正山千夏
早すぎる夏
降りすぎた雨
昇りつめる温度計
この夏のはじまりは
爆発した
ただただ右往左往し
蝉もまだ鳴きださない
窒息した夏を
ばたばた搔きまわす
私の四肢
丸い月の夜には
ざわざわうごめく空気に
バランスを崩し
なにかがひっくり返って
あふれだしたものを
なすすべもなく
なかばやけっぱちに
浴びるばかり
泳いだあとのような
からだのだるさが
左半身に残る
傾いだなにかが
寄りかかるものは
そこにはなかった
またはもう消えていた
否、はじめからなかったのか
不意をつかれどおと倒れて
死んでしまったのかも
この夏
なにかが