西成

 

工藤冬里

 
 

滑り易いツルツルの木目の星のイメージはそこから来ているし、
その縞模様は靴下や竜に見られるものだ、と
世代の替わった遊技場のコンセントから充電し、
部品置き場の機具類を床に曝けだす、と
埃を被ったマンブルビーのマイケルたちが飛び立つし、
西成に秋が来る、と
助かるためには記帳されている必要があったし、
ここは間違った地球の中心地であった、と
山頂も野獣の首も七つあったし、
永住させ増やす、と
約束し、
死んでもテントの中では寝ている、と
4キロ離れていても聴こえるし、
なしでやれている外で俄雨野宿し
屋根天幕、と
俄雨野宿屋根天幕しとしと

 

 

#poetry #rock musician

夜について

 

松井陽大

 
 

甘いうつの織りなす絹の十字路で
ぼくは夜の墨に呑まれ彷徨う。
とても深い墨の夜
ぼやけた夏の空を浮遊する鈍い影。
その「墨」を放つ
軟体動物をしめ殺して
昼が再び訪れるとしたら?
また君に会えるとしたら?
あたりはしんとして蜘蛛の糸が
天から降りてきそうなほど
アスファルトに汗を垂らすエアコンと
室外機の虫声
ハイブリッドカーの低音が
僕の腹をかすかに揺らす。
あいも変わらずの夜の街。
ぼくらはこの空っぽのおもちゃ箱の
広大な黒い色面にくっついた
小さな二つの目にすぎない。
偉大な夜の子宮のなかでは…
「ドレイ」は夏を、「靄」と「ユメ」
を曖昧にさせ、2本目の煙草に火をつける。

 

 

 

立秋

 

工藤冬里

 
 

秋に鍼を刺しても西瓜を買っている
足りないのは頼る能力だ
四次元空間の表面積と体積を求めよ
さまざまなレシピが老齢の嘘を教える
専門医を調べず今の年齢に期待されている四要素が織りなす式を知らずに奇跡は移動している
囲み枠にべからず集を探しては破棄し
光る蜂

 

 

#poetry #rock musician