どんな炎でも暖められないほど

 
 

駿河昌樹

 
 
 

……そうであるならば、
わたしたちのまわりにも、
なんと多くの、疑いようもない、
詩の、数々が……

エミリー・ディキンスン、ヒギンスンに宛てて

〈本を読んだとき、どんな炎でも暖められないほど
〈からだ全体が寒気立つとしたら、
〈わたしには、それが詩だとわかります。
〈あたまのてっぺんがすっぽり抜けるように
〈からだが感じたら、それが詩だとわかるのです。
〈わたしには、この方法が、すべて。
〈ほかに手だてがあるでしょうか?

 

 

 

たとえば声を奪われ

 

駿河昌樹

 
 
 

あの肉体のない詠唱が…
エミリ・ディキンスン

 
 
 

たとえば声を奪われ
目も耳も奪われ
顔ばかりか
四肢も胴も奪われ
心も思念も
意識まで奪われても
なおも残る
あなた

そんなあなたが生きるべき
いまとせよ
今日とせよ
これからの数か月
数年とせよ