広瀬 勉
東京・中野界隈?
チャカチャカ、
チャカチャカ、
チャっ。
テレビCMで
わんさか
出て来て、
歌ったり踊ったりしてる
あの女の子どもは、
なんじゃい。
流し目なんか送りやがっって。
チャカチャカ、
チャッ。
突然ですが、
俺っちは、
生きながらに、
詩人の化石になっちまってるのかね。
なんとかせにゃ。
チャカチャッ。
そういえば、
あの詩人は生きながらにして、
もう化石になっちまったね。
いや、
あの詩人も、
まだ若いのに、化石化してるぜ。
いや、
いや、
あの高名な詩人も
まだ生きてるけど、
既に化石詩人になっちまったよ。
俺っち、
バカ詩人やって、
なんとか、かんとか、
生きてるってわけさ。
チャカチャカ、
チャカチャカ、
チャっ。
晩春の日が暮れて行く。
雨に打たれて、
山吹の黄色い花びらが散って、
ヒョロヒョロメッチャン、
ウンチャッチャア。
俺っちが死んだら、
家人は
先ずは、
誰に電話するかって、
思っちゃって、
眠っちゃって、
ヒョロヒョロメッチャン、
ウンチャッチャア。
晩春の一日、
今日も暮れたっす。
ウンチャッチャア。
ウンチャッチャア。
「お母さん、イビキってなに?」
「眠っているときにグウグウいう音よ」
「イビキ、イビキ、イビキ」
「お父さん、座ってくださいの英語は?」
「シッダン、プリーズだよ」
「プリーズ、プリーズ、プリーズ」
「お母さん、まつりごとってなに?」
「まつりごとねえ。まつりごと、まつりごと」
「お父さん、お金ください」
「エッ、お金? 何に使うの」
「お母さん、なつかしいってなに?」
「そうねえ、昔は良かったなと思うことよ」
「なつかしい、なつかしい」
「耕君、どうしてそんなに喚くの? 頼むからいいこにしておくれ」
「僕、キンニクマンのアシュラ好きですお」
「♪ラアラアラア」
「耕君、それなんの歌?」
「巣立ちの歌だお」
「お母さん、自閉症ってなあに?」
「………そうねえ、ちょっと不思議な人。耕君、誰かに自閉症ていわれた?」
「いわれないお」
「お父さん。行方不明の英語は?」
「Disappearanceかな。ディサペアランス」
「行方不明、行方不明」
「しょうがないの英語は?」
「しょうがないかあ。そんな急に言われてもなあ。しょうがないは、仕方がないことだよ」
「しょうがない。しょうがない」