傷付いてもなお
私たちが「家族」でいることを、諦めなかった。

卒業式から数日経って、
花からの手紙を読み直した。
そこには、
たくさんの花の優しさが、あった。
私たちが置かれている困難な状況を
何とか理解し、
受け入れようと苦しんだ花の姿が、あった。
「幸せになってください」
「200年、生きてください」
「これからまた200年、よろしく」
そう書いてあった。

 

今から約16年前、
産婦人科で
「出産予定日は10月22日ですよ」
と告げられた時、
10月22日生まれのママは、
その狂った頭で
「ついに私が私を殺しにくる」
って勝手に思い込んで、
生まれてくるあなたに恐れ慄いた。
結局その年の10月11日に生まれたのは
かわいい目をした愛くるしいあなたで、
あまりにも可愛かったから
ベビーベッドには寝かせず、
ママのお布団に入れて
寄り添いあって冬の寒さをしのいだ。

それから15年。
ごめん、
ママは、未だ良い母親になれずにいます。

けれど、もし許してくれるのなら、
ひとつお願いしても良いかな。
いつか、「その日」「その時」が来たら
スマホの電源を落として
パパと眠と花に見守られて
静かに旅立ちたい。
陸橋から飛び降りて
車に轢かれて
ぐちゃぐちゃの死体になりたいとは
もう思わない。
最後に思い出すのは、きっと
パパと初めて手を繋いだ
2002年のクリスマスイブのこと。
パパ手作りの銀の結婚指輪をして、
パパとママの二人で
渋谷区役所へ婚姻届を出しに行った時のこと。
そして何より、
生まれたばかりの眠と花を胸に抱いた時のこと。

今日は骨盤がバラバラになって、
ひとりのヒトを産む夢を見たよ。
それは、産まれ直したママ自身かもしれない。

「2023年2月26日日曜日18:10。仕事が終わって空を見たら星が光っていた。自分の現在位置がわからない。いつもそうだ。けれど今日の私は、いま自分が帰るべき場所がどこなのかをはっきりと自覚している。それがどれだけ幸せなことなのかも。あちこちから夕飯の支度をする音が聴こえる。一日の終わり。」

「200年、生きてください」
そうあなたは言った。
200年経っても、
忘れたくない。
忘れてほしくない。
私たちが家族だったこと。

 

 

 

The man who steals the laundry, (便臭ノ、see-throughと戯れる、をとこたち ……chanson、)

text only
 

今井義行

 
 

雲海が何層にも広がっている……
ソノ空の、下には
Santoor(サントゥワ)という名前の、soapが
愛される、……
泡営業ノ 街がある……

── 誰かに見られてるか等、関係、🈚…

 

The man who steals the laundry, (便臭ノ、see-throughと戯れる、をとこたち、)

街外れ……

まだ生乾きの、どこかに
便臭の残るようなsee-throughの
下着ばかり…根こそぎ
抱いて走るをとこたち、が在る

ソノ、中には、僕の姿、が在る。✌
(犯罪、意識、ナド、希薄デスネ、)

ソノ、辺りには……
泡営業ノをんなたちが、利用する
大型コインランドリー、

千円は掛かるが一度に10㎏以上も洗えて乾燥までできる……

この大型洗濯機で、泡営業ノをんなたちは、
仕事帰りの… 明け方等に
日々溜めていた洗濯物を
洗うのだが、僕を含めた下着類専門窃盗犯には……、

(洗濯物は、
汚れている方がステキ!😘)

 
 

盗ったバカリの、レース編みの、パンティ、

── 誰かに見られてるか等、関係、🈚

でも、最上の……収穫物は……、
see-throughなパンティストッキングである!😂

(何のために、履かれているのか…
分からないような、トコロが好きデス…)

をんなたち、よ!

下着、ニハ、強
い便臭ヲ、……残しておいて欲しい……!

股間が穴 アキなら、サイコウ、だ!😭

see-throughに価値があるのは、
をんなたちが
それらを着るからではなくて
をとこたちが、
をんなたちの、パンティストッキングを履き、
澄んだ…繊維質ノ…悦びに、…耽ることができるからだ!

パンティストッキングの…繊維から、
はみ出る体毛を、
一つ一つ、処理スル…柔らかい、陶酔

ああ… パンティストッキング、サイコウ……!!

僕は、街外れに、…蹲り、
立ち並ぶ、アパートのひさしに身を滑らせ、
ズボンを脱ぎ捨て、
一番、便臭の強そうなsee-throughの…
パンティ、を履く。

 
途中で、ピ…ンと、なっちゃいそう✌

それから、アア、パンティストッキング…!

その直後 ニ、チョットダケ射精してシマウ……
ストッキングに透けた染みができる……

「ちょっと、何ヤッテルノ……?!😡」と、
管理係の中年をんなガ、僕に言ウノダッタ…
ガ、

「この、臭いが、堪らないノダヨ…、」
僕は、答えながら…シンナー吸うように吸う

「変態、ヤロウ……!😡」

僕は、走りながら…シンナー吸うように吸う

あ、このをんなは、
いや、をんなとは、限らないが、
(大量の、おしっこ、スル ナ……)
(その後、ユルイ捏ねパン、ミタイナ大便スルナ…)

僕は、歌 ウノダ。「パゾリーニ、もっと…最低ノ…場所ニ、落チナサイ!!」 😜

と、僕はストッキングの繊維を口いっぱいに
含み、笑ってしまう。

はみ出る体毛を、
一つ一つ、処理スル柔らかい、陶酔
ああ… パンティストッキング、運命!💖

【フェティシズム】って、
留まるところを、知らないものだね…😂僕は、自分だけに沿ってcustomizeできる、ソンナ、
素材を求めて、

或る朝、Amazon で、「今すぐ買う」を… ポチッと押した💝の、サ!! 
ベージュだけじゃ淋しいから、色物セット。

玄関前、
置配指定で……待ッテイタ、ソレニシテモ、

カラーパンティストッキングが、手✋に入るまでの……至福の一昼夜、ト…イッタラ!!

そうして、到着したばかりの、
淡いピンク、
の、

パンティストッキングを

繊維を電線させながら、履いた訳ナノサ……
(アア、僕の為だけにある、パンティストッキング…!!)😆

 

をんなモノですから、股間の繊維とプルンとしたおちんちんが擦れて痛いくらいなのが
サイコウ……サイコウ…… 😜

「ねぇ、誰か、ワタシ、見テ ✋」

The man who steals the laundry,
(便臭ノ、see-throughと戯れる、をとこたち
……chanson、)

歌え、歌え、我が喜びを…!! 💕

泡営業ノ 街ノ…下、歓喜は、流れる…

The man who steals the laundry,
(便臭ノ、see-throughと戯れる、盗んで、嗅ぐ、だけでは、物足りなくなっちゃってね、)

僕は、下半身局部、see-throughの…純正my-パンティストッキングの姿で、街の中を …コッソリ歩く
愉しみ…を、得た…… 😋

(サア…これから、あちらこちら、汚し放題ダゾッ!! 😂)

女子学生さんたちが慌てて逃げ去るのが
まあ…、愉快…愉快… 😂

「ほれっ、ほれっ、ほれっ…!」と、
僕は、言った……!!……ケレドモ…、
をんなモノだけでは…満足デキナクナッテ。イテネ。
ツイに……、

ペニスケース付き
men’s see-throughの…パンテ
ィストッキングも、買ったん、ダヨ!😆

股間に、ペニスケースが、
付いてる、付いてる…!😳

🌠 [FULL CHECK] メンズパンスト 男の
パンティストッキング

 
 

🌠 ツイデニ、イロイロ、買いました……!!

洗濯物を盗む、だけじゃもう駄目カモ……
僕がコッソリ盗まれちゃう側になりたいな😜

ヤルからニハ、皆のウワサに、ナリタイナ!!

Paris Collectionで、歩き回る
華奢な、をんなモデルさんみたいなネ、

ワタシは、ドッサリ、盗まれちゃう、
市民のモノダヨ。
ワタシを、見つけたら、捕獲網で捕まえて
好き イなようにイタブッテく欲しいですネ! 😂

The man who steals the laundry,
(便臭ノ、see-throughと戯れる、をとこたち
……chanson、)歌え!!

 
 

    (2023/03/16 アパート 日暮れ)

 

 

 

ネグレクトという名の菓子パン

 

村岡由梨

 
 

花の詩を書こうとして、花のことばかり考えている。
花の為なら、両腕を切り落とされてもいい。
命を捧げてもいい。
それなのに、なぜ私
朝早く、起きられない。
普通だったら、他の誰よりも早く起きて、
炊き立てのご飯
具沢山の味噌汁
卵焼き
焼き魚 なんかを食卓に並べて、
食べ終わったら、
「いってらっしゃい」と言って学校へ送り出すのに

できない。
朝早く、起きられない。
大抵の人が普通にこなしていることが、
できない。

「ネグレクト」「だらしない親」

夢うつつに、花が玄関のドアを開く音がして、
慌てて「いってらっしゃい!」
と声を張り上げるのだけど、
私の声は、花の無言に吸い込まれて
あっという間に消えて無くなる。

「これ毎日じゃなくて、多くて週5日の内の2回だね」

けれど、ごく稀に、
花のお友達が家にお泊まりする時は、
花に恥をかかせまいと、
誰よりも早く起きて朝ごはんの用意をする。
サラダ
トースト
スクランブルエッグとベーコンの焼いたの
フルーツ を
ワンプレートにきれいに盛り付ける。
なぜ、こういう時は早く起きられるんだろう。

「自分が恥をかきたくないからでしょ」

たまにお弁当のある日は
早く起きて
お弁当を作る。

「ただし冷食だらけ」

花の中学校では
「早寝・早起き・朝ごはんカード」を書く習慣があった。
ある1週間をピックアップして、
何時に寝たか 何時に起きたか
朝食に何を食べたか、を
記録するという。
各々1週間分記録したところで
保護者からの一言コメントを書く欄がある。
震える手でピンク色の表紙のカードを開く。

×(何も食べていない)
×
いちご蒸しパン
×
コッペパン
×

毎朝無言で家を出る花の後ろ姿を想像して、
「これは何とかしないと」と思って、
フレンチトーストを作ってみたり
炊き立てのごはんと味噌汁にしてみたりもしたけれど…

「ママはどうせ、やっても続かないじゃん」

たまに家族旅行へ行くと、
「旅館で出る朝ごはんがすごく楽しみ」
と花は喜び、
以前、花が起立性調節障害の疑いで検査入院した時は、
「ママ、病院食って、おいしいよね」
と笑顔の花がいた。

ある日「塾があるから、夕飯18時で」
と花に言われたのに、
出来たのが18:15だったことがあった。
「食べてたら遅れるから、いらない」
そう言って花は勢いよく出ていって、
私は、作ったうどんを捨てた。
自分の分も、捨てた。
「花が空腹を堪えて塾へ行ったのに、
 私がのうのうと食べていては、いけないと思った」からだ。

「は? なんでママの分も捨ててんの?
 やっぱママ思考回路とか色々おかしいよ。
 めんどくさ」

 

昼食は、小学校・中学校の給食に助けられ、
いよいよ夕食、私の出番だ。
とにかく野菜をたくさん食べさせたい。

お正月のお餅がたくさん残っていたので、
お雑煮を作った。
鶏肉(脂身はきれいに取る)
にんじん、大根(両方とも皮付きのままイチョウ切り)
ぶなしめじ、ごぼう、ほうれん草
ザンゲの気持ちを込めて、
野菜を ザク ザク ザク と切る。

ブラウンシチューは、
玉ねぎを多めにスライスしてよく炒める。
にんじんは、やはり皮付きのままイチョウ切り。
それにたくさんのキノコ類(エリンギ、ぶなしめじ、エノキ)と
豚肉の薄切り、ブロッコリーを入れる。
1日目は、生協の塩バターパンと一緒に食べ、
2日目は、ご飯にかけて食べる。

他によく作るのがピーマンの肉詰めと
アスパラ(またはインゲン)のベーコン巻き、
タラと玉ねぎとじゃがいもとブロッコリーのホイル焼き など。

それで、たまに見栄えの良い食事が出来上がると、
すかさずスマホで写真を撮って、
Instagramにアップ。

「はい、私きちんとやってますアピールね」

 

こんな母親で、ごめんなさい。
これでも、あなたは私を良い母親だと言いますか?

 

こんな母親でも、花は
「ママ、絶対死んじゃダメだよ」
「ママが死んだら、遺灰食べるからね」
と言って抱きしめてくれます。
疲れ切った私を、あの手この手で笑わせてくれます。

仕事の合間に美味しいケーキを食べると、
真っ先に頭に浮かぶのは、眠と花。
ふたりに食べさせたいと思うのです。

子供が飢えるのは、何よりも辛い。

それなのに、なぜ
なぜ私は、朝早く起きられないの?

 

 

 

桜がひらくと

 

ヒヨコブタ

 
 

春がきたらしいと近くの桜が告げて
苦手な季節なはずも
すこしこころやわらぐ
きれいということばがこぼれでたとき
胸の中の鉛が軽くなる

気のもちようとはよくいったものだね
もういない人たちを思い彼らに話しかけるように過ごす
苦痛とは人生で比べようもなく
欲を出せば幸せなどどこまでも手に入らないだろう
それを忘れぬようぎゅっと手に力をこめる

親やその上の人たちが苦労していたことを思い出して気を引き締めても
彼らはいつもやさしく微笑むのみだ

老いていくひとのほんのささやかな願いを
どうしたら叶えられるのかわからずにいる
わたしが思うほど悲しみを感じてはいないのかもしれないと気がつくとき
体の力が抜けて座り込んでしまうのだ
そんなことがあっていいのだろうか
悲しみに囚われすぎても何もうまれないときは
眠る

じぶんが微笑むと相手もこころ開いてくれる可能性は高いと思うのに
それがなたで斬りかかられるようなとき
わたしは涙する
心配りは相手の重荷になりすぎぬように
そしてじぶんの重荷にはならぬように
眠る

世界は閉じてはいなくて
誰も一人ではない
そこに傷つけあわないという簡単なルールが見えるひとと
そうではないひとがいるのだろうか
わたしはきっとだいじょうぶになるまで
ぬいぐるみを抱えて
眠る

 

 

 

いきるということ

子どもたちへ
 

さとう三千魚

 
 

みなさんとあえて
よかったです

みなさんと

キャッチボールや
ドッジボールができて

たのしかったです

おりがみや
おえかき
アイロンビーズやキャップとばし
テープにんげんや
おままごと
おかもとたろうマン
みなさんのあそぶのをみていて
しあわせになりました

いきることは
だれでもかぎりがあります

みなさんをみていて
いきることはたのしいとおもいました

よくあそびまなび
いきることは

みなさんをしあわせにするとおもいます

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

わん、つー、ロックンロール

 

工藤冬里

 
 

子供がいない
馬のことか?
自分のためにパチスロに戻ってはいけない
軍備は不満を惹起した
一周間違えて
使い回したぺったんこのマスクを捨てて
長寿さえ求めず
祈れないのに僕はマンガの線のマスクが好きだ
補助的なマスクの虎
認知は瓶の中の赤い蒟蒻のように
ムサシアブミのぐんぐん
3時間でぺったんこ
小指にも電気
宗匠は器具を磨き上げ
背後にある感情?
丸亀製麺の浮腫がメジャーを巻き戻して
なんであれねじめなこと
痰の絡む金は粘土層の土地で鋳造された
5:45分起きなら洗いは当然
上手に抑揚を付けて弁当を
油髪のプリンス
東京スカイツリー6百34メートルです
逃げ去る子供がいない
의지없이
チリ紙にカッター刃が包まれ
青黒い縁取りの動画見せられ
命を犠牲にして助けてくれて
犬殺しや死体運びのバイトにもヒロイズムが充満している
欲を言うなら見ないで
my girl Fridayは有能な秘書
金髪焼いたら
服を残して逃げたら
戦い続けて肉や血焼いたら
奥様の思い出焼いたら
ローマの建物ごと
チャンピオンの踏み台は取り去って
凛々しい柿の若葉は天麩羅にします
添い寝ごはんの山を越えて
池の下にナビが配偶者の道を造り
集合無意識が放火するクロスロードで
子供丸亀製麺の浮腫
花粉マスクは池から穢れのない海にずれ込んで
使い古しの毳が当たる感じがだめだ
毛羽立つ畜生
努力によって生み出されるglobeのドーム内
遡って織り交ぜていく
140g5分捏ねて2つに分け3mmにして8分焼く
剥がしたらいいと言うがもう剥がれ切ってるのはどうしたらいいとうさん
わん、つー、ロックンロール
小雨の降っている間はエクリチュールを遡っても良い
時系列の順位を変える機能が備わっている
但し小雨が降っている間だけだ
二項対立の外に出る時の礼儀として傘を差さない
春なのに

 

 

 

#poetry #rock musician

真夜中の針

 

辻 和人

 
 

ヒブだ、肺炎球菌だ、B型肝炎だ、ロタウイルスだ
初めての予防注射だ
ギュエィアーン、ギュエィアーン
口が大きく撓んで開いて
目から涙チョチョチョチョーッ
知らない白い部屋に押し込められた
知らないおじさんに体いじられた
それだけでも大変なのに
いきなり太ももにプスップスップスップスッ
体ビッビッ反らせて
コミヤミヤが泣いた
こかずとんが泣いた
2人おんなじ反応おんなじポーズ
痛かったよね
びっくりしたよね
びっくりが痛かったをどんどん連れてきたよね
抱っこ紐ゆさゆさ、ゆさゆさ、してやって
ひくっひくっとトーンダウンしてきたコミヤミヤとこかずとん
さ、早くお家に帰ろう

家に帰ってマットに寝かせて
ちょっとは笑顔も見せてくれたんだけど

真夜中、突如
ギュエィアーン、ギュエィアーン
こかずとんの声だ
こんな泣き方見たことない
体ビッビッ反らせて両手ぷるぷる震わせて
つんざく声
真夜中、針が現れた
1本2本3本4本
真夜中の太ももめがけて
真夜中の痛かったを
プスップスップスップスッ
連れてきた
ギュエィアーン、ギュエィアーン
コミヤミヤはぐっすり眠ってるのにね

こかずとん、大丈夫だよ
ここにいるのは
ほんとはいない奴らなんだよ
ほんとはいないんだから
朝になったらみんなどっかへ行っちゃうよ
それまでかずとんパパが
抱っこ抱っこしてあげるよ
ゆっさゆっさゆっさゆっさ
ほうら
真夜中の針、消えてくよ
4本3本2本1本
ひっく、ひっ……く
背が柔らかくなってこかずとんは眠りに落ちていく
まだ微かにいるかもだけど
大丈夫
ほんとはいないんだから
朝になったらみんなどっかへ行っちゃうから

 

 

 

逆さまの音

 

小関千恵

 
 

こどもたちに、自分の名前を書いてもらったことがある
ひとつの紙に書いてもらった
誰かがそこに、わたしの名前も書いてくれた

ただ名前を書いてみても輪郭は取れないが
「居る」ということが不思議と浮かぶ

あの子は
嬉しい時に 泣き真似をし
泣きたい時 大声で笑った

喜びたいなんて思う間もなく喜んだり
泣きたいなんて思う間もなく泣いたり
できずに

わたしはその素直さが嫌いじゃなかった

ひるがえる海
逆立ちをして
波打ち際に捕まっていた
きみの声 涙
逆さまの音を天に落としている
そしてそれは、
いつか地上へ還ること

 

 

 

 

僕の詩が始まる

 

長田典子

 
 

※2022年夏に小中高生を対象とした詩のワークショップの講師をやりました。アクティビティでメモを書いた後は教室でメモをもとに詩を書く活動でした。汗をかきながら詩を書く小中高生を見て、わたしの中に今もいるわたしの小中高生の姿が現れてきました。この詩は彼らと一緒に行動し刺激を受け、わたし自身の心に起こったできごとを詩にしたものです。

 
 

ん、ぎゅるぎゅるぎゅる、んんん、
重いエンジン音をたてて
鉛色の琵琶湖を島に向かって観光船が進む
カシカシカシカシ湖の表面に引っ掻き傷を作りながら
僕は中高生対象の詩のワークショップに参加して船で島に向かう
頭上を大鷲が旋回しながら何かを狙っている
僕はメモを書く
「湖面の真裏にはきっと別の世界が逆さにある」
女の子がアーケードの道をジグザグ歩いているんだろう
なぜだろう
僕は彼女をよく知っている気がする
あと50メートル真っ直ぐ進めば彼女の通うクリニックがある
彼女の歩く速さで湖面が瞬きして漣立つ
ん、ぎゅるぎゅるぎゅる、んんん、
この夏休み 僕は詩が書けそうな気がしてくる
「大ワシが湖面に急降下する」
「えものをねらって水面に首をつっこんでいく」

あと50メートル進めばクリニックに辿り付ける
あたしが歩くたびにタイルが足裏の形に歪み足が取られるし
アーケードの店先に置いてある消毒液を全部順番に使わねばならないのに
猛禽類の嘴がタイルの下からぎゅるぎゅる杭のように突き出ては引っ込む
人混みの溢れるアーケードを前進したいだけなのにできなくて
体中の怒りの溶岩が爆発してまた死にたくなる
英語の時間busをブスって読んだらクラス全員が爆笑した先生も
みんなあたしを心底馬鹿にしてる気がして咄嗟に隠し持ってたライターで
掲示物に火をつけたあたしもみんなも焼け死んじまえ!あたしは叫んだ
怒り心頭で体中から火を噴いて呼び出されて来た親にも殴りかかって
クリニックに通うハメになったけど色んな薬を貰えるから嬉しい
あの日から学校には行かなくてもよくなってあたしは部屋に閉じこもり
毎日「死」「死」「死」と部屋の壁に書いては消し書いては消している
両側に並んだ全ての店先の消毒液を手指に吹き付けなければ
クリニックに辿り着けないのに猛禽類の嘴があたしの足裏を突いてくる
焦りで怒りが倍増して行き交う人々を皆殺しにしたくなる
バッグに手を突っ込み先の尖ったシャーペンを探すでも触る前に
手指消毒をせずにはいられないどうしてもせずにはいられない
体中の怒りの溶岩が爆発しバカヤロー!と叫びまくる死にたくなる
アーケードなんか火の海になれ!みんな死んじまえ!この世もなくなれ!
怒りで体中が震えて止まらなくなるクリニックまであと少し
自分で自分の手を摩る消毒液で消毒する摩る消毒する
クリニックでは毎回判で押したように同じ会話が交わされる「どうですか」「調子悪いです胃薬と風邪薬も付けてください」「じゃ、いつもの通りの薬ね」まで30秒「ありがとうございます」頭を下げて40秒後には診察室を出る駅のトイレで処方された2倍の抗鬱剤と風邪薬一気に飲み込む
すっきりする「ヒミツ」だよあたしが「おんなおとこ」だろうと
「おとこおんな」だろうとどうでもいいじゃんなんでもいいじゃん
頭がぼーっとして色々どうでもよくなって死にたい気分も消えていく
ふらふらした足取りで歩いていると巨大な猛禽類の嘴が下から飛び出てきてあたしの両方の足をグイっと掴んで床の下に引き摺り込む
ん、ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる、んんんん、んんんん、
くねくね体を波状に撓ませながらタイルの裏側に引きずり込まれていく
裏側の世界では船のデッキで男の子がノートに何か書いているのが見えた
巨大な湖の上をあたしは大鷲に掴まれて様さに飛んでいる

ん、ぎゅるぎゅるぎゅる、ん、
船は重いエンジン音をたてて湖を進んでいく
「湖の向こう岸はすがうら」「昔から続く漁師の町」
僕は大鷲が湖に首を突っ込み一瞬で魚を口に咥え
水面から空高く飛び立つのを見た
「ワシのえじきは女の子」「島の方に飛んでいく」「きみをよく知ってるよ」
魚は女の子で柔らかい全身をくねくねさせて遠くの岩に運ばれていく
女の子は岩の上で大鷲に啄まれ喰われてしまうんだろう
僕も本当は大鷲に喰われた方がいいんだ毎日毎日死んじゃいたいんだもん
僕の筆箱は毎日学校で誰かに破壊されてノートには
「バカ」「死ね」「おんなおとこ」の落書きばかり毎日毎日
「僕もえじき」「僕は毎日ごう問されている」
「僕はいくじなし」
我慢してきた気持ちが急に込み上げて涙が溢れそうになった
自分の部屋に入るなり僕は泣いてしまう
お母さんを心配させたくないから理由は言わない
涙を指で拭いては服に擦り付けるきつい気持ちを涙で消毒する消毒するんだ
「風」が「僕を消毒」する

この湖の先の先の先の遠くの寒い土地で戦争が始まった
家族を失くした人たちが泣きじゃくっているのが夕べもテレビに映ってた
「戦争は人間や町をえじきにする」
「教室も戦場」だ
「マンガ本やくしゃくしゃに丸められたプリント」が
「爆弾みたい」に床に散らかっている
僕は僕をいじめるやつらを皆殺しにしてやりたい
んぎゅるぎゅるぎゅる、ん、船が湖面を進んでいく
大鷲は高く高く灰色の宙深く女の子を咥えたまま旋回している
僕はカシカシカシカシ鉛筆で新しいノートにメモをする湖の眼球をひっかく
「手前に見える島のてっぺん」
「女の子が座ってる」
「あばれ回ってワシの爪から落っこちた」
町が焼かれ家族が殺されて泣きじゃくる人たちの顔が湖面に映る
泣きじゃくってるのはたくさんの僕の顔だ湖面を覗き込みながら
僕は泣きじゃくる「さざなみは心臓のこどう」
お母さん、僕、「死にたい」よ
お母さん、僕、「でもまたお母さんに会いたい」よ

「僕の涙が湖面にいっぱい落ちる」
「湖に穴があく」
「女の子はあばれ回ってワシの爪から落っこちた」
「僕はえじきでいい」「えじきなりにやっていく」
「女の子は助かった」「女の子はわかった」
「薬は飲んでもいいけど死んじゃダメだ」
「僕はわかった」「自分だけのかっこいいヒミツを持てばいい」
「ワシといっしょに空を飛んだ女の子」
「誰にもマネできない女の子だけのヒミツ」
「すがうらで」「ふなずし食べてみたい」
「かっこいい」「勇気ってなに」

ぼくはカシカシカシカシ、メモをした
もう涙はひっこんでいた
「僕のかっこいいヒミツ」「僕は詩人だ」
ん、ぎゅるぎゅるぎゅる、んんんん、
湖の眼球が僕に向かって瞬く
漣は湖面が開閉する扉だ
僕の詩が始まっている

「湖は僕と女の子を記憶する」

  * 
 

さざなみのメモ      中三 小里埜 沙舵男

 
大ワシが湖面に急降下する
えものをねらって水面に首をつっこんでいく
湖面の真裏にはきっと別の世界が逆さにある

湖の向こう岸はすがうら 
昔から続く漁師の町だ

女の子がワシのえじきになって島の方に飛んでいく
僕もえじきだ
毎日ごう問されている
遠い国で戦争が始まった
教室もまた戦場だ
破れたマンガ本やくしゃくしゃに丸められたプリントが
爆弾みたいに床に散らかっている
死にたい、でもまたお母さんに会いたい
おとこおんな おんなおとこ 
風が僕を消毒する

手前に見える島のてっぺん
女の子がふてくされて座ってる
あばれ回ってワシの爪から落っこちた
僕の涙が湖面にいっぱい落ちる
湖にたくさんの穴が開く
それは女の子がえじきになった穴

女の子はあばれ回ってワシの爪から落っこちた
女の子は助かった
お母さん
僕はえじきでいい
えじきなりにやっていく
女の子はあばれ回ってワシから逃げた
女の子は逃げてわかった
薬は飲んでもいいけど死んじゃダメだ
僕はわかった
自分だけのかっこいいヒミツを持てばいい

ワシといっしょに空を飛んだ女の子
誰にもマネできない女の子だけのヒミツ
おんなおとこ おとこおんな おんなおんな おとこおとこ
どうでもいいことだ
すがうらでふなずし食べてみたい
さざなみは 心臓の鼓動
僕のヒミツ かっこいいヒミツ
僕は詩人だ

湖は僕と女の子を記録する

     *

僕は湖にできた穴を潜り抜けてアーケードを歩いて行く
じぐざぐに歩いて手指に消毒する
本屋に行って新しい詩集を買う
家に帰ったら書きかけの詩を推敲する
漢字検定の勉強もする
大鷲から逃げた女の子は
今頃どうしているんだろう