いつかの秋

 

ヒヨコブタ

 
 

いつかの秋
わたしは大きな公園で一日を過ごした
まわりが淋しくなる頃
落ち葉を拾って立ち去った

いつかの秋
わたしはまた大きな公園に
いた
賑わいは耳に残っていない
景色だけが
そのときの気持ちだけが残っている

いつかの秋ばかりになる

今年の秋
わたしはその大きな公園に
いない
その公園のわたしを呼び出しては
秋を遊ぶ
落ち葉を拾い集めて
本にはさんで帰るのだろう
ぼんやりと
いつものように走り回る子らを眺めるのだろう

いつかの秋は
いまより豊かにみえて
行かずにいる大きな公園は
賑やかに思える

わたしはここにいるというのに

 

 

 

島影 25

 

白石ちえこ

 
 


大阪 木津川 渡し船

大阪の渡船。
周辺には工場や造船所。川は静か。
どこからか自転車の青年、買い物かごをさげたおばあさん、喪服の女性。
小さな船に一緒に乗りこみ、陸を離れた。
対岸の船着き場はすぐそこに見える。
ほんの数分、水の上。船を降りれば
みんなまた、別々の方向に向かってゆく。

 

 

 

時間の合鍵を渡してしまった独身の身体或いは

 

工藤冬里

 
 

時間は一瞬に充満する
合板の天井が暗く燃えて
視聴の環境は整い
簡単な絵さえ描けぬまま生きる
言葉を覚えた鳥が
I love youと言って死んでゆく
平和だなあ
日常の食物を使って
感謝を表せる
私は汚物なので埋めてください
包丁持って隣家に怒鳴り込む
偽物のおでんのような夕暮れに
可愛い女の子が丁寧にお辞儀して本を借りてゆくが
食事に与(アヅカ)ることは出来ない
それとこれとは構造が違う
写真などいくら撮っても無駄だ
苗字など無いと思え
火を絶やしてはならないがその伝承は間違いだから
おでんは無理だ
合板の家の中で
恋ではない罪の犠牲は定められていた
京都が嫌いだ
黒白の事務員は好ましい
先々のことを心配するんですけども
一日生きられて
最大限の憐れみ深さをチョコに沈める
オーデン詩集の出汁に宝石
奪い取ったり騙し取ったり
朝まで夜通し焼く
着替えて灰を捨てる
丸ごと焼く
吉岡実が使った燔祭
政府と結び付ける 棒
棒と棒が会話している
棒が棒として三島を打つか
この前会社で
コロナが合鍵を使って異物に入る様子が精子に似ていると話しましたね
〽︎でも見てよ今の僕を クズになった僕を
サンタクロースじゃないんだから
ゴキブリとカマキリは親類
刃物を持って隣家へ
鹿沼でクレーン車が登校の列に突っ込んだ事故は覚えてますか
六花は隣接した時間しかないことの証拠で
松山千春は室野井も呼吸する北海道のドン
黒と白だと思っていたら灰と白で誤魔化された
おでんみたいに誤魔化されて
ライトは上向きがデフォ
もう連絡先が分からない
全身とは言わず全宇宙に転移してほしい
空が赤いのだから
ずり落ちそうになり
直し
ずり落ちそうになりながら
直す
ずり落ちてくる空に
傘の棒杖を置いて
座る
四十日食べなかったら
その椅子が見える
団地ともおでもいける
時間は一瞬に充満する
そして未来ではなく現在が終わるだけなのに
合鍵を渡してしまった

 

 

 

#poetry #rock musician

白のエチュード

 

工藤冬里

 
 

パースを基に突点を結び
キュビズム前夜のように
ではなく
面を塗る
透明度の高いメディアを使い
重なりを細めの帯として
線の代わりとする
棄てる米を捨てない米の上に棄てるこの女と
また出会えるだろうか
「白のエチュード」は
ベニヤに直に塗られていた
柿畑に仕込まれた鳥追の
猛禽の叫びのループに
いつかひび割れる脳

 

 

 

 

#poetry #rock musician

たまご

 

鈴木 花

 
 

なんか みんなとの間に 何枚もの すりガラスがあるんです。
それって ぼんやり 奥が見えるんだけど
みんなを ちがうように うつしちゃうんです。
びんかんな私は
その ぼんやりを はっきりだと思っちゃって。
こわくなって
もっと ぶあつくして 不安になって
チラっと外をみれば また こわくなって。
負の連鎖。
逃げ出したいんですけど 逃げ場所は家なんです。
わたしには そこしかないんです。
1人なんです。
さみしいです。
つらいです。
ぼんやりは うそだと
どうしたら私は私に いいきかせられるんでしょうか。

 

 

 

違反者

 

工藤冬里

 
 

免許センターに行った
ナビに頼らずに行った
都営の応募の、灰色のC層を予想した
途中吉藤の、
借りようと思っていた窯場を過ぎた
朴の木のある
東京弁の女だった
五〇〇〇円くらいだったら陶芸教室に入ってもいいわよ
あの頃は金が無かった
セブンに寄った
時間はあると思った
そこであっさり命を落とした
そうしたら三種類の電線が面白く見えた
しかし矢張りバッドラックに引き返した
マスクを買うのは生まれて二度目であった
まさぐった
掃除婦が同じマスクをしていた
倫理がなければ詩を生きても意味はない
非常に分厚くワックスが塗られている

飴のようだ

 

https://twitter.com/_YukioHakagawa/status/1331374568351559680/photo/1

 

 

 

#poetry #rock musician