広瀬 勉
お通しの残り物です。
灰色を空とすれば、陸はもっと鈍く暗いのかもしれない
果てそうな先の話にとどこおる、前提としての光
現、エアコンディショナーの送風ごときにリミットなどハズレる訳がない
送風と喉の相性がいいことに… 配給車を襲う、甘んじた難易度の低さ
たてつづけに焼き魚を食べる、鮭から赤魚粕漬へ
延々と耳から赤い血が たまらない、とまらない
膝でこらえる親子の愛が膝にのしかかる親子の失語へ
おおらかに見開いた目、鼻、感情とおぼしき
前例、人の手の形状にそって加工されていく仏壇から石までの灰さ、幼さ、罹災くる
とにかく練習
それを忘れるくらい
他意とホース
遅れて搾りだされる蛇口の水
遅れて巡りあわさる再会の場
背けて愛になる
今頃… 自分が会いたい人に会えているはず
散らばる大根の葉
おろした白い水が焼き魚を濡らす
色は、人が丁寧に配合して、できている
木漏れ日の陰影と空と陸の陰影
写真をもう一度、外気に触れさせて一緒にプールで泳ごう
表情の陰影
今頃になって、破水
スーパーで耳から血を流した、あの頃の
着色がなまなましい
ある種の暴力によって、混ざると分離した、銀色の反射する水、信じようとする自分が映る
進んだ先は何年後か… 同時期に起きている 形が似ている、ただそれだけの回収
そんな時は演じてみる、人の言葉を盗んで人に記憶を盗まれる 託されたと合致したらば記憶を回収する為に、冒険にでるのは必然かもしれない
たいそれた冒険の危うさ、それを無視してでも同時期にでてきたものを繋げる
回収なんてされないのだから
会いたい人と会えた、会えなかった裏側の暴力だとしても
これは、10年後とする…
紫のハンマーを手に入れた 紫の軍手とともに手首からのびる、一貫して律儀なジェスチャー
叩いた壁は白く粉吹く
直立させれば長くそびえ建つ
壊したくても、もう、壊れている
マンションの住人の利用を想定したコンビニへ、買い出し
誰かの家族がバイトしている、君の成長をも気にしよう わりとここは平和だから
出棺する前に、もう一度立ちあがって=( )に、もう一度立ちあがって
ポートレイトを撮らして
横たわっていたら、動物のようだよ
寝たかと思っていたら、声が返ったよ
応答が遅いと時間に負けるよ
44階建ての分だけ、ふるさとがのびている
上の方はホコリがとりにくい
ハウスキーパーが昇る月に涙している
拝むにも習慣が必要、必要に迫られないと習慣はできないのか「習慣にしたくない。」即座に拝み「拝めない。」瞬時に反復にかられ「反復したくない。」拝んだ解氷は苦みをやわらかくする「和らがない。」
苦しみを誤りなく摘みとることは難しい 君の信仰も振り付けされる
挙動が安い値段で取引される
迫害を介護する第三者が寓話に帰ってしまう前に、噛んだ言葉の味を食べやすいように変えられるはず
脈のない動物をハンマーで起こす、壁を壊して、扉をノックして、像を切り出した
こんなにも紫に混ざり合う掌を使って
今朝、コンビニでプリントアウトしたポートレイトを持って、エレベーターに乗った
ほんの数秒で東京が見渡せる ほんの数秒でこの街を抜け出せそうだ ほんの数秒で煙になる ほんの数秒で過去になる ほんの数秒で一個人になった
衆議院選投票体験を詩に書いちゃおうと思ったが、
どうも、そうじゃなく、
最初、書いてやろう、
と書き始めたのが、
やろうがちゃおうになっちゃたんですね。
選挙のことを詩に書くなんて、
そう簡単には手に着かないんもんですね。
ガラス窓が、
真っ白に、
曇った。
十二月初旬の朝のことだ。
あの窓ガラスが、
頭から離れない。
真っ白に曇って、
見慣れた庭が見えない。
今は、
もう月半ばも過ぎて、
衆議院選挙の結果も決まって、
自公与党の三分の二以上の大勝で、
憲法改正の道が開かれちゃった。
総理大臣の安部晋三は選挙運動中、
「景気回復、この道しかない。」
と連呼してたが、大勝と決まった途端に、
憲法改正を口にしたね。
安部晋三の野望、
日本の歴史の流れを変えようという野望、
何よりも国家を優先する国家にするという野望、
それが、
この道しかない道、だったんですよ。
わたしは今の憲法で育った。
個人をそれなりに重んじる国家、
表現の自由が重んじられる国家、
軍隊を持たない戦争をしない国家。
それが覆されるのにわたしは反対なんだ。
十二月十六日の朝日新聞に
衆議院当選者全員の顔写真が載ってる。
小さい写真で、
みんな同じ顔に見える。
その当選者たちの八十四パーセントが
「改憲賛成派」だってさ。
ああ、もうこの國は変わるね。
ところで、
来年は日本人男性の平均寿命に達するわたしは、
それまで生きてるのかいな。
生きていたいね。
十二月十四日の投票日には、
麻理が早く出かけるというので、
投票所が開く七時ちょっと過ぎに、
わたしは麻理と電動車椅子で行って、
わたしらだけしかいない投票所で、
薄緑色の小選挙区の投票用紙に、
ながつま昭と書いて二つに折って投票箱に入れ、
白い比例区の投票用紙には、
民主党と書いてこれも投票箱に入れたんだけど、
実は、これは、
迷った末の結果なんだ。
思い起こすと、
ちょっと怒りが湧いてくる。
ウーン、何とも
怒りが湧いてくる。
小選挙区の候補者の誰にもわたしは会ったことがないんだ。
東京都第七区の四人の候補者にわたしは会いに行くべきだったのか。
それをしないで、新聞に掲載された写真と活字で、
自民党公認は駄目だ。
次世代の党公認も駄目だ。
共産党の候補者の反自民の主張はいいけど、
死票になっちまうから駄目だ。
残るは民主党公認のながつま昭だ。
彼は三度の食事に何を食べているのか、
酒飲みなのか、
兄弟はいるのか、
詩を読むなんてことがあるのか、
怒りっぽいのか、
優しいのか、
なーんにも知らない。
で、他にいないから
このオッサンに決めて、
薄緑色の投票用紙に「ながつま昭」と書いた。
わたしは渋谷区で長妻昭に投票した41893人の一人になったというわけ。
ながつまさん、頼みますよ。
比例区は
反自民の共産党にしようかな、と思ったけど、
昔、「赤旗」が
わたしの「プアプア詩」を貶したのを思い出して、
まあ、結局、主張が空っぽの民主党を白い投票用紙に書いてしまったというわけですね。
渋谷区で民主党と書いた人は18072人だから、
長妻昭と書いて民主党と書かなかった人が結構いたんですね。
こんなことじゃ、
安倍晋三の野望に立ち向かうなんてことはとてもできやしない。
今度の選挙は有権者の半分の投票で「自公大勝」に終わって、
この國は変わって行く。
そんなことどうでもいいや、って思えないから、
困るんです。
ウーッン、グッ、グッ、ケッ。
次の総選挙までオレは生きているのか。
どうだか。
真っ白に曇ったガラス窓が頭から離れない。
真っ白に曇って、
見慣れた庭が見えなかったガラス窓。
(注)投票数は朝日新聞の2014年12月16日の掲載による。