frill

 

工藤冬里

 
 

キックしても噴かせないのは分かっていた
春になってもまだ遅すぎるフリルの
摘まれた内気

内容も色も羽根にして
焦がす
子供たちは縁(へり)が好きだ
内実よりもパリパリしたひろがり
死んだ娘の翻るフリルがもう一度キックを願い求める
掛かるかもしれない予感にガソリンが漣を立てる
無謀な未来が音を立てる

皆フリルの未来を知りたがる
手が打てるからだ
交換後残された者でやっていくパーティー
ボクから離れよ(2tem3:5)
潰れた店で在位のケーキセットが出てくる
年代計算を闘う土偶と埴輪にとりどりの蛍光管が巻き付く

上り切った三階の踊り場に灯り代わりのストーブが
一行の三十万を湿らせ
裸にして食い尽くし火で焼き尽くし
反転自制も燃え尽き
ボクの攻撃は非常に激しい怒りを惹き起こすことになり
ほんのもう少しすればボクはいなくなり
温厚みかんは喜ぶがもう届かず
半分まで満たされるべき理由がI want to!
写真並べたりするフリル

 

 

 

#poetry #rock musician

ホワイトボードの青い文字

 

辻 和人

 
 

ホワイトボードの上を
カシャクシャ
走り回った
ミヤミヤの指だ
「赤ちゃんたち夜まとめて寝るようになってきたし
1回分を増やして夜中のミルクやめましょう。
ミルクの量の目安変えておくね」
書かれたばかりの青い文字
最後のミルクは午前1時で次は朝の6時か
こちらもやっとまともに寝られるようになるな
ホワイトボードに記された一日のスケジュール表
かずとん村開設とともに
ミルク一日8回、1回60gで始まった
沐浴は午後3時
夜のシフトは早番20時-1時半と遅番1時半-7時
午前4時に目覚ましかける
手足突っ張らせて
ぎゃおぎゃお泣くコミヤミヤとこかずとんに
抱っこ抱っこオムツオムツミルクミルク
哺乳瓶洗って熱消毒
真っ暗な中ぼんやり光る深夜の電子レンジぼんやり眺める
こんなスケジュール表を
カシャクシャ
書いては消し消しては書いたのは
いつもミヤミヤの指だった
ミルクの量と回数に沐浴、大人の食事に入浴、遅番早番の入れ替え
ねむいねむいミヤミヤの指が
カシャクシャ
カシャクシャ
ミヤミヤは管理者なんだ
管理者は責任おもいおもい
体重の成長線と育児書を見比べて
ミルクの量を足っし足っし
ねむいねむい
カシャクシャ
ああ、それに比べりゃぼくなんかお気楽なもんだ
ミヤミヤが書いた青い文字の言う通りにしてればいいんだから
今日、午前1時半にあがれるミヤミヤが
暑い夕陽を浴びながら
振り向きざまに大きなあくびを一つ
それから夜中のミルクの中止を伝えてきたんだ
一日6回・1回160g前後が目安
すうすう夕寝してるコミヤミヤとこかずとんは
かずとん村開設時から体重3倍以上
沐浴が7時半に変更ってことは
ぼくが入浴してそのまま沐浴させるってことね
夕ご飯作るからさ
少し横になって仮眠でも取ったら?

足引きずるみたいに2階に上がるミヤミヤ見送って
ホワイトボード改めて見る
夕陽てかてか跳ね返して
おりょおりょ
青い文字が
走って
回ったよ
ねむいねむいを跳ね返して
カシャクシャ
走り回ったよ

 

 

 

アタミ

 

廿楽順治

 
 

町の
左はんぶんは死んでいた

あたらしいパン屋があり
となりに葬儀屋がある

人影は 建物のさかい目で
足が切れていた

(寝返った将軍のように)

髭をはやした花屋の主人が
店員と仕入れのことを熱くはなしていた

その顔のはんぶんは
もう なくなっていて

くらすことが
どこか遠くでたたかうことのようだ

(けっして思い出されない空)

わたしたち家族は
その左側の川をわたろうとして

まだわたれない

 

 

 

haven’t yet passed away

 

工藤冬里

 
 

小さい男だった
小さい男だったが
ぼくはさらに小さかったので
包むこともできなかった
今年も梅は受粉せず
梅干屋は潰れるだろう
こうして時事を取り上げるのは大切なことだ
ラリったときの愛のように
表情は人種を跨いで
タッパー毎に曜日を書いて
ドネツクで爆発に遭う
それでも立っていられるか
麺が口に上っていくように靱帯も内部をスルスルと飛行するが
蝋燭で澱んだ夢と同じで
最後の言葉はない
この忍従が
うれしさと結びつくなんて知らなかった
まだ過ぎ去っていない〈以前のもの〉の中で

 

 

 

#poetry #rock musician