盲人

 

廿楽順治

 
 

「夜がくる
するとだれも動けなくなる」

ひとりで
その本を読んでいると
道の前に入り込んでくる盲人がいる

泥のついた眼で
(やがてそれは開くのだが)

本の男はなにも知らない

なぜ眼なのか
なぜその先が他人の風景なのか

「見える人たちが
見えないようになるために」

ぬるぬるするものが
足のうらへ

くっついてくるのだ

 

 

 

be vigilant with a view to prayers

 

工藤冬里

 
 

気を悪くしないでくれ
泣くな
刺さったけど泣くな
全部のせを注文し
防空壕で甘いワインを飲め
戦国自衛隊⁉︎解放されたいからケーキあげる
川の石積みも重くない
天秤棒を背負う荷役
工夫を凝らして
soundnessとは憎しみの的となること
黒鉛の直方体
ミシミシと頸椎の孵化せぬ蛍の
いのりたちを視野に入れて警戒する
ὑψώσῃ hypsōsē he may exalt
下に向かう

 

 

 

#poetry #rock musician

極私的

 

佐々木 眞

 
 

アウシュビッツの後でも
世界中の詩人が、
詩を書いたように、

ベトナム戦争の後でも、
世界中の詩人が、
平気で詩を書いた。

フクシマの後でも、
この国の詩人は、
つまらん詩をぎょうさん書いた。

厚顔無恥な我々は、
ガザ、ウクライナの惨劇の後でも、
下手糞な詩を、ビシバシ書くだろう。

世界の荒廃に対する防御は、
ただひとつ、
創造する営みだけだからだ。*

 

*「世界の荒廃に対する防御はただひとつ、創造する営み。」byポール・オースター「4321」モンロー先生の言葉より引用。