違うよサクソフォン

 

爽生ハム

 

 

すり鉢っぽい底辺には脳天気な陽気が漂っていて、そこへ向かう彼らの背中の荷物には、引っ掻き傷がついていた。彼らは、目の前の彼の傷を見て徐々に笑顔をつくり、目的をもつくる。傷は、どこかの川のようで生命力を感じさせた。彼の次にくる彼や、その数メートル後方の彼などは、涙のような水滴を浮かべて、興奮していた。たぶん痛いんだろう。私が見る限りは、痛いと名づけるのは非常に簡単だった。彼らの痛みなど、見物するには丁度いい痛みだった。私の手前で蒸発する非常に健全な痛みだった。あまりにも脳天気な陽気だから、もしかして辛いのは私の方なんじゃないかと、余裕綽綽たる名づけ親になってみたりもした。
私は通常の健康では、明くる日を見逃したりはしない。
むかしむかし、名づけられた響きを交換しあって抑揚がついた動物の完成。淋しさとうまくつきあえる巣穴も、そして底も、内在が溜まりすぎて、困り果て。常夏の短パンのように急遽、膝を潮風がノックする。ぐたぐたと恐怖心を芽生えにかかる露出とは別の魂胆の、肌の水は、人を人が汚ないと感じさせるにはじゅうぶんな汁だろうな。目の前の人が怖すぎるって確かに彼は言った。いらだちの解散のために、彼は感情を放つ、放つ、放つわ放つ。いきり勃った塔の女楽は仕切り板を溶かすほどの勢いがあり、私は彼らは硫酸を飲む人と名づけました。
だって傷が喋るんですもの。