胃が痛くなりそうな気がする

 

工藤冬里

 
 

白髪はほとんど光
死んだ男との繋ぎ目が黒を潜って顔になる
親達は叫ぶ赤子に戻り
流線は収斂する
シナイの地下水は豊富でなければならない
戦況について
身近な国の国境を越える色がまだ名付けられていない
いよっ大統領
着ることは中身を外に出すこと
パンジー刑事
反故にする
衣服を着せて体の欠点を隠す
頁のカモメ
柿色のコンパネに光が当たり
身分証明に完璧な接着剤
簡単な部屋の
名付けられていない二色が
全てを決定していく

 

 

 

#poetry #rock musician

He is living from hand to mouth.
彼はその日暮らしをしている。 *

 

さとう三千魚

 
 

for breakfast
make onion miso soup

cut vegetables
make a salad

give the woman a salad
see off the woman

hang out the laundry
go to take out the trash with the dog Moko

with moco
by car

go to see the sea
was calm

something sways and moves on the bottom of the flat sea

at the bottom of the sea
there is a swaying man

the man is swaying

a man is holding a woman
woman’s skin

warm

He is living from hand to mouth *

 
 

朝食に
玉葱の

味噌汁を作る

野菜を切り
サラダを作る

サラダは女に持たせる
女を

見送る

洗濯物を干す
犬のモコとゴミ出しに行く

モコと
車で

海を
見に行く

凪いでいた

平らな海の底に揺れて動くものがある

海の底に
揺れる

男がいる

男は
揺れている

女を

抱いている
女の肌

温かい

彼はその日暮らしをしている *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

Situationist
International

 

工藤冬里

 
 

ジジェクの「パンデミック」はその冒頭から間違っている
マグダレーネに言った「我に触れるな」(J20:17)は風船のように空中に昇っていったりはしないから大丈夫だよ、という意味である
ジジェクはここを、相手に触れることの出来ない感染拡大状況に適用する
そしてヘーゲルの若書きを引用し、触れられないなら見つめ合え、とアジテートするのだ
そのあとジジェクは

ここで大木さんから電話が入る
今自分はネオ・シチュアシオニストで、映像は繋ぎ目が大事なのに大手メディアはその微細を分かってない、原発事故やコロナよりSNSの方が問題だと言う。
僕は映像を 観るとは善悪に晒されるということだ、と説明する。
その後

胃が痛くなりそうな気がする

 

 

 

#poetry #rock musician

My watch is out of order.
私の時計は狂っている。 *

 

さとう三千魚

 
 

put moco in the passenger seat
driven to the beach

this morning

the sky
it was sunny

the west mountains
standing in blue-green

in the sea
the whitebait ship was floating

many times
many times

it’s the sight I saw

I was there
I’ll be back there

you were standing
nothing left

My watch is out of order *

 
 

モコを
助手席に乗せて

浜辺まで

ドライブした

今朝

空は
晴れていた

西の山は
青緑に佇っていた

海には
しらす船が浮かんでいた

なんども
何度も

見た光景だ

そこにいた
そこに帰る

きみは佇っていた
何も残らなかった

私の時計は狂っている *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

羊羹を切らずに食べる男

 

工藤冬里

 
 

石のパンを
疑念を抱きながら剥かずに
養老のコースターの
レイヴンズクロフトの紋章
一二軍団を渓谷に呼ばない代わりに
杭から下りてこいと動画で叫ばせる
FBの動画はみな誰かにやらせる復讐譚だ
一二階から飛び降りてヒョウタンツギ
誰が助けるか見てみよう
日の丸パリサイチェーンが天カスのシーニュで自尊心を満たそうとする
財布すぐにゲットできる
企業が王にしようとして押し寄せ
矢張り何とかIKEAのソファーベッドにしようとか
都合の良い時神戸に行くと見抜いた
毎回名神を使った
忍者の草とは耐えることではなく各々の背高への反応の仕方を意味する
内臓は立っている
立ったまま眠ってなんかいない
顔だけが二次元である
キャンパス上の(突起の)陰影のみが立体である
(油絵は斜め横から照らしてナンボだ)
山止たつひこから四〇年コマのまわりに矢の時間が立っている
ジャンプを縦に貫くマンガの線
家を持たなくて良かった
猫は
口から肛門に流れる線が膨らんでいるだけだ
その基はうわついた魚の線
宇和島の聴覚イメージは常に逆さになった伊達の黒である
背高泡立草の列がもはやウェーブを送っている
優雅な悩みなどない
近藤等則のIMAは今できることを考え続けることによって得られた線の処世の術であり
今できないことを考え続けることを(マイルスのように) やめてしまっている
(からだめだ)
今敢えて絵を描くということの意味を問うてきてください
絵を描くことは問われるが映画を作ることは問われない
では絵で映画を描けばいい
ということなのではないか
ドエグ的情況とは
文谷はパースペクティブを アニメの線で覆い、ドイグは写真を映画で覆った
(ということか)

 

 

 

#poetry #rock musician

食っちゃおうか

 

辻 和人

 
 

2枚の柔らかな薄ピンクの皮膚
唇だ
そこに薄グレーの細長い奴
ぺろっと横たわる
夜中いびきかいたらお互いうるさいからね
それに喉乾燥して風邪ひきやすくなるからね
寝る時口にテープ貼ることにしない?
ミヤミヤが決めて、かずとんも実行した
呼吸苦しいかな
大丈夫
すーっ、鼻呼吸に移行
眠くなってきた

薄グレーの細長い奴
ぱっちり目覚める
2枚の薄ピンクの間で
伸び縮み伸び縮み
裏返りそうになって
キャッ、キャッ
いびき、食っちゃおうか
いびき、食っちゃおうよ
くっす、くっす
やがてやがて
とおーくでアラーム鳴る
ミヤミヤとかずとん
一緒に唇からテープ剥がし
よく眠れた?
眠れたよ
顔洗って
薄ピンク2枚ぱっちり活動始めると
屑籠の見えない底では
伸び縮み伸び縮み、はもうしないけど
キャッ、キャッ
くっす、くっす、くっす

 

 

 

He appeared in his shirt.
彼はシャツ一枚で現れた。 *

 

さとう三千魚

 
 

this morning
I ran to the estuary

go
Back

it was 4.6km

arrive at the estuary
walk to the beach

in the rain
I was looking at the sea

the west mountains were also hazy
you were standing there

you
take off your clothes

standing naked

you were gray this morning

you are
Or blue-green

sometimes
it ’s grayish blue
it may be ultramarine

be there

He appeared in his shirt *

 
 

今朝は
河口まで走った

行って
帰って

4.6km だった

河口に着いて
浜辺まで

歩き

雨の中で
海を見てた

西の山も霞んでいた
そこに佇っていた

きみは
服を脱ぎ捨てる

裸で佇つ

今朝きみは灰色だった

きみは
青緑色だったり

ときには
灰青色だったり
群青色だったり

する
そこにいる

彼はシャツ一枚で現れた *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

脳内アルヘンチーナ認知頌

 

工藤冬里

 
 

名前を覚えないことで距離を置いていた
青い床
光の縁取り
裁縫の仕方を男子が教えている
なかなか身体が折れ曲がらない
宝塚っぽい暗い虹色のセーターを着て
一瞬気を失っていた
アカシア材.comから
ずぶ濡れて猫
刺し通される筈の言葉がなぜ
スペインの黄色と青のプリンタリーに
数字を右手と額に、
行為と思考に刺青する
数字と数字の距離を空けただけで
野獣は離れていくか

朱鱗洞が死ぬ一空白空白空白空空白空白空白空空白空白空白空八年に空白空空白空白空〇歳のロルカは処女作「風景と印象」を出版するが黙殺される。スペイン風邪が明けた一空白空空白空空白空〇年二空白空白空白空二歳の時にアルヘンチーナを据えた「蝶の呪い」で処女公演を果たす。そ の空白空白空白空白空年 間 に 何 が あ っ た か。桜井大造はそこに満を辞したコロナ明けの演劇、という視点を持ち込むが、本当にそうなのか。

座席の距離を詰めても空けても忘れ去られるだけなのだから
シニフィアン連鎖の間隔を空けることでこちらから忘れてやる
名前を覚えられないのではない
覚えないことで距離を置いていたのだと気付いた
野獣アルヘンチーナは脳内を舞う
他の名前は
覚えない

 

 

 

#poetry #rock musician

フジオ(一九四九〜二〇一三)

 

工藤冬里

 
 

マイナーに酔っ払ったフジオが観に来て、僕に、ションベンみたいな演奏だな!と言うので、確かにノイズのオルガンはションベンに似ているかも、とは思ったが、うるせえウンコ野郎、と言い返せば良かったのだと今日思い付いて、ほら、ションベンにウンコと返せば気が利いてるじゃん、タイムマシンがあったら、一九七八のマイナーに戻って、言い返したいな、フジオは反浜岡原発の時非常に知的な喋り方が出来る人間だと知ったけど、それとこれとは別だからな、即興舐めんなウンコ野郎、いつか言ってやりたいな

 

 

 

#poetry #rock musician

Please come to see me every now and then.
どうかときどきは私に会いに来て下さい。 *

 

さとう三千魚

 
 

I had
a father

my father is a peasant

he was the youngest child of a peasant
he became a soldier

the war was over before he went to the war in the foreign land

he drank and got rough
he must have been rough

I didn’t even talk to my father

the father once cried

I’m ruined
when I go home

my father cried

other
I had a father

I just think of them as my father

I have a poet’s father

I have a printmaker’s father
I have a photographer’s father

My brother-in-law was also my father

I have a peasant’s father

Please come to see me every now and then *

 
 

わたしには
父がいた

父は
百姓で

自作農の末子だった
父は兵隊になった

外地の戦いに行く前に
戦争は終わったのだった

酒を飲んで荒れた
心が荒れていたのだろう

最後まで
父とはまともに話さなかった

その父が
泣いたことがあった

駄目になって
帰省したとき

父は
泣いた

他にも
わたしには

父がいた

わたしが勝手に思っている
だけだが

詩人の
父がいる

版画家の父がいる
写真家の父がいる

義理の兄もわたしの父だった

わたしには
百姓の父がいる

どうかときどきは私に会いに来て下さい *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life