廿楽順治
「夜がくる
するとだれも動けなくなる」
ひとりで
その本を読んでいると
道の前に入り込んでくる盲人がいる
泥のついた眼で
(やがてそれは開くのだが)
本の男はなにも知らない
なぜ眼なのか
なぜその先が他人の風景なのか
「見える人たちが
見えないようになるために」
ぬるぬるするものが
足のうらへ
くっついてくるのだ
「夜がくる
するとだれも動けなくなる」
ひとりで
その本を読んでいると
道の前に入り込んでくる盲人がいる
泥のついた眼で
(やがてそれは開くのだが)
本の男はなにも知らない
なぜ眼なのか
なぜその先が他人の風景なのか
「見える人たちが
見えないようになるために」
ぬるぬるするものが
足のうらへ
くっついてくるのだ
アウシュビッツの後でも
世界中の詩人が、
詩を書いたように、
ベトナム戦争の後でも、
世界中の詩人が、
平気で詩を書いた。
フクシマの後でも、
この国の詩人は、
つまらん詩をぎょうさん書いた。
厚顔無恥な我々は、
ガザ、ウクライナの惨劇の後でも、
下手糞な詩を、ビシバシ書くだろう。
世界の荒廃に対する防御は、
ただひとつ、
創造する営みだけだからだ。*
*「世界の荒廃に対する防御はただひとつ、創造する営み。」byポール・オースター「4321」モンロー先生の言葉より引用。